「先程は取り乱してすまなかった。」

「ううん、別に良いんだ。が驚いたのは怖かったからじゃねえんだろ?」



あれからの道中、ルフィを気にかけながらもチョッパーの能力について教えてもらっただったが、その時の彼の顔と言ったら、会って間もない彼らにも目に見えて分かるくらい好奇心に満ちていた。彼らがに気を許し始めたのも彼がこうして表情を見せたからかもしれない。




一本道だけれど、少し距離を歩いてようやくが住んでいる家へと到着する。1階建ての家であったけれど、その分面積は独りで住むには持て余すくらいの広さを持っていた。ダイニングへと彼らを案内して、コーヒーと紅茶、そしてジュースをそれぞれに置いた。そして冒頭の台詞に至るわけだが、チョッパーの言葉を聞いて安堵の表情を見せて一言お礼を述べると、チョッパーは照れながらも「どういたしまして!」とに返した。それからはまたいつもの表情へと戻し、彼ら全員のほうへと視線を戻した。


「さて、何から話すべきか。」


この島は先程言ったように、「名も無き島」と昔から呼ばれている。地図も名前も見た事がないのが当然だ。名も無き島と呼ばれる所以の1つになるのだが、この島は何らかの原理でこの偉大なる航路の気候のように気まぐれに浮き沈みする性質を持っているらしい。浮き沈み、というのは文字通り「島全部が海に浮いたり沈んだりする。」ということだ。


そしてその年月も100年に1度なり、50年に1度なりと、浮いている時間の方が圧倒的に短い。だからここを知る人は少ないし、知ったとしてもそれを信じる者もごく少数。この島への航路もここが浮いてくる時にだけ共に現れるものだから。君達が偉大なる航路を航海しているのなら分かるように、当然、この航路を自力で見つけるのは不可能だ。だから、名前も付かないし、付ける事もできない。



「とりあえず、これがこの島の名前の所以だ。」


ひと息ついて紅茶で喉を潤す。最も浮き沈みする島なんて信じるかどうかさえも怪しい話だが、本棚から取ってきていた資料をテーブルの上に置いて彼らに見せると、どうやら彼らは信じるということに至ったようだった。あんな嵐を直に体験した後なので、それも信じざるを得なかったのだろう。あの嵐は生きている方が奇跡だったようなものだった。


「そうか、なら何か質問はあるか?それに答えていった方が、理解するのに容易い。」


彼ら達に不必要な事を教えるのを不効率だと思ったがそう言って彼らに視線を向けるが、彼らから返ってくるのは沈黙ばかり。どうも今の話をした事でさらに混乱しているらしかった。はどうしたものか、と考えた末、すっと立ち上がってまた本棚へと行き、そこから数冊を取ってナミとロビンの方へと差し出す。


「これは?」
「この島に関する資料だ。詳しくはこれに書いてあるから読むと良い。」
「ちょっと良いかしら?」


ナミがそれを取って読み出す側ら、ロビンは彼女の腕にあるログポースに眼を向けた。もそれに気付いてそのことに関してまだ言っていなかったことに気付く。「ああ、まだ言っていなかったね。」


「この島のログは2週間だ。そして、次の島は   名も無き王国。」


その王国はここのように浮き沈みしないが、何せこの島のログがないとそこへは行けないからその王国もあまり知られていない。どこかにその王国へ行く隠れた航路があるとも聞いているが、それも定かではない。そして、その王国の次の島は本来君達がアラバスタ王国から向かおうとしていた島へと続いているから、航路の修正はしなくても良い。真っ直ぐな道に迂回路が付いていた、とでも思ってくれれば良いだろう。



「ねえ、。この島に来る前に嵐にあったの。その時ログポースは確かに壊れたはずなのに・・・」
「それは多分、この島の磁気と次の王国の磁気、それから本来向かうべき島の磁気が混ざった中間地点にいたからだろう。どこを指し示すべきか、分からなくなったのだと思う。」


それからはナミやロビンの質問に簡潔に答えていく。その間も、ルフィ達他の4人は外へ出るわけでもなく椅子に腰を下ろして、大人しく椅子に座っていた。達の会話に耳を傾けて聞いていたは良いけれど、それがさっぱり分からないルフィには退屈で仕方がないわけで。せっかく新天地へと来たというのに冒険せずに話を聞くなんて耐えられなかったのだろう。自分が気付いた時にはの腕を掴んで立ち上がっていた。


「  ・・・・どうした?」
「話は後にする!俺は探検したいんだっ!!」
「ちょっとルフィ!まだに聞きたい事がある、」
「知るかっ!俺はと探検したいんだ!!」


の意思を聞かずしてルフィはの腕を掴んだまま外に出ようとする。けれどその一方でナミがの片腕を掴んで引き戻そうとしている。で両腕を引っ張られながらも「どうしたものか、」なんて暢気にその様子を見て思案していた。


「にししっ!、行こう!!」


がそんなことをしているうちに、その会話は進んでいたようでそれからどうやらナミが折れたらしく、片腕から彼女の手が離れた。「全く、」なんてナミがため息をつきながら船長を見上げる。その船長はというと、好奇心があふれ出していて、顔にはたいそう楽しそうな笑みを浮かべていた。


、行ってきてあげて。私達はその間にこの本を読んでいるわ。」
「ああ、それは構わないが・・・」
「質問も後からするし。ていうか、そいつに言ったってもう無駄だしね。」


言われている当の本人はもうすでに外に出ていて「おーい!早く出て来ーい!!」なんて叫んでいた。船長への苦労が絶えないのだろうことを察して、は「大変だな」とありきたりな返事をすると、「慣れたわ、もう。」なんて悲しすぎる答えが返ってきた。けれど、にはそれがとても心地よく聞こえたのも確かであって、は自覚せずに思わず笑みを浮かべていた。


「シトロンも取りに行こうか。 来るかい?」


チョッパーに視線を変えて先程約束していたシトロンの件のことを言うと、チョッパーは嬉しそうに笑みを浮かべて「おお!行くっ!!」 と元気に返事をしてくる。それに加えてウソップも探検へと一緒に来る事になる。珍しいものを見てみたいのだという。2人が先にルフィの元へと行くのを後ろから確認して、ナミ達の方を振り返る。


「じゃあ、行ってくる。」
「ええ、お願いね。」
「この家の中は好きに移動してくれて構わない。因みに、客の寝室は隣にある。」


「ほとんど何もないけれど、好きに使ってくれて構わない。」 そう言葉を口にして、は外で待っているであろう3人の元へと踵を返した。自分の中に芽生え始めた不思議な心地よさを持って。

05.曖昧路線

いつの間にか居座った、その感情を自覚するのは

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title by 鴉の鉤爪 / 曖昧路線(ざっくばらんで雑多なお題(日本語))