01. 噛み付くように / 白ひげ
風に当たりたいような気候も相俟って、広い甲板で宴を開くことになったのだけれど、何とも嬉しい事に親父さんが俺に酒のお酌を頼んできてくれて。もちろん断る理由なんてある訳もなく、2つ返事でそれを了解した俺は宴が開かれている今、親父さんの隣という顔が緩んで仕方ない位置に座って親父さんのその愛しい笑みを一番近くで見上げている訳なのだけれど、
「ふふ、みんな楽しそうですね。」
「グラララ!既に酔いつぶれちまってる奴もいるがなァ。」
「それくらい楽しいんですよ、甲板で開く宴なんて久しぶりですから。」
親父さんとそんな会話をしながら、周りで楽しそうに酒を酌み交わしている仲間へと視線を移す。食堂での宴も良いけれど、やはりこうして海が一望できる甲板で宴を開く事は食堂のそれよりも何だか雰囲気から何から、同じ酒ですら違ってそれに感じる程で。どうやらそれを思っているのは俺だけではないようで。ほろ酔い気分で笑い声をあげている仲間達を見ながら頬を緩ませていれば、隣にいた親父さんが俺の名を呼んできて。何だろうと思いながら見上げれば、酒の入ったままのその大きな盃を俺の方へと差し出していて。
「 親父さん?」
「お前ェも飲んでみろ。これァ上等な酒だ。」
そう言いながら自分の飲んでいた盃を俺へと何を躊躇うでもなく渡してくれるから、そんな親父さんの言葉に甘えて俺には少しばかり大きすぎるその盃を両手で持って一口そのお酒を喉へと通す。そうすれば、親父さんの勧めてくれた酒はやはりそんじょそこらの酒とは違って喉に引っ掛かることなくするりと喉を潤わせていった。
「わ、本当だ 美味しい、(喉通りがまったく違う、)」
「 あァ、少しばかり飲むのには大き過ぎたか、」
驚くくらい喉通りの良かったそれに思わず笑みを浮かべて感嘆の声と共にその言葉を出せば、隣から聞こえてきたのは俺の言葉とは噛み合わないそれであって。何の事だろうと思いながら手にした盃をそのままに親父さんの方を見上げれば、親父さんの両手は俺の方へ、だけれど別々の方向へと伸びて一方は自分の盃へ、それからもう一方は、 俺の頬へと伸びていて。
「 あの、 親父、さん?」
「口の端に酒の雫が付いてるぞ、」
「え、 う、んっ、」
そんな親父さんの行動に訳が分からず為すがままの俺は、思いきり疑問符を浮かべながら名前を呼ぶ事しかできなくて。そうすれば親父さんは頬に当てた大きな手をそのままにそう言葉を俺へと放ってきたから、それを拭おうと自分の口へと手を伸ばそうとしたのだけれど、それは親父さんの唇が俺のそれへと噛み付かんばかりの勢いで重なってきた事で、失敗に終わってしまった。
「お、親父さんっ!!」
「グララララ!酔っぱらうにはまだ量が足りねェ気がするんだが?」
「酔ったわけじゃ、ねェだろう?」 俺の頬に赤みが差している原因なんて分かり切っているはずなのに、親父さんはそうやってずるい訊き方をしてきて。けれどその愛しい声で、愛しい笑みを浮かべながら俺の名を愛おしそうに紡ぎ出されてしまえば、俺は熱を上昇させながら親父さんから再度降ってくるそれを受け入れる事しかできなくなる訳で。(ああもう、これに弱いって知っているでしょうに、貴方は、)
噛み付くように
それでも結局、笑みを浮かべながら貴方のそれを受け入れてしまうのだ
title by WILD ROAD / 噛み付くように(唇で5題 )
02. 不機嫌のサイン / ルフィ
