「  どうして、 この名前が、」


部屋の中に、困惑を隠せないでいるリーマスの声が響き渡る。彼の手には、1枚の古びた羊皮紙が握られていた。この紙がおかしくなってしまった?・・・いいや、そんな事が起こるはずがない。この紙に書かれるのはいつも真実だけだ。その名前と、もう1つ、に早く会わせたい人物の名前があって、今にも駆け出してしまいそうな勢いであるというのに、その混乱がリーマスをここに足止めをさせていた。


「っ、 まさか、  そんな事が、」


すると、突然、 混乱を極めているリーマスの脳内で、何か、1本の光の道が作られるようにして弾き出される。その道筋を、詳細を調べている余裕なんて、今はないけれど、  でも、その道の行きつく先にある答えだけは、鮮明にはっきりと映し出されていた。


「(  、  もしかしたら、君はもう、)  シリウス、今、  今、僕も行くからっ、 」


その答えを導き出した瞬間、リーマスは何を考える事もせず、ただその導きを合図とするかのように、急き切った様子で事務所を飛び出していった。




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「エクスペリアームス、武器よ去れ!」



古びた、けれど僕に、そして彼にとってはひどく懐かしいその部屋の中で、僕の声が響き渡る。それから、が懸命に救い出そうとしていた、ずいぶんと窶れてしまった彼の、シリウスの方へと、自分の視界を移した。


「シリウス、 あいつは、 あいつはどこにいるんだ。」


の事を早く彼へと伝えたいのを必死に抑えながらそう呟けば、僕に返事をする代わりに、シリウスはゆるゆるとロンの方へと腕を伸ばす。その手につられてロンの方へ視線を移せば、そこにはロンと、ロンの手に握られていた小さなネズミが僕の視界へと入り込む。そのネズミを見て、僕は確信するようにシリウスへと再び目を向ける。  そうか、そうだったのか・・・シリウスと入れ替わって、


「  シリウス、 そうか、  君達は、入れ替わっていたのか。」
「 すまない、リーマス。伝えようとしたんだが、それだけの時間がなくて、」
「そうだったのか。いや、良いんだ、それは気にしなくて良いよ。」


倒れこんで、申し訳なさそうにそう言葉を紡いでくれたシリウスへと、僕は足を進めて彼に近づく。「・・・先生?」 訝しげに僕の方へと視線をやるハリー達の声を聞いて、彼らにも目の前にある現実ではなくて、真実を教えてあげなければならない、と思いながらも、僕はそれよりも先に、シリウスの手を取って、起こすのを手伝った彼を、そのまま抱きしめた。


「おかえり、  やっと会えたね、我が友。」
「っ、リーマス、  信じて、 くれていたのか?」
「おや、その言い草だと、まるで僕が君の事を信じていなかったように聞こえるけど?」


目を丸く見開いて驚いている様子のシリウスに、からかうように笑いをこぼしながらそう言葉を返す。何も知らないままだったけれど、僕の知っている君は、友人を差し出すようなひどい人間じゃなかったよ。そう言いながら、学生の時のように、 君たちが僕を救ってくれた時のように、ゆるりとシリウスを抱きしめる。 そんな僕に、 「あ、ああ、  ありがとう、リーマス、我が友。」 そう言ってきてくれたから、そんな彼の言葉を受け取ろうとしながらも、僕は彼の両肩を掴んで彼へとその言葉を伝えた。



「いや、お礼を言うのは僕じゃないよシリウス。・・・君は、  神様より何より先に、 彼女に、  君の恋人であるに、 その言葉を言わなくてはいけないんだ。」 

「っ!!  、 はっ、無事なのかっ?」


僕が彼女の名前を出すと、張り詰めた糸が切れたようにシリウスは僕に問いかけてきた・・・我慢していたのかもしれない、ここで彼女の事を思えば、それだけで頭をいっぱいにしてしまい、やっと追い詰めた綻びの原因をまた見失う可能性があったからだろう。けれど、名前を出さない事にしたって、彼の頭の中には常に彼女がいるんだ。   その証拠に、


「・・・ここへ来る前、の家に行ったんだが、・・・誰の気配も、なかった。」 


ひどく不安そうに、そう呟いたシリウス。ほら、ここへ来る前に、君はそうやって彼女の元へと行こうとしたんだろう?・・・そうやって、君がの事を想っているように、も君の事を想っているんだよ。いつだか、にそう言った言葉を、シリウスにも心の中で呟きながら、僕は、 僕が伝えられる、僕の知っている全ての事を、シリウスに話そうと口を開いた。


「・・・正直言うとね、僕もここ一年の事しかについては話せないんだ。」
「??  それは、 どういうことだ、リーマス?」
「驚かないで聞いてくれとは言わない、 シリウス、  は今、ホグワーツに、生徒としているんだ。」

「   ・・・・・・何、だって?」


さっき驚いていたその顔よりも、さらに驚いたようなそんな顔をして、シリウスは声にならないその驚きを抑えようともしないままに、何とか言葉を紡ぎだした。その言葉自体を理解できていないというような顔だった。「  このホグワーツにやって来て、はこの1年間、ハリー達と一緒に学生として、過ごしてきたんだよ。」 それから、少し時間を掛けて僕のその言葉を噛みしめるようにして、ようやくその言葉を理解できたらしい。そして、驚きの次に、彼の顔に浮かんできたのは、  困惑だった。


「  だが、 は、どうしてそんな事を、」


が優秀な魔法使いだという事を誰よりも知っているシリウスの事だ、どうやって彼女が、という事よりも、その理由の方が気になったんだろう。  ・・・けど、それこそ分かり切った質問じゃないかな、シリウス?


「まったく、  相変わらず、君は、 」


・・・君たちは、 自分の事に関しては疎いね。   姿はひどく変わってしまったけれど、 昔から、 12年前から全く変わらない、そんなシリウスに、僕はどこかで安堵感を覚えつつ、彼にそう言葉を投げかけながら苦笑を漏らしてしまう。  そして、 僕は彼に、 ベッドで眠っている彼女に、  そんな無理をしすぎてしまう友人2人に伝えるように、 ゆるりとその言葉を紡いだ。


「何で、  がホグワーツにいるかだって?」
「?  リー、マス?」


ねえ、、  早く、早く戻っておいで。


「そんな当たり前のことを、 シリウスは聞くのかい?」
「  ・・・当たり、前?」


シリウスは、君がクィディッチで見た時と少しも変わってない、痩せこけた姿だと思うけど、



「  シリウスを、 愛しい君を、  救い出すために決まっているじゃないか。」



大丈夫、  まだ、シリウスは、ちゃんと君の事を想って、   ここに存在しているよ。

I tell you, and her

僕は伝えるよ、君に、 そして彼女に、