っ!!」



彼が私を呼ぶ声を聴く。けれどその声は私に向けられたものではなく、ソファに座って本を読んでいる“私”にそれだという事に気が付いた時、ようやくここが夢の世界だという事を理解する。身体全体が透けているし、私は地面に足を付いておらず彼らを上から見ていた。



「シリウス、どうしたの?」
「ジェームズ達に子どもが産まれるそうだ!!」



もう、何年前の話になるのだろう。けれどシリウスのその言葉はずいぶんと鮮明に残っていて、そしてその言葉に心底驚いて、自分の事のように嬉しさがこみ上げてきたのを覚えている。そんな嬉しい知らせを持ってシリウスが帰宅したのはハリーがリリーのお腹に身籠もって2ヶ月目のことだった。



、ジェームズとリリーの子どもの名前、何が良いと思う?」
「ふふ、気が早いわよ。まだ産まれてくるのに半年以上あるんだから。」
「し、仕方ないじゃないか。・・・何だか落ち着かないんだ。」
「うーん、ジェームズに負けないような格好いい名前にしないとね?」
「っ、ああ!」



ジェームズとリリーにそんな重大な役目を任されたのもその頃だった。最初はそんな重大な事を自分たちが決めても良いのだろうか、なんて思ったりもしたけれど、ジェームズとリリーが「君達だから、頼むんだよ。」なんてとても幸せそうな顔で言われたものだから、シリウスと2人でその役目を2つ返事で承諾したのもつい、最近の事のように思い出される。(あんなに幸せな毎日だったのに、  一体どこから)







「っ、何でシリウスがっ!!」
、落ち着くのじゃ。」



これは、彼が捕まってしまった後だろうか。ダンブルドア先生やマクゴナガル先生が私を落ち着かせようと両側に座って宥めているのが目に入る。こうして客観的に見る事ができるから言える事なのだが、当時の私は相当ひどい精神状態だったらしい。ダンブルドア先生にも後から聞いた事だけれど、衰弱しきって何度も寝込んだそうなのだ。病院に行かせなかったのは、先生達が配慮してくれたからだろう。

ダンブルドア先生の声を聞いていれば、ふと、別の方から声が耳へと流れてきた―ラジオだった。




「では、事件のあらましですが、一体どういったものなのでしょうか?」
「はい、ブラックはポッター夫妻が潜伏していた場所に例のあの人を呼び、そして親友であるポッター夫妻をあの人へと捧げたのです。」



そんなことあるわけないじゃない、彼がヴォルデモートに彼らを?そんな分かり切った嘘を簡単に言わないでちょうだい!! そう叫んだはずなのに、夢だからなのかそれは音にならなくてそのまま息として喉を通り外気へと混ざるだけで。



「(何で、彼がっ!!)」


その言葉を紡いでそこにいる“私”と同じように溢れ出てくるそれに構わずに、テレビから流れるその音を聞かないようにと耳を塞ぐ。彼が無実の罪で悪人扱いされる報道なんて、もう聞きたくない。しっかり塞いでいたはずなのに、その音が再び入ってきたのを感じると共に誰かの手が緩やかに私の手を耳から外した感覚が残った。(一体、何を )



「・・・ですから、生き残った住民はおらず、ただ1つ残ったのは彼らの学友であったピーター・ペティグリューの指だけが残っていたのです。」



最初に聞こえてきたその音、聞き入れようともしなかったその音に、妙なひっかかりを感じたのだ。




「・・・指、だけ?」

Approach to your heart

触れられた手は、ひどく懐かしく、温かいそれであった。