「( ロンのベッドの、一体どこに・・・何が?)」


ハリーを守るために、危険を冒してまでロンのベッドに入ってきたのは無実の証拠があるから、でもそれは何?何がロンのベッドにあったの?・・・いや、順に物事を考えていった方が良い。証拠がロンの場所にある事を掴んだ理由もそうだけれど、そもそもどこでロンの顔を知った?アズカバンに閉じこめられてしまっていた彼は、ロンの顔どころか、ハリーの今の顔すら知らないはずなのに、何故ロンの顔を知っていて、ロンのいる場所にその証拠がある事を知ったの?


「(  落ち着いて考えて。 シリウスがそれらの情報を得る事が出来る方法は?)」


抜け出してからその情報を得たのかしら?そうすれば、ロンがその証拠を持っている事を知るのはアズカバンに居る時よりもとても容易に得る事ができるけれど・・・それは何だか違う気がした。多分彼がその情報を得たのはアズカバンの中でだろう。それなら辻褄が合う気がした。その証拠・・・彼に取ったらハリーにとって危険の対象である、・・・いや、もし、



「(・・・もし、証拠と危険である対象が別物としたら?)」



一瞬、そんな考えが頭に過ぎって、すぐに打ち消した。私の探しているものと彼が何かからハリーを守ろうとしているその何かは同じであるはずだ。そのものがヴォルデモート関連と考えるのなら、尚更のこと。あの起こるはずのなかった、起こってはならなかったあの事件からシリウスはアズカバンに入れられて、ハリーを1人にしてしまい、そしてあの事件の所為で、ハリーはヴォルデモートに狙われるようになってしまったのだから。


そう、すべてあの事件に糸が繋がっている。


「(そうよ。ハリーの危険の対象であるものと私の探しているものは、きっと同じはず。)」


それを前提にして考えるとしたら、彼がアズカバンでハリーが危険に晒されているという情報を、私にとっては彼が無実である証拠を、何かしらの方法で掴んで、ハリーを助けたいという一心であの場所から何とか抜け出したと考えれば、ここまでは絡むことなく一本の真っ直ぐな糸になっている気がする。そうすれば、アズカバンから抜け出した理由にもなるし、アズカバンから抜け出してからその情報を得たと考えるべきだとすれば、あの場所から抜け出す理由がなくなり、この考えを消去する事ができる。

・・・証拠とハリーから守るものを別々に考えるなら、この考えをまた頭に入れなければならないけれど、別々に考えるのはどうしても私にはできなかった。本能で感じるのだ、私が探し求めている証拠と彼がハリーから遠ざけようとしているものを別々にしてしまえば、根本からひっくり返すような間違いを犯す事になると。


「(この直感は信じるべきものよ、きっと。)」


慎重に、1つ1つを理論づけて確実に進んでいかなくてはいけないけれど、迷ってばかりでは、先に進めない。直感、なんて感情的なものを選ぶのは糸を切りかねない危険なものだったけれど、この直感はむしろ糸を強化してくれるものだと私は信じたかった。


ぐるぐると色々な情報が回る脳内で、纏めた情報を置いて別の問いを引き出した。


「(さあ、次の問題に移ろう、)」



次の問題は、彼がその情報をどう得たか、だ。アズカバンで情報を得たと考えるなら、証拠を持っているロンの名前、あるいは顔をあそこで得た事になる。そしてロンがホグワーツの学生であったということもそうだ。そうでないと、わざわざ危険を冒してまでホグワーツに入る理由が見つからなくなってしまう。

ロンの顔を、あるいは名前、そしてロンがホグワーツの学生である事を、そして証拠を全て一緒に情報を掴まなくてはならない。ホグワーツの学生であることは後からでも知れるが、けれどアズカバンに投獄されてしまった彼にとっては調べる手立ては非常に困難を極めるものになっているし、そんな時間もないくらいに真っ直ぐホグワーツに向かってきていた。だからきっと、ロンが学生である事もアズカバンで知ったのだろう。


「( 吸魂鬼ばかりのあのアズカバンでどうやって・・・)」


まさか、吸魂鬼が彼にそんな事を言うなんて事はあり得ない。投獄されている人間が吸魂鬼の監視下に置かれている中、頻繁に情報を手に入れる事は不可能に近いし、もしそれが可能であったとしても、吸魂鬼にやられてしまっているからそんな力も残っていないはずだ。周りの人間から聞いたという線も消して良いだろう。

そうすると、外部からその情報を持ってきた人間が彼に伝えたという線が一番有力な方法になる。けれど、誰がロンが持っている何かがハリーを危険にさらしていると伝える?そんな事を伝える事ができるのは、彼がハリーを大切な親友の子どもだと思っていると知っている人間だけで、悲しい事に、そんな人間は今となっては本当に少数の人達だけだ。


「(  ・・・偶然、その情報を知り得たのなら、)」


偶然その情報を知ったのなら、その手段は口頭ではないはずだ。さっき考えたように的確にロンの事を伝える人間はいないし、他の子と何ら変わらない、元気な学生であるロンの事をわざわざアズカバンに来てまで、何故彼にそんな事を誰が話す?


「(口頭でないなら、何から? ・・・誰から?)」


誰から得たのかを考える方が、分かり易いかも知れない。外部からの人間といっても相当限られてくるはずだ。アズカバンに行く人間なんて全くいないと言っても等しいくらいに少ない。そう多分、そこに出入りするのはシリウスを除いて、魔法使いの囚人かアズカバンを管理している人間だけだ。そう考えると、アズカバンを管理している人間が、意図的にではないにしろ彼に伝えた事になる。あの場所を管理・・・


「(  魔法省の人間、それも多分、上位の人が、)」


偶然、そこに行く機会があったのだろう、その時に彼に情報が伝わったのだ。その方法が口頭ではないとしたら、何か文書のような物が彼に渡ってそれを彼が読んだと考えるのが妥当だろう。けれど、文書であろうとロンの事を的確に伝えようとする人はいない。魔法省の人間から、文書で、偶然に、その事を知るためには・・・



「っ、日刊予言者新聞?」



頭の中で、ピンと糸が張りつめるような音がした。

Piece together

何かに包まれていた感覚が、いっそう強く感じられる気がした。