「凄い雨ね・・・」
今日はクィディッチの試合なのだが、外見てみると強い風に強い雨。クィディッチは天候関係なく行われるからこの天候ではどちらに有利に働くか分からない、天候が吉と出るか凶と出るか。生憎、黒い雲は辺り一面覆っていて晴れそうにない。
なんだか、嫌な予感がしてならない。
「ハリー?」
「あ、!」
少し早いとは思ったけれど、することも特になかったので大広間に向かう事にした。と、そこにはオートミールを食べるハリーの姿が見えた。挨拶をすると笑顔で返してくれる。緊張している様子はなく、わくわくしているようにも見えた。こういうところは父親にそっくりだ。
「練習見にいけなくてごめんね?」
「ううん、体調が悪かったんだから仕方ないよ。」
「今日は行くわ。頑張ってね、ハリー。」
「うんっ!」
あまり無理はしないように、と声はかけるけれどハリーの事だ、きっとその言葉は忠告だけで終わってしまうだろう。ハリーと2人で他愛のない話をしていると、他のメンバーもだんだんと集まってきた。みんな雨なんか関係がないようで、気合い十分のようだった。
「おお、我が姫君のじゃないか!」
「おはよう!!」
「おはよう、ジョージ、フレッド。」
練習には行けなかったけど、今日は必ず見に行くわ。2人とも頑張ってね? と声をかけると嬉しそうに笑ってくれて、もちろんさ!のため、グリフィンドールのため、頑張ってこようじゃないか! なんてとても頼もしい言葉が返ってきた。すると、横にいたオリバーが(オリバーとはよく図書館でクィディッチの作戦を考えている友人だった。とても頼れるチームリーダーだと思う。) みんなに声をかけた。
「さあ、みんな行くぞ!」
土砂降りの中、クィディッチは始まった。雨のせいで、辛うじてでしか試合の様子が分からない。ハリーを見ると、ブラッジャーに何度か当たっていて振り落とされそうになっていた。一度、オリバーがタイムを要求した。タイムが終わって少しするとハーマイオニーがいつの間にか観客席に戻ってきていた。
「ハリーの眼鏡に防水の魔法をかけてきたの。」
「そっか、ならハリーはよく見えるようになったのね?」
「ええ!きっと大丈夫!」
ハーマイオニーの魔法のおかげだろう、ハリーの動きは先程よりもはるかに俊敏になっていて見事にブラッジャーを避けていく。けれど、稲妻が光った瞬間ハリーの動きが急に停止した。ハリーの目が一点に集中しているように見えた。その視線を追ってみるとそこにいたのは 見覚えのある、黒犬だった。
「っ、 シリウス?」
見間違うはずのない彼の変身した姿。その黒犬は確実にシリウスだった。確信した瞬間、辺り構わず観客席を駆け上って、彼のいる席へと急ぐ。 早く、彼に、シリウスに。
「シリウスっ!! ・・・・いな、い?」
駆け上がってみると、そこにはもう彼の姿がなかった。
「また、会えなかった。 っ、」
その姿の残像だけが私の頭の中をかけめぐる。悲しみが私の心を覆おうとしたその時、背筋の凍る気配を感じた。慌てて後ろを振り向いた。私の目に入ったのは、
「っ、ハリー!!」
吸魂鬼がハリーの幸福な感情を吸い取っている所だった。何人もの吸魂鬼がハリーを取り囲んでいる。私は咄嗟に杖を出して守護霊の呪文を唱えた。
「っ!?」
一瞬だけ吸魂鬼がひるみ、ハリーが地面へと向かって急降下していく。あのままでは確実に骨まで粉々になってしまう。今頭の中にある疑問を押し込めて、杖をふってハリーが落ちる速度を極端に落とした。彼が守ろうとしているハリーを死なせはしない。
「これで、大丈夫。」
あの後はきっと校長先生が何とかしてれる。競技場へ入ってくるダンブルドアを確認して杖をしまった。体に打ちついてくる雨、それが含んだ服。雨だけじゃない重さがそれには感じられる。
「 呪文の力が、弱かった」
守護霊を呼び出そうと、幸福な気持ちを引き出そうとした。私の最大の幸福はシリウスが側にいて幸せそうに笑っている事だ。それが強い守護霊を出すことを可能にしてくれるものだった。
けれど、
私の頭の中には先程の残像が残っていて、か細い光しか出す事が出来なかった。
「シリウス、」
学生の時よりも、その姿はかなり痩せ細って見えた。今にも折れそうな手足、骨だけのようなその体。以前の彼とはほど遠いくらいか細く、か弱い姿。
名前を呼んでもそこに彼はいない。その事実だけが心に突き刺さる。
雨は自分の声も彼の声も遮るかのように強く降りしきっていた。