01. おはようのキス / マルコ
太陽の光が、閉じていた瞼を通して瞳へと入ってきた気がして、ゆるりとそれを開けた。そうすれば、視界に入ってきたのは太陽の光が入ってくるその窓ではなくて、俺の愛しい人の顔であって。
「起きたかい?」
掌で自分の頭を支えて、笑みを浮かべながら俺にそう声をかけてくるマルコさん。その声から、その笑みから、何となく俺の寝顔を結構な時間眺めていたのではないだろうかという、当たって欲しくない考えが俺の中に浮かんできて。けれど、聞くまでもなく、たぶん、
「・・・起こしてくれても、良かったでしょう?」
「あまりにも、気持ちよさそうな顔をしてたんでな。」
「起こさない方が良いかと思ったんだよい。」 寝惚けた顔をこれ以上晒さないようにと、瞼が完全に開け切れていないその顔を枕へと押しつけて、くぐもった声でそう言葉をマルコさんへと投げかければ、彼はいけしゃあしゃあとそんな言葉を俺に投げ返してくる訳で。
「起こす気も無かった癖に・・・」
「 ひどい言われようだよい。」
小さな声で、それでも聞こえるように彼にそう呟けば、そんな言葉と共に笑い声が返ってきた。どうやら、否定する気もないらしい。ゆるゆると俺の髪の毛に触れてくるマルコさんのその手に、心地よさを感じてしまった俺は、まあ良いか、なんて思い始めてしまう。それからだんだんと閉じてきたその瞼を無理矢理開けようともせずに身を委ねていれば、隣から俺を呼ぶ声が聞こえて、
「もう、何ですか、マルコさっ!!」
彼の方へとゆるりと顔を上げて、言葉を返しているその隙に、彼の口を塞がれてしまって。
「 おはよう、」
「お、はよう、ございます。」
「さ、そろそろ起きる時間だよい。」 俺の反応を見て、満足げに挨拶をした彼は、ひどく楽しそうな笑みを浮かべたまま、そんな言葉を放ってきて。何とかその挨拶を返した俺は、その後で、ようやく彼にされた事を理解し始めて。
「・・・マルコさん、」
「ん?何だよい?」
「何だじゃありませんよ。 また、貴方って人は、もう、」
「 あァ、」
「っ、こ、今度は何ですか?」
「なかなか有意義だったよい、さっきの時間は、」 警戒する俺に何を気にするでもなく近づいてきたマルコさんは、その愛しい声で、そんな言葉を耳元で囁いてきた。・・・ある意味で、先程とは違った不意打ちをくらってしまった俺は、赤くなってしまったその顔を、再度枕へと押しつけることしかできなくて(もう、朝から、なんて・・・この人は、)
おはようのキス
それでも愛しいなんて思ってしまう事を、きっと彼は、承知済みなのだろう
title by WILD ROAD / おはようのキス(朝の風景で5題)
02. 朝寝坊 / ゾロ
「おい、起きろって。ったく、いつまで寝てんだお前は。」
「 ん、 ぞろ?」
夢の中のはずなのに、妙にはっきりとした声が耳の中に響いてきて。小さかったそれが次第に大きくなって、思わず目を開けたのだけれど、そこにはゾロの姿があって。盛大なため息と共に吐かれたその言葉を聞きながら、ゆるゆると感覚が戻るのを確認する。・・・どうやら俺は、目を覚ましたらしかった。
「飯が出来たぞ。さすがに昼飯は食えよ。」
「・・・ああ、そうするよ。 おはよう、ゾロ。」
「ああ。 ほら、さっさとしろ。」
ゾロの言葉から、どうやら自分が朝を寝過ごして昼まで寝ていたらしいことに気付いた。普段なら、こんな事なんてめったにやらないのに、気付かないうちに身体が少々疲れていたのだろうか。そんな事を思いながらも、ゆっくりと立ち上がって、まだ眠いと閉じそうになる瞼を何とか開いて、彼の後を付いていこうとするのだけれど、
「わ、 っと、」
「 ・・・お前、ちゃんと起きて歩け。」
「あ、ああ、すまない。それは、分かってるんだが・・・」
