「・・・!!」
「 どうしたの、天?」


今年も残りわずかになった、そんな12月の中頃。授業も終わって、アホサイユで温まってから帰ろうといつものように読書をしていると、隣に座っていた彼が急に私の名前を呼んできた。


「  その、だなっ・・・」
「??」


何かあったのだろうかと、本から視線を彼の方へと移して続くであろう声を聞いているのだけれど、何故だか天十郎は言いかけては止めて、さらに言いかけてはやめて、と私の目の前で何度もそれを繰り返していた。どうにか意味を解釈しようと試みるのだけれど、まだ天十郎からは一言もその断片であろう言葉を受け取れていなくて。


「 天、ほら落ち着いて?はい、紅茶でも飲んだら?」
「お、おうっ!!」


天十郎を何とか落ち着かせようと紅茶を渡しながら、急がせることもなく、ゆるゆると天十郎が言葉を紡ぎ出してくれるのを待つ。その時、紅茶の隣に置いてあったケーキが視界に入って来て、そう言えばクリスマスも近くなっている事を思い出す。今年はどんなケーキを作ろうかしら、なんて彼からの言葉を待ちながら考えていると、ふと、何かが脳内を駆け巡った気がして、


「(  もしかして、)」


天十郎が言い出そうとしているのはクリスマスの事じゃないだろうか、なんて思いつく。そういえば、去年の今頃も場所は違ったけれど、こうやって顔を少し赤らめて、言いにくそうにして、言われた覚えがある。もちろん、断る理由なんてあるはずもないから、2つ返事で了承したのだけれど。今の光景と去年のそれと、一致する所が多くて、一生懸命伝えようとしてくれている天十郎には悪いと思いながらも、緩んでくるその頬を止められなかった。


「(もう、 断るはずなんて、あるわけないのに。)」


多分、恥ずかしいのもあるのかもしれない、去年と同じように顔をほんのり赤らめて、私の目を捉えては、また床へと視線を落として。何度もそれを繰り返している天十郎に不謹慎ながらも愛おしさがこみ上げてくるものだから、つい、言い出すのを助けてしまいたくなってしまう。


「 ふふ、天?」
「な、何でぇ?」
「きっと断らないから、言ってみてくれないかしら?」


足の上で握りしめられていたその手へとゆるりと自分の手を伸ばして、解すように彼の手へと滑らせる。もちろん、笑みを浮かべる事も忘れずに、なるべく天十郎が安心できるように、彼がその言葉を言ってくれるように、促して、


「・・・断らねぇのか?」
「ええ。だから、ね?」


不安そうに見つめてくる天十郎をどうにも抱きしめてしまいたい衝動に駆られつつも、何とかそれを抑えて笑顔のままで彼へと言葉を返す。そうすれば、決心ができたのか、天十郎の瞳の色が先程よりも少しだけ違ったように見えて、彼の手の上に置いていた私の手を、しっかりと握りしめてくれて、


「く、クリスマスに、 お、俺様と、一緒にいてくれるかっ?」


いつもなら「一緒にいるんだぞ!」 なんて断定的なその言葉で紡ぐのに、こういう時だけは何故かちゃんと私に訊ねるような語尾にして。それからも不安である事が感じ取れるのだけれど、彼の瞳からも、また色の違ったそれが私の目に映し出されて、早くその色を変えたいなんて思ってしまうのだから、(ああもう、愛しいなあ。)


「ふふ、天十郎?」
「  ?」
「クリスマスケーキは、何を作って欲しいかしら?」
「っ、  っ!!」
「わっ、 」


その言葉を発した途端、彼の瞳はキラキラと輝き始めて。けれどそれを見られたのも束の間、数瞬のうちにして、天十郎に思いきり抱きしめられてしまった。「の作るケーキなら、俺様何でも良い。」 なんて嬉しそうに耳元で響かせてくれるその声に、私は緩みきっていたはずの頬に、さらに笑みを浮かべてしまって、


「ふふ、じゃあ、愛しい天のために、頑張って作るわね?」


「おうっ!俺様が全部食べてやるからな!!」 なんて言ってくれる彼の、目の前にあったその頬へと、つい、リップノイズを立てながら唇を落としてしまうのは、(仕方のない事だと思わない?ね、私の愛しい、)

クリスマスのお誘い

そんな私の急な口付けに、けれど彼は嬉しそうに、はにかんでくれるものだから(ああ、もう、)