「父さん達は、親友だったブラックに殺されたんだっ・・・!」
小さい声だが私には十分すぎた声。ハリーを宥めていた手が、意識していないのに止まってしまう。「裏切られたんだ・・・っ!」 ハリーの声が悲痛になればなるだけ、私の中の何かが崩れ落ちていく。最後の一欠片が落ちる前に何とか受け止め、ハリーに言葉をかける。
「ハリー、落ち着いて。」
「だ、だって・・・っ!!」
「うん、分かってる。 冷静になれとは言ってないわ。このままだとハリーの喉が痛んでしまうから、」
自分の動揺をハリーに、みんなに気付かれないように落ち着かせるように頭を撫でる。「そうよ、ハリー。落ち着いて。」 ハーマイオニーも側に寄ってハリーの背中をさすった。 震えるこの隙間から落ちてしまうその前に、早く彼らから離れないと ―
「ハリー、とてもひどい顔をしているわ。」
今日は休んだ方が良いと思うの。 そう言ってハリーの顔が見えるように少し離れて涙を拭く。その瞳には少なからず憎しみの色が含まれていた。ぐるぐると、ハリーの綺麗な瞳と混じっていく。憎しみが人に覆い被さるのは驚くほどに速い。早く止めないといけないのは頭では分かっている。けど、それをしてしまっては 彼を、
シリウスを助けられないかもしれない
「ハリー、部屋に行って休もう。」
ロンに連れられてハリーが部屋に戻るのを確認して早急に立ち上がり、みんなに一言言って部屋へと戻る。 「大丈夫かい、何だか顔色が良くないよ?」 そう言ってくれたジョージに何でもないの、ありがとう。 と笑って返したけれど、ちゃんと笑えたかどうかも分からなかった。
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「 シリウス、」
そのままベッドへと崩れるように沈み込む。いつもよりもずっと深く沈み込んだようなそのベッドの上で、彼の名前を口にする。さらに重力が全身にかかったかに感じられた。どうして、彼が、
「今は、 まだ、」
けれど、いくら心に突き刺さろうとも、今は違うのだ。来るべき瞬間を待たないといけない。
「貴方の方が、ずっと辛いのにね。」
首から提げているリングが通してあるネックレスを見えるように手で持ち上げる。
ジェームズとリリーの結婚式の後に、彼がくれたそれ。
「っ、」
キラキラと光るその宝石は彼の瞳そのもののように見えた。締め付けられるその心臓に、リングを添えてそっと当てる。彼のことを考えると、否応なしに心が反応してしまう。それが表面に現れようとそうでなかろうと、彼のことを強く想えば想うだけそれに比例するかの如く私の心が揺れ動く。
「貴方がいないだけで、私はこんなにも・・・」
自分の声だけが響くその部屋で、ゆっくりと目を瞑った。