最初に襲ってきた立ちくらみの所為だと思って、慣れるのを待って再度足を進めようとするのだけれど、どうにもふらふらと覚束ない足取りになってしまう。寝過ぎてしまったからだろうか、普段は感じる事のないその感覚に、俺はひどく動揺してしまった。それでも、何とか壁伝いに一歩を確実に踏みしめて、転けないように進んでいく。けれど、それはあまりにスローペースで、ゾロに待ってもらうのも申し訳ないと思い、先に行っておいてもらおうと、声を掛けようとしたそんな時、床に下ろしていた視界に、影が現れて。
「おい、大丈夫か?」
「ああ、心配ない。でも、少し遅くなるから、先に食堂へ行ってくれて構わないよ。ちゃんとダイニングへ向かうから。 って、う、わっ、」
何とか顔に笑みを浮かべて彼を先に送り出そうとしたのに、言い終わると同時に覚えるはずのない浮遊感が俺を襲ってきた。その浮遊感に驚きながらも、何とか今、自分がゾロに抱えられているのだと気が付いた時には、既に彼は俺の意見を聞くことなく歩き出してしまっていて。
「ぞ、ゾロ?」
「何だよ、歩けねェんだろ。」
「い、いや、歩けるのは歩けるんだが、・・・というか、もっと別の方法で手助けをしてくれると、」
「グダグダ言うな。それに、それのどこが歩けてるっつうんだ。」
俺の言葉にピシャリと言葉を返してきたゾロは、背負ってくれれば良いのに、面倒くさかったのか何なのか、壁に手をついて立っていた俺の膝の裏へ、俺の脇の下へと腕を伸ばして、上へと持ち上げるという、何とも恥ずかしい抱え方をしてのけてくれた。助けてくれた事は非常に有り難い、現に本当に歩くのが辛かったから。・・・けれど、さすがにこれは・・・。これならまだ樽のように肩に担がれた方が良かった、なんて思いながらも、そんな事を聞き入れてくれるはずもないと理解してしまっている俺は、彼に身体を委ねる事しか取る術が残っていなくて、
「・・・ありがとう、ゾロ。」
「あァ、最初から素直にそうしてりゃ良いんだよ。」
「あんま無理すんな。」 抱え直しながら紡がれたその言葉が、すとん、と俺の中に落ちてきて。そして俺も現金な事に、先程感じていた恥ずかしさはどこへやら、響いてきた彼の声に俺は顔の緩みを抑える事ができなくて。結局俺は、彼に抱えられるままに、ダイニングへと運ばれる事を受け入れてしまうのだった。
朝寝坊
たまには、こんな日があっても良いのかも知れない、なんて思ってしまう自分がいて
title by WILD ROAD / 朝寝坊(朝の風景で5題)
03. ミルクプディングから飛び出した / ルフィ
「んー!美味ですなあ!」
いつものようにダイニングへと呼ばれて、サンジの作ってくれたデザートを食すそんなおやつの時間。隣で美味しそうに食べては、嬉しそうに笑みを零してそんな言葉を紡ぐルフィを見ながら自分のデザートを口へと入れる。そんな今日のデザートはプディングで、通常のものと、ミルクをいれたそれと2種類が作られていた。散々悩んだルフィは、俺の提案に喜んでくれて、通常のプディングの方を取ったのだけれど、
「なァ、もう一口!」
「ふふ、ああ、構わないよ。」
自分の分を早々に食べ終えてしまったルフィは、先程からその言葉を繰り返しては俺の方へとその大きな口を開けてきて。まあ、提案したのは俺だし、彼の嬉しそうな顔を見る事ができるから別に構わないのだけれど。そんなルフィの口へとまたスプーンで掬ったそれを差し出せば、勢いよく口を閉じた。
「・・・まったく、人前で。」
「ふふ、すまないナミ。」
「悪いと思ってないでしょ。」
「顔が緩んでるわよ。」 ため息混じりにナミからそんな言葉が返ってきて、けれどやっぱりそんな事を言われながらも、頬の緩みは抑えきれないのだから俺もどうしようもない人間で。隣にいるロビンにも笑われてしまいながら、そんな会話をしていれば、俺の名前を呼ぶ声がして、またそのプディングへとスプーンを差し込んだ。
「ほら、どうぞ?」
「おお、いただきます!」
「 っ、い、」
「??どうしたんだ?」