部屋でいつものように読書をしていたら、思いの外読みふけってしまい周りの声が聞こえなくなってしまう悪い癖が出てしまっていたようで。ナミに大きな声でどやされるまで、悪い意味でも良い意味でも集中してしまっていたらしく、「あんたの所為なんだからあんたが何とかしなさい!」 なんてナミに言われて甲板へと出て行くとそこには唇を突き出して分かり易いくらいに拗ねてしまっている船長の姿を発見して、そこで俺は漸く先程のナミの言葉を理解した。(どうやら俺はまたやってしまったらしい。)
「 ルフィ、」
「・・・」
そっと、それでも気配で気付かれるように彼へと近づいて彼の名前をそっと呼んでみるけれどルフィから返ってくるのはやはり沈黙だけで。それでも引き離そうとはしないでくれる彼の様子を見て俺は、後ろから胡座の体勢で芝生に手を伸ばしていた彼をそのまま抱き込んだ。
「 すまない、声をかけてくれたのに返事が曖昧になってしまって、」
「・・・何度も声かけたのに、テキトーに返事するだけでよォ、」
「う、 悪かった。」
腹部へと回した俺の手に自分の手を重ねてくれながら、不満そうに先程の俺の行動を伝えてくるルフィ。うっすらと残っている俺を呼ぶ声はどれも彼のものだったらしく、今更ながらに再度申し訳なく感じて一言そう言葉にして紡ぎ出せば、尖っていた彼の唇は先程よりも丸みを帯びた形へと変化してくれていて。
「 もう、本は読まねェのか?」
「ああ、読み終えたからね。もう、君の声を聞き逃したりしないよ。」
「 一緒にいてくれるのか?」
「ああ、君がそれを望んでくれるなら。」
「にししっ!」
「じゃあ、許すっ!!!」 元々の性格上、湿っぽい雰囲気が合わないのだろう、尖っていた唇はすでに笑みを浮かべるそれへと変化していて。俺に許しを出してくれた船長はというと、俺の名前を呼んだと思えば、後ろを振り返って正面から思いっきり俺の身体へと抱きついてきて。
「わ、 まったく、君は。」
「にししっ、やっぱこうしてる方が良いな!」
「トーブン、本読むのはダメだからなっ!!」 なんて無茶を言って俺の首元に擦り寄ってくる彼のその言葉に、それでも首を縦に振ってしまうのは彼が船長だからか、それとも惚れた弱みだなんて世間一般で言われているやつだからなのか、ふふ、どっちだろうね、ルフィ船長?
不機嫌のサイン
表情豊かな君の表情が愛おしくて仕方がないんだ
title by WILD ROAD / 不機嫌のサイン(唇で5題 )
03. 君の隣の、その位置を / エース / 学パロ
「続くようで続きを書く気がない連載風味」をテーマにつらつらと。
「 やっと、あいつと同じ、」
たかが1年、生まれた年が違うだけ。いつもならそう思う事が出来たんだが、学校で隔てられるその1年はかなり辛いもんがあった。そりゃあ、平日あいつの家に押しかけたり、休日に一緒に遊ぶと約束を取り付けたりして、なるべく時間を取るようにはした、じゃねェと俺が耐えられなかった。けどやっぱり、平日、学校にいる時間は、あいつが同じ場所にいねェと思うだけで、窓からたまに見えていたあいつの姿が見えねェだけで、ひどく退屈な時間へと変わってしまって。
「( けど、その退屈な時間も、)」
去年と違う首元からぶら下がるまだ結び目のないネクタイを見て、自然と顔が緩んじまう。あいつも付けてるそのネクタイ。あいつの幼馴染みでもある、マルコも同じのをつけてると思うと、何だか癪だが、それでも俺もやっとあいつと同じネクタイを付ける事が出来る。
「 エース、そろそろ行くよ?」
ネクタイへと手を伸ばしていれば、ノックと一緒に聞こえてきた俺の名前を呼ぶその声。思わずネクタイを結ぶ手を止めて、そちらへと目を向ければ、「ふふ、まだ結んでいなかったのか?」 そんな事を言いながら俺の方へと歩を進めたかと思ったら、そのまま俺のネクタイと、俺の手を一緒に、
