01. 明日の準備 / 清春

「えっと、これと、これ。 それから、」
「おい、」

明日の準備をしていると、ベッドの方から彼の声がする。その声には拗ねているように聞こえた。

「ごめんね、清春。もうちょっとで終わるから。」
「チッ、んなもン明日すれば良いだロォ?」

ごろごろとベッドの上を転がってそう私に言ってくる清春。明日の朝すればまた彼はそうやって言ってくるんだろうなあ、なんて思いながら彼の機嫌がこれ以上悪くならないように手を速める。

「 ・・・よし、これで良いかな。 わっ、清春?」
「 遅ェんだよ、ったく。」

そう言いながら清春は後ろから抱きしめるその手を強めてきた。我慢が出来なかったらしく、ベッドからこうして降りてきたようだ。私の首に巻かれている腕に顔を預けて「ごめんね?」 と言うと、くいっと顔を向かせられて唇に彼のそれが当てられた。

「ん、」
「オレ様を待たせた罪は重いゼェ?」

「キシシッ、覚悟しろヨォ!」 なんて楽しそうに笑い、私を横抱きにしてベッドへと運んでいく。素直に寝かせてくれないと悟った私は(抵抗したって彼はそれだけ楽しそうにするし、もとより私も抵抗する気がない。)清春の首に回していた腕を少しだけ強めた。



title by WILD ROAD / 明日の準備(寝る前に5題)

02. 目覚ましセットを忘れずに / 瑞希

「ほら瑞希、もう寝るわよ?」
「う、ん。」

ソファに座って読書をしていると隣に座って同じく読書をしていた瑞希の身体が船を漕いできたから、もうそろそろ寝る時間だと思い、本を机に置く。立っているまま、寝てしまいそうな彼をなんとかベッドまで歩かせて、2人ともベッドへと入る。

「明日は休日だから、」

「起きるは9時頃で良いか、」 と言いながら目覚ましをそのくらいにセットする。 と、隣でもう寝ていたかと思っていた瑞希が目覚ましをセットしていた私の手を掴んだ。

「瑞希、どうしたの?」
「・・・めざまし、」

そう言ってそのままうとうとし始める瑞希。何で休日なのにセットするのか聞きたかったのだろうと思い、「そうしないと、瑞朝食が作れないし、瑞希を起こせないでしょう?」 と答えると、「ふふ、僕の、ため。」 そう言って嬉しそうに微笑んだ。

「起こされて、すぐに朝食を一緒に食べるのも、魅力的。  だけど、」

私の手から時計を取って、目覚ましのボタンをオフにしてベッドの隅にそれを置く。訳が分からず、その行為をぼーっと見ていた私を抱きしめて横になる。

「瑞希?」
「やっぱり、一緒に気持ち良く寝て、起きた時には隣にいて欲しい。」

「それで、ぎゅうって抱きしめて、おはようって、お互いが言うの。」 半分寝ながらそう言う彼の顔がとても幸せそうだったから、彼の頬にキスを落としてそのまま彼の腕の中で私も夢の中へと旅立っていった。



title by WILD ROAD / 目覚ましセットを忘れずに(寝る前に5題)

03. 触れた指先にうずく熱 / 瞬

冬の寒さもようやく緩和してきたとはいえ、やはり防寒具なしに学校を往復する事はまだできなくて、寒さしのぎにコートを羽織る。マフラーもしっかりと首元に巻いて、暖かいバカサイユからさあ帰るかなんて意気込んだそんな時、バカサイユのドアが音を立てて開いた。


「瞬。どうしたの、そんなに慌てて。」
「いや、バイトが早く終わったから、」


そこまで言って彼は口を閉じる、それを言葉にするのが恥ずかしいのか、はたまた別の理由からか、私なりに毎回思案するのだが、瞬がこうして迎えに来てくれた事実の嬉しさにすぐに思考を持って行かれてしまう。


「ありがとう、瞬。」
「  ああ、」


少しだけ頬を赤らめて返事をする瞬。可愛いなあなんて口にしては言えない事を思って彼を見ていると、「ほら、」と瞬の声と共に視界に彼の手が入ってきた。


「瞬?」
「寒い、だろ。」


そう言うと半ば強引に私の手を掴んで指を絡ませる。それをまた照れて言う彼がひどく愛おしくて、絡める力が自然と強まった。



title by 触れた指先にうずく熱(指に触れる愛が5題 )

04. ミルクティで休憩 / 瑞希

「瑞希、ミルクティでも飲む?」
「うん、ちょっと、休憩する。」


卒業後、今日も今日とて悠ちゃんに会うために語学準備室へと訪れた瑞希と私。昨夜の内に悠ちゃんには連絡を入れておいたからここで待っていることは彼女も知っている。悠ちゃんが来るまでの間に、瑞希は論文を書き上げると言ってずっとパソコンの前に座ってキーボードをトゲーと協力して打っていたのだけれど、さすがに疲れてきただろうと思い彼にカップを差し出した。


「美味しい、 ね、トゲー?」
「トゲーっ!」
「ふふ、ありがとう。」


隣に腰を掛けて嬉しそうに飲んでくれる1人と1匹を見ていると思わず笑みを浮かべてしまう。こうやってのんびりと過ごせる空間も好きなのだけれど、ここにいるとその空間が一変するのだから面白い。もうそろそろかしら、そんな事を思っていると、「・・・また、来る。」なんて瑞希の声が聞こえたから私は棚から2個カップを取り出すために立ち上がった。


「えーっと確かこの部屋に・・・って、斑目っ!?」
「相変わらず、成長してない。」
「う、うるせー!!っていうか、何でここに居るんだよ!」
「先生とここで待ち合わせ。」


そう言いながらもミルクティを飲み続ける瑞希に、それに食ってかかる真田先生。彼が来るとこんなにも賑やかになるから不思議よね、なんて思いながら先生にもカップを差し出すと瑞希に話しかけながらも「ああ、ありがとう!」なんてお礼を言ってくれる。


「って、聞いてんのか斑目!」
「聞いてる聞いてる、ね、トゲー?」
「クッケ。」
「絶対聞いてないだろーっ!!」


顔を赤くさせて起こる先生にミルクティを飲むように勧めながら、楽しそうに笑っている瑞希の隣へとまた腰掛ける。悠ちゃんはそう言えばいつ来られると言っていただろうか、と考えていると真田先生と会話を楽しんでいた瑞希が私の脚へと倒れ込むように沈んできた。


「わ、瑞希?」
「・・・パソコンと、ミルクティの相乗効果で眠くなってきた、」
「ふふ、まったく。」


その2つに相乗効果なんて生まれるのかどうかが気になったけれど、瑞希が微笑みながら擦り寄ってくるものだからそんな事はすぐに頭の外に追いやってしまった。可愛いなあ、なんて愛しさを感じながら彼の柔らかいその髪に指を通していると目の前に座っていた真田先生が勢いよく立ち上がった。


「お、おい斑目っ!ど、どこをお前は枕にしてっ!?」
「ふふ、羨ましい? でも、ここは僕だけの、枕。」


「そうだよね?」 名前を呼ばれて幸せそうな笑みを浮かべながら同意を求めてくる瑞希。愛しい声でそんな顔をされては、首を縦に振らないわけにはいかなくて。あまりにそれが愛おしく感じられたものだから、返事をする代わりに眠る彼の額に唇と1つ落としてしまったのはやはりどうしようもなかった事なのだ。



title by WILD ROAD / ミルクティで休憩(ティータイムで5題 )