ぱくっと、先程までと同じように口を閉じたのだけれど、どうやら深く入り込みすぎていたらしい。チリッと走った痛みで、ルフィの歯が俺の指に当たった事に気付いて。思わずその痛みに身体をピクリと反応させてしまいながら、そんな俺の行動に不思議そうにしているルフィへと「 俺の指まで噛んでいるぞ?」 そう言葉を紡いで口の中から指を抜こうとした、その刹那、
「っ、 ルフィ、?」
べろり、と、俺の指へと歯のそれではない刺激が俺の中を駆け巡った。そんな不意の彼の行動に、先程よりも大きく身体を反応させてしまいながら、ルフィへと視線をやれば、当の本人は、えらく嬉しそうに笑みを浮かべているものだから、(ああもう、)(そんな顔をされてしまえば、全部許してしまうじゃないか、)
「にしし!甘くて美味いぞ!」
ミルクプディングから飛び出した
それはどちらの意味で言ったんだい?なんて言えば、「どっちも!」なんて言葉が返されて。
title by 回遊魚 / ミルクプディングから飛び出した(お茶の時間に五題)
04. ハチミツトーストを分け合いながら / エース
「朝からそんなの食べてよく胃がもたれないよな。」なんて仲間に言われながら、朝食にハチミツがたっぷりとかかった甘くてたまらないそのトーストを頬張っていれば、後ろから俺の名前を呼ぶ声が響いてきた。
「 おはようございます、エース隊長」
眠そうな顔のまま、俺の隣へとゆるゆると腰を下ろしてきた隊長に朝の挨拶を紡げば、これまた眠そうな声で挨拶が返ってくる。そんな言葉と一緒に、目を細めて笑みを浮かべてくれながら俺の頭をゆるりと撫でてくれる隊長に、俺もまたゆるりと緩んでくる頬を抑えないままに笑みを返すと、嗅覚からか視覚からか、隊長の視線が俺からトーストへと移って、
「隊長? あの、いるなら頼んできましょうか?」
「まだハチミツたっぷりあるって言ってましたし、」 俺の食べかけであるそのトーストからじっと目を離さず見ている隊長に、食べたいのだろうかと判断してそう言葉を紡ぎながら調理場へと立ち上がろうとしたそんな時、けれどその場を離れようとすれば、突然に自分の腕を隊長に掴まれてしまって。
そんな隊長の行動に驚きながら、いらなかったのだろうかと思いそう声をかけるのだけれど、「いや、いる。 でも、そんなにいらねェ。」 なんて少しおかしな言葉が返ってきた。彼のそんな言葉の意図を理解しかねていると、隊長がトーストへと指を指して、それからその指を口の方向へと移動させるのが、俺の視界へと入ってきて。
「 あー、」
「・・・エース隊長、( 何をするかと思えば、)」
口を開いてその中を指差してくる隊長に、まさか俺もその意図を理解できないわけでもなくて。食べても良いか、ならまだしも、明らかに食べさせてくれと言わんばかりの状態に、思わず呆れるように隊長の名前を呼んでしまう。何とも言い難いそんな格好を身ながらも、何とかお皿ごと隊長の方へと差し出してみる。けれど隊長はというと、まだ眠そうな笑みを浮かべたまま、相変わらず自分の口を開けて待っているだけで、
「(・・・ああもう、)」
もう少しそのままでいれば、隊長の方が諦めてくれて自分でそのトーストへと手を伸ばしてくれたかも知れない。・・・けれど、まだ朝できっと俺も脳内がまだ正常に働いてなかったんだろう、俺がパンを自分の口へと運んでくるのを待っている隊長のそんな姿を、「 なァ、」 なんて言って俺の名前をその唇で紡ぐのを見ていると、身体の中から溢れ出てくるものを抑えきれなくなってしまって、 気が付けば、自分の手がトーストへと触れていて、(・・・弱いなあ、俺も、)
「 少しだけですよ?」
「あァ、 分かってるさ。」
そう言ってトーストへとかじり付く隊長に、俺はずいぶんと (きっと、そのかかっているハチミツと同じように、 )
ハチミツトーストを分け合いながら
「甘ェな、 」なんて言ってくる隊長に、俺はゆるりと頬を緩めてしまって。
title by 回遊魚 / ハチミツトーストを分け合いながら(お茶の時間に五題)