01. 雪がとけるように / 白ひげ
「グラララ!そんなに次の島が春島だってェのが嬉しいのか?」
気候が安定して、次の島が近付いている事を、自分の肌で実感し始めた今日この頃。前回の島が冬島だった所為か、何だかんだでここのところ毎日のように親父さんの元へと来て、快く了承してくれた親父さんの足元でぬくぬくと暖をとっていれば、上から降ってきたのは、楽しそうに笑っている親父さんのそんな声で。
「親父さんは、冬島の方が良かったですか?」
親父さんに嫌いな季節なんて無さそうに思えたけれど、好きな季節はあるんだろうか、なんてふと思ったから、そう言葉を親父さんに返して。俺と同じ、春島だったら良いなあなんて思いながら、ぽかぽかと太陽の日差しを、触れているところから親父さんの体温を、自分の身体に同時に感じつつ、親父さんの方へと顔を上げると、
「 あァ、そうだな。俺はどの季節でも酒が美味く飲めりゃどれでも良いが・・・」
「?? 親父さん?」
顔を上げた俺と視線を会わせてくれた親父さんは、俺にそう返事をしてくれながら、ゆるゆると俺の頭を撫でてくれる。その広がってくる心地よさに、思わず擦り寄ってしまいながらも、親父さんへと疑問符を浮かべてそう呼べば、その顔に、俺の大好きな笑みを浮かべて、
「愛する息子が、こうしてくっついてくるからなァ。 冬島が好きだって言っとくか。」
「まァ、いつでもこうして来て良いんだがなァ?」 俺の息子は、どうも遠慮ってモンを持ち過ぎらしい。 ふわりと俺へと降ってきた、そんな親父さんの声に、言葉に、 俺の脳内がそれを理解するにつれて、 俺の頬は、また、ゆるりゆるりと緩まっていってしまうものだから、
「(ああもう、 ) 親父さん、」
「グララララ!! 何だ、食堂にでも行ってくるのか?」
嬉しいそんな言葉を放った後に、そうやって俺からの言葉を紡がせようと、わざと親父さんがそう質問しているのだと、馬鹿な息子である俺でも、そんな愛しい親父さんの言葉に含まれている意図くらいは、分かるから、
雪がとけるように
「もう少し、こうしていたいです。」 なんて言葉を紡ぐ俺を、親父さんは笑みで迎えてくれるのだ。
title by プラチナ / 雪がとけるように(5つの春のおはなし)
02. ひなたぼっこ / シャンクス
「(あー、気持ちいい。)」
久しぶりの良い天気に、思わず甲板に座り込んでひなたぼっこをし始めた俺は、上から降り注いでくる太陽が少しだけ眩しく感じてしまい、ゆるりと目を閉じてその光を身体で感じ取ることして。ひなたぼっこをしていると、なんで睡魔が襲ってくるんだろうと、そんなくだらない事をゆるゆると脳内で考えていれば、
「(・・・本当に眠たくなってきた。)」
どうでもよい事を考えていた所為なんだろうか、そんな事を考えていたら、徐々に思考回路が停止へと向かっている事に気づく。うとうととし始めてしまった俺の脳内に、こんな場で寝てしまったらまた副船長に苦笑されてしまうし、何より、船長に「いくら天気が良くても風邪をひくかも知れないだろ?」 なんて言って心配をかけてしまう(・・・前科があったりする訳だけど、)
「(・・・でも、もうなんか動けない気が、)(あー、また、心配を、)」
「・・・ったく、お前は本当に太陽の下で昼寝をするのが好きだな。」
「 あ、 シャンクス、せんちょう?」
すでに自分に言い聞かせたところでどうにもこうにもならない状態にまで、睡魔が俺の中へと浸透してしまっていて。そんな脳内にそれでも何とか自分に言い聞かせようと試みていれば、ぼやけていく視界の中に、けれどしっかりと、その赤い色をした髪が、その大好きな声が、俺の感覚全てに伝わってきた。それから俺は、脳内で考え出すとかそれ以前に、半ば反射のような形で、船長の名前を呼んでいて、
「 なんだ、もう唇もロクに動かせないほど眠いのか?」
「 せんちょ、おれ、 またひる、ね、」
「あー、もう喋らなくて良いから、な?」
船長の言葉に、何だか的外れな返事を返してしまった気がしてならなかったが、残念なことに、俺の脳内は、もうほとんど停止してしまっていて。・・・けれど、そんな動かなくなってしまった身体でも、船長が俺の隣へと腰をかけてくれて、その肩に俺の頭を乗せてくれて、ゆるゆるとその頭を撫でてくれるのだけは、ちゃんと感じ取ってくれたから、(・・・心地よい、です、 シャンクス、船長。)
