「シリウス・ブラックだ!!」
階段を下って談話室へと歩を進めれば、そこで耳に入ってきたのは彼の名前。ドクンと鼓動が高鳴るのを感じた、彼が、ここに、私のすぐ近くに
「通しましたぞ。ご婦人!」
その瞬間、私はその扉へと一目散に駆けだしてそのまま廊下へと飛び出した。後ろからハリー達の私の名前を呼ぶ声や、マクゴナガル先生の「っ、危険ですよ!!」という声が聞こえたけれど、その声に私の意識は反応することなくただ目の前に広がる暗闇を突き抜ける事にしか既に考えられないでいた。
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「(どこにいるの、シリウスっ)」
当てもなくどこまでも広がるその廊下を走り続けた。彼の事だから、もう学校内にはいないのかもしれない。いや、おそらくいないだろう。そんな事を思いながらも私の足は止まることなくただただ、ひたすらに走り続けることしか、彷徨い続けることしか出来なかった。何で、どうして、 もう1人で、突き進まないで。ねえ、シリウス。 シリウスったらっ、
「(もう無理をしないでっ、)」
走り続けていると、廊下の前方に何かの光が見えた。その光を見ると、床に何か落ちているらしかった。そんなものに構っていられる余裕はないというのに、それなのに何故かその光へと目を凝らして、その光の正体を見つめた。
「(何かしら、 あの光は)」
速く回転していた足がだんだんとその光に近づくに連れて緩やかなそれへと変わる。手にとって掲げてみれば、 それは見覚えのある、チェーンに通された指輪だった。その指輪を見るやいなや、はっと息を呑んだ。
「っ!!(これ、は )」
その指輪を見間違える筈がなかった。それは確かに、私が買ったものだったからだ。
私が、 彼のために
「 シリウスっ、 (貴方も、)」
その指輪を握りしめて足から崩れ落ちる。装飾品にあまり興味がない彼がこれを未だに持っていたという事は、アズカバンで吸魂鬼に吸い取られているはずなのに私の事をまだ覚えてくれているということを意味していて。目から溢れ出てくるそれは、彼が覚えてくれているというその嬉しさからなのか、そんな彼を未だに助ける事が出来ないでいる悲しさからなのか、分からなかった。
「(貴方に巡り会った時から、私は貴方に)」
両手で握りしめたそれを祈るようにして胸元へと持っていく。 シリウス、お願い、1人で背負い込もうとしないで。貴方は1人ではないわ、ダンブルドアも、リーマスだっているわ。 私も貴方の側にいるから、貴方の隣で貴方を支えるから だから、
「 、」
「うん?どうしたの、シリウス?」
「 愛してる。」
「(もう一度、あの声で、貴方のその声で私の名前を呼んでっ)」