ボガートを使った授業は生徒を徐々にリーマスが素晴らしい面白い先生だと言うことを認識させていく。
ネビルから始まって、生徒が入れ替わり立ち替わりにボガートの前に行ってボガートを退けさせる呪文、「リディクラス!」 と唱えて面白可笑しく姿を変えさせていく。
「よしその調子だ!」
リーマスも楽しそうに横で見ていた。昔と変わらず、リーマスは人に教えることに長けている。
そして、ハリーの順番が回ってきた。
「ハリー!」
リーマスがハリーを呼んでボガートの前に行かせる。 嫌な予感がさらに強まった。
ハリーはきっと皆が恐れている恐怖そのものを ― ヴォルデモートを 想像してしまう
ハリーが成功してくれることを祈りながら、すぐに呪文を唱えられるように杖を手に取った。
矛盾していることは分かっているのだが、ハリーを危険にさらさないためにも準備は万全にしておきたかった。
ボガートがハリーの恐怖が何か思考を巡らせ、くるくると何物でもない姿で変化する。 と、ボガートは答えを見つけたのだろう、ハリーの恐怖の物にすっと形を変えた。
「っ、吸魂鬼・・・」
ボガートが変身したのは私が予想していたヴォルデモートではなく、
吸魂鬼であった。
吸魂鬼を見ると、彼の辛そうな顔が頭をよぎる。 彼の、やつれた姿が見えてしまう。
そうしている間にもハリーの体から幸福の気持ちが取られていく。
ハリーを早く助けなければと思っているのに体が動いてくれない。
「っ!」
私が動くより前にリーマスがハリーの前に出て、ボガートを混乱させた。
またボガートがある物へと変化していく。
―っ!このままではっ!!
「! リーマス、駄目よ!」
リーマスの行動で目が覚めた私はボガートがリーマスの恐怖のものに変化する前に彼らの前に立って杖を構えた。
けれど私が呪文を唱えるよりも、ボガートが私の恐怖の物に変身する方が早かった。 そこに現れたのは、
「っ?! し、りうす?」
私の方を見て幸せそうに微笑んでいる彼の姿だった。
彼は私の方に歩み寄ってくる 一歩、また一歩、
私は硬直したように足が動かず、彼が歩み寄ってくるのをただ見ているだけしかできない。
「、」
私の大好きなあの声で私の名前を呼ぶ彼、私の頬に手を伸ばしてくる。
けれど、私に触れた彼の手は、 赤く染まっていた。
「 え? 」
「っ、」
私の目の前で、シリウスは血まみれになっている心臓をおさえて倒れ込んだ
「!! シリウスっ!」
私が倒れ込んだ彼に触れようとすると、途端に彼の姿が跡形もなく消えてしまった
「シリウス? ・・・・き、えた? 」
彼が、 シリウスが、 死んでしまう?
「 い や、」
幸福を掴み切れていない彼が 無実の彼が
「いやっ! シリウス!!」
私の前から、 この世界から 彼が消えてしまうの?
「 お願いだから、 いなくならないでっ 」