「 これで、良いか。 ほら、もう行かないと、っ!!」
俺の真ん前で、俺の口がこいつの額に触れてしまいそうなそんな距離で、俺のネクタイを満足げに結び終えたこいつの顔を見たら、何かもう色々と、溢れ出てくるもんがあって、つい背中へと腕を伸ばしちまった。最初こそ、俺のそんな突然の行動に驚いていたが、俺に抱きしめられた事を理解したのか、「ふふ、全く君は。」なんて俺の大好きな笑みを浮かべながら頭を撫でてきた。子ども扱いされるようで、一時期は嫌がっていたはずのそれも、今では心地の良いものでしかねェ、 だがやっぱり、そんな弟のように思わされるよりも、俺はお前の、
「 待ってろ、必ず、(必ず、俺のもんに、)」
自分の中で誓ったその決心を強くするかのように、俺は背中に回した腕にさらに力を入れたんだ。
君の隣の、その位置を
今に見てろ、絶対その場所には俺がっ!
04. First day / シャンクス
「続くようで続きを書く気がない連載風味」をテーマにつらつらと。
今日も海の上でのんびりと過ごしていました。天候も安定してきたので、次の島も近くなってきたんだと思います。天気も良い事なので、潮風が心地よく吹くのを肌に感じながら読書をしようと甲板に出ました。最初は静かに読めていたのですが、後ろから俺の名前を少し、遠慮がちそうに呼ぶ声が、
「ふふ、何ですか、シャンクス船長?」
思わず出てしまった笑い声をそのままに声をかけた俺に「・・・邪魔、じゃないか?」 なんて船長はその、失礼かもしれないですが、船長の威厳というか、そんな感じが見られないような、そんな物腰で、いつも聞いてくるのです。・・・まあ、そこ、船長の良いところだとも俺は思うのですけれど。
「邪魔なんて、そんな事ないですよ。どうしたんですか、船長?」
「いや、あの、だな。その、次の島にそろそろ着くだろう?」
「?はい、そうですね。そういえば、次は街があるって、」
「あ、ああ!そうなんだ!それで、だな、 」
「・・・船長??」
何だか言いづらそうに、自分の手元を、俺の瞳を交互にちらちらと見やりながら言葉を紡ぎ出す船長に、俺は疑問符を頭に浮かべながら船長の言葉をゆっくりと待ちました。船長がこういう時は、焦らずに待ってやってくれと副船長に言われた事があったので、それ以来俺は船長がこうして言いづらそうにする時は、ゆっくりとなるべく笑みを浮かべたままで、船長の言葉を待つようにしています。
そうすれば、しばらくして、船長は「 よし、」と小さな声で呟いて、何かを決心したようなその瞳を俺に向けて、突然ガシッと俺の両肩を掴んできたと思ったら、
「お、俺と、その街で、 で、デートしないか!!」
そんな一生懸命に喉を震わせて船長が紡ぎ出した言葉は俺への、・・・そのデートのお誘い、だったようでして。その言葉に驚きはしましたが、もちろん、俺が断る理由なんて、ありはしないので、俺は緩んでしまう顔を、顔に熱が集中していたのをそのままに、首を縦に振りました。船長は、とても嬉しそうな、俺の大好きなその笑顔で、俺の事をそのまま抱きしめてくれました。明日、その島に着く予定なので、島への到着もそうですが、明日がもっと楽しみになりました。
・・・あの、ニュース・クーから受け取ったのですけれど、ミホークさん?あの、一週間を日記に書けって、今書いているこの、日記帳のようなものに書いたら良かったんです、よね?
First day
親愛なる、ミホークさんへ。
うん、こんなもんで、良いのか、・・・良いのか?