01. さあ、遊びに行こう / キッド

「船長、キッド船長っ、上がりましたよ、雨!」
「・・・分かったから、ンな慌てンじゃねェ」


着いたその島には大きな待ちがあり、豊富な本が売ってあると聞いてから早く買いたくてうずうずしていたのに、俺たちがこの島についてから、何故か降っている雨が止んでくれなくて。折角の本を濡らしてしまうのも嫌だったから、晴れるまで我慢に我慢を重ねて待っていた、そんな今日。ついに、太陽が雲の隙間から現れるのを俺はその目で確認することができて。


「ったく、本は逃げねェだろうが。」
「わ、分かってます!で、でもやっと晴れて本が買いに行けると思うと・・・」


「足が、勝手に・・・」 急いでしまう足を何とか落ち着かせようと抑えながら、それでも俺の隣を歩いてくれる船長にそう返事をする。「どうせ1人じゃ持てねェくらい買っちまうんだろ。」 そういった船長とこうして本屋へと行く事になったのがひどく嬉しくて、たぶんそれの所為もあってか、つい、逸る足を抑えきれなくて、水溜まりを避けながら足を前へと進めていれば、


「う、わっ、 !   ・・・あれ、」


水溜まりを避けながら足を進めていれば、何かにつまずいてしまったらしい。気付いた時にはもう自分では
支えきれないくらいにバランスを崩してしまった。今この少しぬかるんでいる地面へと身体を付けてしまえば、本屋に行く前にまた一度船へと戻らないといけない羽目になる、また本屋へ行く時間が遅くなってしまう。
それでも、完璧に崩れてしまったバランスをどうにかする事もできなかったから、自分の間抜けさを悔やみながら、反射的に目を閉じて衝撃を待ち構えてしまう。・・・けれど、その来るべき衝撃が、あまりに優しい、温かいそれであったから、つい、俺はふぬけた声を出してしまいながら、ゆるりと目を開く。その視界に入ってきたのは、


「・・・言わんこっちゃねェな、お前ェは。」


腕の中で紡がれたその言葉に、身体に広がるその温度に、本屋へ行くことを少しの間忘れてしまった、そんな瞬間だった。



さあ、遊びに行こう
「さっさと行くぞ。」 そう言いながら歩き始める船長の背中が、とても広く見えた、そんなある日の雨上がり。



title by Seventh Heaven / さあ、遊びに行こう(天気を感じる3のお題)

02. 水溜りに映る青い空 / マルコ / 学パロ

「・・・おい、」


傘を差しながら、ゆるりゆるりと学校へ向かって歩く。そういえば、そろそろ生徒総会の時期か、なんて雨の降る中そんな事を思い出していれば、ついつい総会の事を考え始めてしまっていたらしい。いつの間にやら結構な距離を歩いていたようで、後ろから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


「ん? ああ、マルコか。おはよう、どうした?」
「・・・それはこっちの台詞だよい。もう雨は降ってねェんだが。」


俺の視界へと入ってきたマルコに何だか違和感を覚えながら、返事をする。マルコの視線が何だか呆れるようなそれだったから、思わずそう言葉を漏らすと、マルコの視線が、彼の指が、俺の頭上にある傘へと向けられていて、続けざまにそう言葉を放たれる。


「え、あ、ああ、本当だ。」


その言葉に思わず驚いて、傘を退けて自分の視界に空が入ってくるようにしてそこを見上げる。そうすれば、先程の雨が嘘だったかのように一面に青空が広がっているものだから、つい間の抜けた声を出してしまいながら、いそいそと傘をしまう。それにしても、いつから止んでいたんだろう、水溜まりに映る青色のそれを見つつ、そんな事を思っていると、「俺が出る頃にはすでに止んでたよい。」 なんて心を読んでいるかのようなタイミングで、マルコかそんな言葉を俺へと紡ぐ。


「また歩きながら考え事でもしてたんだろい。」 
「・・・生徒総会の事を考えていたら、つい、だな・・・」


俺の隣を歩き始めるマルコに、何故だか言い訳をしている子供のような感覚になりながら、そう言葉を返す。けれどマルコはそれすらもお見通しだったようで、「・・・そんな事だろうと思ったよい。」なんてため息と一緒に返されてしまった。マルコのそれにつられるように俺も深い息を吐きながら情けないと思いつつも、それでも、まあ良いかなんて甘い考えを持ってしまうのは、


「・・・ったく、そういう事は俺の目の届く範囲だけにしろよい。」


「危なっかしいったらねェよい。」 なんて言葉を紡いでくれるマルコに、俺は広がる青空を見上げながらゆるりと頷いた。



水溜りに映る青い空
ふわりと髪の毛を揺らす風が、その水溜まりを揺らしていった。



title by Seventh Heaven / 水溜りに映る青い空(天気を感じる3のお題)

03. 指先に心音 / エース

「・・・??あの、エース隊長、どうかしました、か?」


今日は天気が良いから洗濯にはうってつけだと言って嬉しそうに話すこいつを追って、甲板へと一緒に出る。どうやら、今日の洗濯当番は俺の部下だったらしい。甲板へと腰を降ろして、話をしてくれる部下の背中を、思わずゆるりと頬を緩めながら眺めていると、さすがに俺の視線に気付いたらしい部下が、俺へとそんな言葉を投げかけてきた。


「ん?いや、何でもねェぞ?」
「・・・何でもない、ですか?(・・・何だか、視線をものすごく、感じる気がするんですが。)」


「・・・あ、それでですね、俺が、 」 でも、俺はそれに気付かないふりをして、ただ笑って素知らぬ顔をして言葉を返す。そうすれば、自分の気のせいだと思い込んだらしく、また話の続きを聞かせてくれた。もちろん、俺もこいつの話を適当に聞き流している訳ではない・・・ああいや、「うん、」とか、「そうなのか、」とかしか言葉が返ってこないあいつにしてみたら、適当に聞き流しているように聞こえるかも知れねェけど。


