クリスマス、そして年明け。大広間ではそのどちらも盛大な食事が振る舞われた。ハリー達に誘われてその食事には行ったのだけれど、あまり味を覚えていない。ハリー達に心配をかけないようにと楽しもうとしたけれど、ハリーに贈られたあのファイアボルトの事が頭から離れなかった。あれは間違いなく、彼が


「   シリウス、」


部屋の中に彼の名前が響くように聞こえる。彼がここにいないことを分かっているはずなのに、それでも返事を求めてしまうのはひどく滑稽に思えてしまう。自嘲的に笑みを浮かべて顔を腕で覆い隠した。頬に流れ伝うものが止まらなくて、彼を苦しみから、孤独から長い間助けられずにいることが悔しくて、


「(どれだけこうしていれば、)」


ずいぶんとこうして涙を流したはずなのに、それでもそれは枯れることなく流れてきて、溢れてきて。まるでそれはとどまる事を知らないように次から次へと伝ってくる。本当は今にだって彼を探しに行きたい、けれどそれをしたところで何の解決にもならないことはもうすでに分かっていた。


「(    そんな事は、とっくに試した。)」


こうしている今も、彼はきっと吸魂鬼に見つからないようにどこかに隠れて潜んでいるのだろう。最低限の食事も睡眠さえも取らないで、雪が降り積もるひどく寒い中で。彼の事だからハリーのためならこんなこと、なんて思いながらそれに耐えているのかも知れないけれど、それは身体的にも精神的にも一番やってはいけないことだ。気付かないうちにそれは彼の体を蝕んでいってしまう。

倒れるなんてことが、もし彼に襲いかかってきてしまっては


「(もう、時間がない。)」


彼がアズカバンから抜け出して、もうずいぶんと日にちが経った。アズカバンにいた頃も、きっと満足に食事なんかできていないはずだ。それに加えて精神を乗っ取ってしまう吸魂鬼のあれを少なからず受けている。抜け出す事が出来たのだからすべてを吸い取られることはなかったのだろうけれど、それでも彼の身体状態はすでに限界点を超えていることには変わりなかった。



「   早く、」


気付いた時には立ち上がっていて、そのまま部屋を出ていた。途中で誰かが私を呼ぶ声がした気がするけれど、私の頭の中へとは入ってこなかった。足早に階段を下りて廊下を駆け抜けて、足が向くままにその方向へと進む。視界に入ってくるその見慣れた道順は、


「   リーマス、」
?どうし、」


先程まで動いていた足が急に止まってしまった。足掻いても彼に近づく事すらも出来なかった、あの頃のように。足を動かそうとしてもそれは全く動いてくれなくて、けれどそんなことで立ち止まっていてはいけない。早くしないと、  シリウスが


「   もう、時間が」
「    っ!!」


時間がないの、早く、彼を  私の意識はそこで途絶えてしまった。

In the floating awareness

伸ばした手は、どれも空振りに終わって