ハリーが気絶して医務室へと連れて行かれている間も、競技場に膝をついて彼のいた所をじっと見る。そこに触れても彼が戻ってくる事はない。ハリーが父親と同じ所でクィディッチをしているところを見たかったのだろう。そして、きっとこれが最初で最後のはずだ。危険を冒すのにまだ十分な時期ではないと彼は直感的に分かっている。


あと少し、もう少し早かったら、



!大丈夫かい?!」


リーマスが傘を持ってこちらに駆けつけてくれる。どこにいるのかと思ったよ、そう言って私の隣に座る。濡れてしまうと声をかけると、今更だよ、と微笑みながら返答してくれた。


「何か、ここであったのかい?」


リーマスの言葉にまた後悔の念が襲ってくる。何かに阻害されているかのようにシリウスに会うタイミングがずらされる。神の悪戯の如く、私が思えば思うほどそれは先延ばしになってしまう。これ以上、彼を独りにして待てと言うのだろうか。


「リーマス、」
「うん、」
「・・・・ここに、シリウスがいたの。」
「っ!本当かい?」


あれは絶対にシリウスだった。何十年と経っているけれど、それは間違いようがなかった。やっと手の届くところに彼がいたのに、手を伸ばしてもそれは空振りで終わるだけだった。自分の手を見ても、そこには彼の温もりさえも感じる事が出来ない。今は、空虚でしかない手を力一杯握りしめることしかできなかった。


「     また、助ける事ができなかった・・・っ!」
「・・・、」


ようやく彼を抱きしめる事が出来たのかも知れないのに、冷え切っている彼を助け出せたかも知れないのに。頭の中でそんなことばかりが回っている。私自身がしっかりしないといけないのに、


「     シリウスの笑顔ってね、」
「? リーマス?」
といる時が、一番輝いていたんだよ。」


もちろん、悪戯する時や考える時もすごく楽しそうだったし、見つかって逃げる時だってそうだった。でも、が笑ってシリウスの側にいる時が、一番良い顔をしてるんだ。    だからね、


は笑顔でいなくちゃ。君の涙がシリウスは一番辛いって言ってたよ?」


君がシリウスの辛い顔をみたくないのと同じでシリウスも君の辛い顔を見るのは嫌だって。まるで、自分が辛い目にあったんじゃないかってくらいに、泣きそうだった。何で、が泣いてるのに何もできないんだって。


「約束したんでしょ? 約束はちゃんと守らなきゃ、ね?」


頭を撫でられリーマスの言葉を繰り返す。それと同時に昔のことを思い出す。それは、シリウスのことが好きな女生徒に突っかかれた時の話だった。



「何であんたの事なんかをシリウスが愛してるのよ!」
「いや、そんなことを私に・・・」
「シリウスに似合うと思っているの!?分相応って言葉を知らないのっ!?」
「・・・・、」
「全くシリウスも頭おかしいんじゃないの?こんな女と付き合うなんて。」
「っ、」


必死に走って、必死で涙を堪えた。私ではなくて、彼を悪く言われる事がひどく苦しくて。こんなことシリウスが知ったらきっと悲しむだろうと思ったら心がきつく締め付けられた。


「っ、シリウスっ!」


いつもゆっくりしたい時に来ていた湖の近くにある木にもたれかかり、今まで我慢していたものが止めどなく溢れ出る。自分のせいでシリウスが悪く言われるのはどうしても我慢できなかった。彼は何も悪い事なんてしていないのに。


っ!」
「!! シリウス?」


誰にも見られていなかったはずなのに、何故ここにシリウスがいるのだろう。そう言葉にしたかったのに、それはシリウスが抱きしめることでできなかった。


「ごめんな、俺がそばにいればが悲しむ事なんてなかったのに。」
「シリ、ウス?」
に泣かれるのが一番辛いんだ。」


お願いだから、俺のために笑ってくれないか?の辛い顔なんて見たくないんだ。   そう言いながら私の目を見る彼の顔はひどく悲しそうだったのを覚えている。そして、そんな事を言ってくれるシリウスを強く抱きしめた事も、


「シリウス、」
?」
「貴方のためなら、私はずっと笑顔でいるわ。」
「・・・サンキュ。」


そう言った時の彼の笑顔がすごく輝いていた事も、




「・・・笑顔で、」
「うん、笑顔でシリウスを迎えなきゃ。」


運命が何本に分かれていたって、その途中に不幸がいくつあったって、それはにきっと大きな幸福をもたらしてくれる。俺はそう思うな。


「   大丈夫だよ。」

何でそう思うの?そんなの行動して見なきゃ分からないと思うのだけど。

「っ、」

だって、はちゃんと行動を起こしているだろ?  それに、

「シリウスを助けられるのは だけなんだから。」

俺が、を絶対に幸せにするんだ。不幸になんてさせやしない。

By a twist of fate

運命に味方するのは  天使か  悪魔か