「・・・あの、エース、隊長?」


「本当に、どうもしないですか?」 どうやら、本当に俺を心配しての、言葉だったらしい。さっきまで見えなかった心配の色が、こいつの目に浮かんでいるのが見えたから、「大丈夫、どうもしねェ。」 と近寄ってきた俺の、愛しい部下の頭をゆるりと撫でながら、笑みを浮かべて返事をする。「・・・それなら、良いんですけど、」 そう言って、ほっと安心するように息を吐き出して、ゆるりと、少しだけ困ったように、笑みを浮かべるこいつが、 もう、 本当に、 たまらなく、


「 うわっ、 え、エースたいちょっ、 !」


ぐいっと、勢いよくこいつの腕を引っ張って、自分の腕の中へと抱き込む。ぼーっと、楽しそうに話をするこいつを見るだけでも、自分がその中にいるみたいに、楽しくなって、嬉しくなって、愛おしくなるのに、そんな可愛い部下が、俺の事を心配して、俺の言葉に頬を緩ますだなんて事をした日には、こうせずにはいられないと、俺は思うわけで。  そして、 


「   俺、お前の事が大好きだ。」


今更過ぎる、そんな言葉を、こいつの耳元で囁いた後、また同じ言葉をこの船全体に響かせるように、紡ぐのだ。少しでも多く、お前に俺の気持ちが伝わるように。



大声で言うよ君への愛のすべてを
おいこらァ!甲板で愛を叫び合ってんじゃねェぞ!!何だ、俺たちへの嫌がらせか!!   さ、叫び合ってないですよ!叫んだのエース隊長だけじゃないですかっ!!  ・・・なんだ、お前は俺を好きじゃないのか?  い、いや、好き、隊長の事はもちろん好きですけどっ!  やっぱり叫び合ってんじゃねェか!!  だ、だからっ!



title by 1204 / 大声で言うよ君への愛のすべてを(君を好きな1weeks)

04. 運命と言う二文字でくくることなんてできない / ロー

「・・・今日、よく当たるらしい占い師の所に行ったんだが、」
「・・・船長、熱でもあるんですか?」


3時のおやつと言ってケーキにフォークを刺している部下へと、ぽつりと言葉を漏らせば、返ってきたのは失礼極まりないそんな反応。目を見開いて、心底驚いているようなそんな顔をするモンだから、思わず笑っちまいながら、「 フフ、 何だ、その失礼な反応は?」なんて返せば、「・・・いや、だって、船長が、占いだなんて、天と地がひっくり返る前触れのような、そんな・・・」なんて、さらに失礼な言葉が返ってきた。


「本当に失礼極まりねェな。  俺はベポが行きてェと言ったからついて行っただけだ。」
「・・・あ、なんだ、ベポですか。」


ベポの名前を出した途端、ひどく安心したように息を吐き出す俺の部下。こいつは、本当に俺の事を船長だと思っているんだろうかと、こうしてたまに思う事があるが、・・・まあ、それは後日に問いただすとして、だ。今は、その事を言いてェ訳じゃなく、


「それで、占い師の所に行って、どうしたんですか?」
「あァ、 ・・・まァ、俺は聞く気なんざ、全くなかったんだが、」


「何故か、その占い師が俺を見てきてな・・・」 ベポの付き添いとはいえ、占いとやらには全く興味が無く、信じてもいなかったから、わくわくしているベポを余所に、壁へと凭れて内容を聞く訳でもなく1人と1匹を眺めていれば、何故か、占い師の方が俺を見てきて、何故か、ゆるりと笑みを浮かべて、


「『貴方、  今、恋人にしている人が、きっと運命の人ですよ。』・・・と、言われた。」
「・・・・・・・・はい?」


占い師の口から放たれた言葉を、一字一句、間違うこと無く、伝えれば、返ってきたのは、先程見たばかりの反応で。まァ、俺もその言葉を聞いた時、少々面を食らったが、ケーキへと伸ばしていた手を、身体全部を固まらせているこいつ程ではない。そんな大きすぎる反応に、また声を漏らして笑っていると、ようやく我に返ったらしく、再度、こいつはゆるりとフォークをケーキへと突き差す。


「・・・で?それを、まさか船長が信じた、んですか?」
「フフ、 ・・・俺が、信じるとでも?」
「・・・でしょうね。」


頬杖をつきながら、そんな言葉を受け取る。こいつに言ったように、当然、俺はその占い師の言葉を受け流した。運命なんて、生まれてこの方信じたこともなく、そんなモノは自分で選び取るモンだと思ってきた。今でもそれは変わらねェし、今の恋人、 目の前でケーキを美味そうに食っているこいつが、世間一般で言う、神とやらが選んだ、俺の運命の人なんてのも、思わねェ。


「フフ、 ケーキ、口元に付いてるぞ。」
「え、どこですか? 取りますから、教えてっ!!」


というか、こいつを選んだのは、  神とやらでも、 他の誰でもなく、  俺自身だ。  フフ、なァ、そうだろ、



運命と言う二文字でくくることなんてできない
・・・普通に手で取ってくださいよ。   フフ、なに、お前への愛を、 身体を使って表現してみようと、思っただけだ。   ・・・表現しなくて結構です。(何でこの人が言うと、こうも卑猥に聞こえるんだ。)


title by 1204 / 運命と言う二文字でくくることなんてできない(君を好きな1weeks)