ひなたぼっこ
「ほら、こうして側にいてやるから、寝ても良いぞ。」 なんて優しい、愛しい船長の声が、照らすその太陽のように、俺の中へとしみ込んでいったのだ。
title by プラチナ / ひなたぼっこ(5つの春のおはなし)
03. 指先に心音 / マルコ
「(・・・マルコさんが寝てる、)」
「ちょっとマルコ呼んできてくれるか?」 食堂で食器洗いのお手伝いをしていれば、コックさんにそう言われて、甲板に出ているらしいマルコさんを探していると、船縁を背もたれにして、じっと座っているマルコさんの姿が視界に入ってきて。何か考え込んでいるのかと思いながら、近くへと歩を進めてその名前を呼ぼうとしたのだけれど、
「(・・・もったいないなあ、)」
コックさんに言われているから早く起こさないといけないのは分かっているのだけれど、寝ている彼を起こすのも何だか忍びなくて。・・・それに、マルコさんが寝ている姿なんて滅多に見ることができないし、ほんの少し、少しだけ、マルコさんを眺めていたくて、
「 (そっと、そっと、)」
目の前にしゃがみこんで、そんなマルコさんを眺めていれば、何故だか分からないけれど、思わずゆるゆると彼の方へと指を伸ばしてしまって。起こしたくないなんて思いながらも、そっと指を伸ばしている俺って何なんだろう、なんて心のどこかで思いながらも、手を伸ばすことは止められなくて、そうこうしているうちに、指から自分とは違う体温が伝わってきて、
「 ふふ、(なんか、)」
マルコさんに触れる事なんてよくある事なのに、でも今は何だかとても特別な事に思えて、自然と頬の筋肉が緩んでいくのが、鼓動が高まるのが、感じられた。ドクン、と自分の耳にすら聞こえてきた心音が、指先からマルコさんにも伝わっているのだろうか、なんて考えたら、少し・・・とても、恥ずかしい気がするけれど、でも、それでも愛しいその人に、触れていたいと、思ってしまうのは、(ふふ、 大好きだなあ、もう、)
「っ!? わっ、 」
指先に心音
急に俺の手へと腕が伸びてきて、身体が彼の方へと傾いていったのは、また別のお話であって、
title by capriccio / 指先に口付け(恋する五題)
04. 指先に口付け / ビスタ
「っ、」
「? どうした?」
「あ、いえ、 壁にあったささくれに指が当たってしまって、」
ふと壁に触れたと思ったら、どうやらそこにはささくれがあったらしい。結構な勢いでそこへと指を当ててしまった俺は、情けない事に声を上げてしまい、進めていた足を止めてしまった。そうすれば、隣を歩いていたビスタさんの足も、自然と止まってしまう訳で、
「どこだ?見せてみろ。」
「そんなに血も出ていないし、大丈夫ですよ?」
「血の量云々の話じゃないだろう。ほら、見せてみろ。」
ごまかすように紡いだ俺の言葉を流して、滑るように動いたビスタさんの手は俺の手首を軽やかに掴んだ。それから、傷ができた指へと視線が持っていかれる。しっかりと皮膚が剥がれ、赤くなってしまっていた俺の指を見ると、ビスタさんは苦笑をその顔へと浮かべた。
「そんなに血は出ていない、か?」
「 う、」
「こういう怪我でも、放っておいたら万が一の事になりかねないからな。」
「 消毒をしてもらうか。」 そう言って俺の手を取ったまま、ドクターの元へと連れて行こうとしてくれるビスタさん。けれどこれ以上ビスタさんの手を煩わせる訳にもいかないと思ったから、1人で行こうと申しでようとビスタさんへと口を開いたのだけれど、俺のそんな言葉に、ビスタさんの口が俺の指の方へと動いて・・・え、俺の、指へ??
「っ!!」
「フフ、 お前を1人にすると、本当に行くかどうか、分からないからな。」
「俺もついていくさ。」 どこか楽しそうに笑ったビスタさんは、固まっている俺を余所に、俺の手を掴んだまま、ゆるりと再び歩を進めだしたのでした。(・・・え、俺、今っ!?)
指先に口付け
ドクターの元へ着いた時、「何だ、風邪か?」 なんて言われたのは、致し方ない事だと俺は思う。
title by capriccio / 指先に口付け(恋する五題)