「っ!!」
その言葉に、人から見ても動揺している事が明らかに分かってしまう程の反応をは返してしまう。まさか、その言葉を自分以外が使うと思っていなかったら、極度の混乱には次の言葉を上手く紡ぐことができなかった。 何で、どうして、彼はその言葉を使った、?
「少しばかり、心当たりがあってな。」
「 、そう、なのか。」
「その反応を見ると、俺の言葉は真実らしいな。」
「 お前は何を知ってる?」 何故だか口角を上げているこの男の言葉に、は何をどう返せば良いのか分からなかったし、その言葉すら飲み込むのにひどく時間を要してしまうほどに脳内が再度混乱していたのだ。面と向かって、その言葉を、異世界だという事実を突き付けられてしまった所為だろうか。もうこの世界は自分の知っている世界ではないのだと自覚していたつもりだった、諦めた、つもりだった。
「 俺は、イタリアという国で生まれ、アメリカという国で育った人間だ。」
気付いたら、そう口にしていた。この世界では、世界政府が、その直下の、海軍が、で良いのだろうか、世界を取り締まって、守っているようだが、俺のいた世界では、海軍は国ごとに別の組織として成り立っていたし、国ごとで取り締まる組織も違った。
「・・・それに、確かに世界は海を通して繋がっていたが、」
この世界のように、海が4つに分けられている事はなかった。それに、世界を横断しているレッドラインという大陸もないし、グランドラインというものもない。海を渡りたいなら、海や気候の変化に対する経験がいるだろうが、極端に言えば方位磁針で方角を確認して、それを目指すだけで自分の行きたい島には着く事ができた。磁気で方位磁針が惑わされる事はない世界だった。そもそも、確かに、島というものは存在したが、俺のいた国では海を渡ろうとするものは少なかったんだ。俺のいた国では島というよりも大陸とか国と言った方がしっくりくるし、移動手段も船ではなく他のものだった。
「 俺のいた世界は、そう言った場所、だった。」
そんな世界で、俺はマフィアとして暮らしていたんだ。 ドアにもたれ掛かっている男へと言葉を返す、というより、独り言のようには言葉を吐き出した。まるでそうする事で、頭を整理するかのように、 ここは自分のいたあの世界ではないのだと、言い聞かせるように。
「この世界には、どうやって来た?」
「・・・分からない。気付いたら、あの島にいた。」
「お前はどうしてこの世界の事を知ってるんだ。」
「あの島には一軒だけ家があるんだ。その家にあった本で知った。」
「まるでこの世界を知れ、と言わんばかりに、地理や歴史の本があったんだ。」 男の言葉に淡々と返事をするを見て、男は半信半疑で紡いだ異世界の人間という言葉を確信へと変え始めていた。自分の存在を部屋にいる2人に信じ込ませようとする素振りが一切見られず、それどころか疑っても構わないと言わんばかりに返事をしてくるのだ。異世界という言葉に自分達が興味を示して、珍しい人間だと思われたい愚かな奴だとすれば、今がしたような反応は見せないだろう。
「(・・・それに、)」
先程まで言葉数の少なかった人間がこうして捲し立てるように言葉を吐き出すことに違和感があったが、愚かな人間が都合の良くべらべらと相手に向かって喋って嘘で塗り固めていく、というよりも、のそれは自分に向けて言葉を放ち、混乱している頭を落ち着かせているような声音だったのだ。 そして何より、
「(異世界だと言った時の、あの顔、)」
目を見開いて、あからさまな動揺を見せたあの顔。その言葉を放つまで、の顔は無表情だったというのに、―そもそも任務で殺しをしてきたというくらいだ、元々、感情の起伏をほとんど人に見せることのない人間なのだろう―その一言を放った瞬間に見せたあれは、明らかな困惑だった。自分の身に起こっている事だというのに、その言葉を信じられないと言わんばかりの、
「その家はどこにある?」
「・・・海岸から森を見ると、ある一点だけ青に近い色をした木が見える。そちら側に海岸を歩いて行くとそこに家がある。」
だから、その異世界の人間だというに、少しばかりの関心が湧いてきたのだ。先程、感情の一端も感じられなかったその顔に広がったその表情がやけに頭に焼き付いていた。少しくらい、この男に時間を削っても構わないと思う程度には。
それに、仮にが異世界からの来た人間だとして、それならどうやっていかにも現実主義のように見えるが自分を異世界の人間だと信じるに至ったのか。答えはその家にあると見当を付け、男はにその場所を訊ねた。
「案内しろ、そっちの方が早ェ。」
「ええっ!?駄目だよっ、キャプテン!!この子まだ熱があるのにっ!」
「・・・いや、この程度なら構わない。」
「なっ、君も何言ってるの!じっとしてなきゃ駄目だって!」
大人しくと男の会話に耳を傾けていたキャプテンと呼ばれる男の仲間が慌てて制止の言葉を放った。けれどその言葉はにも男にも届かなかったらしい。横になっていた身体をゆっくりと起こしたは、まるで熱を出している人間とは思えないようにすっと立ち上がり、ドアにいる男の方へと向かった。
「心配するな、ベポ。こいつはこの程度なら倒れはしねェよ。」
「な、なんでキャプテンがそんな事分かるのさ!」
「おれもキャプテンもその子に会ったばっかりでしょ!?」 その声に男は口角を上げるだけで返事をし、ついてこいとへ言葉を放ったのだった。
Be out in the Left Field
しかしそれをどう自分が思っても、目の前に広がるそれが事実である事に変わりないのだ。
Next
title by 鴉の鉤爪 / be out in the left field(気が狂っている)(英語成句で50のお題[in])
title by 鴉の鉤爪 / be out in the left field(気が狂っている)(英語成句で50のお題[in])