夕食を取り終え、ハリー達と大広間を後にする。あとで、リーマスの部屋にパンプキンパイでも作って持って行こうか、なんて考えながら歩いていると、前方に生徒が大勢いてこれ以上進めないようになっていた。
「何か、あったのかな?」
「分からないわ、何があったのかしら?」
ハリーとハーマイオニーがそう話している間も、嫌な予感がしてならなかった。私にとって、何か重要なことがこの先にはあるように感じてならなかった。私はそっとそこを抜けだし、前へと進んだ。
― 彼がここに来た気がする。
前へ進んで太った婦人の肖像画を見ると、そこに太った婦人の姿はなく、あるのは切りつけられて肖像画の意味を成さない肖像画があるだけだった。私が立ちつくしその画を見ていると、隣にダンブルドア先生がいていつの間にか私は支えられていた。
「気をしっかり持つんじゃ、。」
「先生、でも、彼が・・・」
ダンブルドア先生に言われて気をしっかり持とうとするのだけど、心の中は動揺が渦巻いている。確証があるわけではないけれどなんとなく、感じるのだ。もしかしたら、本当に、彼がここに、
「婦人を早急に探さねばならん。先生や、ゴーストに手伝ってもらわねば・・・」
ダンブルドア先生が指示を出していると、上から声が聞こえた。声の主はピーブズだった、どうやら婦人の姿を見たらしい。そして、誰が婦人のいたキャンバスをこうしたのかも、
「シリウス・ブラックはひどく怒っておられましたよ、校長閣下殿!」
ピーブズが彼の名前を出した途端、心の中にあった渦が崩壊してさらに混乱してしまった。頭の中に苦しそうなシリウスの顔が浮かび上がる。 気付けば、私の足は動いていた。
「っ!どこに行くの!?」
後ろからハリー達の声がしたが、それに返答する余裕は今の私にはなかった。シリウスがホグワーツの中にいた、その事実だけが、私の心のなかで崩壊していないものだった。
「どこに、居るの?」
声を出しても返ってこない彼の声。やっとの思いでここに来たに違いないだろうに。あのアズカバンから逃げ出してここに来るのは想像し得ない苦労があったはずなのに。それを、ただ、新聞やひとづてに聞いているだけなんて・・・・
「彼を、助けたいのに・・・っ!」
足だけは動いていたらしく、辺りを見回せばそこは中庭だった。先程までは綺麗な星が見えていた空も雲が押し寄せて、雨がひどく降っていた。彼の心の中を表しているような、土砂降りの雨。ハリーを助けたいのに、目の前にハリーがいるのに、助けられない。そんな彼の葛藤が、空から押し寄せてくるようだった。
「っ!!」
振り返ると、リーマスがこちらに駆け寄ってきた。 「風邪をひいてしまうよ、戻ろう?」 優しく、諭されるように言われる。けれど、体が思うように動かない。
「リーマス、私は、シリウスをっ!」
「うん、分かってる。 分かってるから。」
ふわっと視界が狭まる。リーマスに抱きしめられたのだと、少なくなっている思考でなんとか分かった。ほおを流れる液体は、雨なのだろうか・・・・それとも、
「彼は、何も、していないのにっ・・・・!!」
シリウスを助けたいのに助けられない。そんな自分が悔しくて、
「早く、彼を助けたいのに、気持ちばかりが・・・!」
しっかりしないといけないのは、私自身だと分かっているのに・・・
目から流れてくるものが止まらない。
「シリウス、どこにいるのっ・・・!」