リーマスとの会話から、私はまた1日眠っていたらしい。そこまで身体にガタが来ていたのに気付かなかったなんて。こんな事、シリウスが知ったらなんて言うだろうか。私を怒るだろうか、それとも自分の所為だと自分自身を責めてしまうだろうか。
「ッ!!」
「 ハリー、」
「駄目です!もう数日間は安静にしていなさい!!」なんてマダムからのお叱りをもらい、リーマスにもってきてもらった本を大人しく読んでいれば、そこへやってきてくれたハリーとロンの姿が視界に入る。授業が終わって走ってきてくれたのだろうか、息を切らせながら私が起きている事を確認した途端にこちらへと駆け寄ってきてくれた。
「大丈夫!?君、4日も寝ていたんだよ!!」
「ええ、もう大丈夫よ。ありがとう、ロン。」
「大丈夫なら、良いけど。」 照れくさそうにそう返事をするロンに笑みを浮かべていると、ハリーが私の方を見て未だに心配そうな顔をしているのが目に入った。どうやらまだ私が言った言葉を疑っているようで、これが一度目ではないから当然といったら当然の事かも知れないけれど。
「ハリー、私は大丈夫よ?」
「 本当?」
「ええ、本当。もう数日間、ここで安静にしておかなくてはいけないけど、そうすれば授業にも出られるわ。」
「だから、そんな顔しないで?」 ハリーを安心させるようにハリーの手をとってそう言えば、漸くハリーの顔にも笑みが浮かんできて。それから2人はファイアボルトの話をしてくれた。どうやら一度何か危険がないか調べるということであのファイアボルトはハリーの手元から離れてしまったらしい。先日、ようやくそれが戻ってきたのだと2人ともがとても嬉しそうに話してくれた。
「次はレイブンクローとの試合なんだけど・・・、見に来てくれる?」
「ええ、もちろん。勝てるように頑張って、応援しているわ。」
その試合のためにこれから練習があるようで、ハリーとロンは「ゆっくり治すんだよ!あ、でも早く元気になってまた一緒に授業に出たりしようね!」なんて声をかけてくれながら、ここへ来た時のように慌ただしく医務室を後にした。
それからその後、ハーマイオニーが1人でお見舞いに来てくれた。2人からだいたい聞いていたけれど、ハーマイオニーは本当に申し訳なさそうだった。けれど言い出した手前、彼女の性格上なかなか切り出せないのだろう。泣いている彼女を慰めながら、その猫とネズミの事を考えた。猫がネズミを喰らうのは今に始まった事ではないのだけれど、何かそれに引っ掛かるものを感じたからだ。(何だか胸騒ぎがする、)
「ああ、ごめんなさい。私ったら、のお見舞いに来たって言うのに・・・」
「ふふ、構わないわ。ハーマイオニーの方こそ、授業のことばかりで倒れたりしないでね?今度は私が心配してしまうわ。」
笑みを浮かべながら彼女にそう言葉をかければ、「 ありがとう、。」 とようやくこちらに笑みを浮かべてくれた。それから今までの授業の事や、カドガン卿がたちまちに変えてしまう合言葉の事も話してくれる。太陽も沈み始めた頃、ハーマイオニーは勉強をしなくてはいけないと名残惜しそうにしながらも「、早く治してね!きっとまた来るわ!!」 なんて声をかけてくれながら医務室を後にした。
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それから月が映える時間になった。今日来てくれたハリーの言葉を思い出す。
「・・・ファイアボルト、」
あれはやはり彼が贈ったものなのだろうか。本人に訊く事のできない今、それを確かめる術はどこにもないのだけれど・・・いや、それよりも今考えるのはこれからの事だ。こうしている今も彼はきっと限界を超えながらも頑張っている。安静にしないといけない今、彼へと繋がっている糸を手繰り寄せる事は出来るけれどペースが確実に遅くなっている。彼にとって時間がないのは同じなのだ。何か対策を、確実なる証拠を、
「(彼は、必ずまた、学校へ・・・)」
アズカバンから抜け出す事の出来たその日からの彼の行動を考えると、おそらく彼はまた学校へと入ろうとするのだろう。それが何のためかは未だに分からない。ハリーを守るためなのはもちろんだけれど、私にはもう1つ何か理由があると思えて仕方がなかった。
「(ハリーを助ける、でもそれは何から?)」
吸魂鬼からだろうか?いや、新聞でそれを読んでハリーが吸魂鬼に襲われたことを知っているとしても、それと彼がアズカバンから抜け出せた事は関係がないはず。彼がアズカバンから抜け出せたから、吸魂鬼はホグワーツへとやってきたのだ。なら、彼は何からハリーを助けるために?ヴォルデモートから?いや、まだ彼にはそんな力はない。不運な事に力を取り戻しつつあるけれど、まだ完全ではない。けれど彼がハリーを助けるためにここへ来たのだとすれば、ヴォルデモート関連である可能性は十分に高い。
「(ヴォルデモート関連・・・ あの日に関する事?)」
あの日、私達が知らない、シリウスだけが知っている何らかの真実があることには間違いないのだけれど、それと何か関係があるのだろうか?そうであるなら、彼はきっと
自分が無実である証拠を掴んでいる。
「 それが、この学校内にあるの?」
答えの返ってこない自分の問いかけが、医務室全体に響き渡った気がした。