「あらあら、相変わらず凄い量ね。貴方への誕生日プレゼントは。」
宅配の人が来たとの知らせのインターフォンで目を覚ました私達は、朝から彼を祝う盛大なプレゼントと共に朝を迎えるというのが、最近の彼の誕生日での日課となっていた。花束やら高級な贈り物やら、事務所にはこれ以上の量が届いているのか、なんて考えると思わず笑みがこぼれる。
「ふふ、ファンに愛されているわね。」
聖帝に生徒として居た時もそうだったけれど、今では世界に名を馳せるバンドとなった彼のグループ。ライブのチケットの完売する速さでも、ライブ中にもその人気の高さは窺う事ができるけれど、やはり彼がそうして愛されているのを知るのは、私にとっても、ひどく嬉しいもので。
「 あら?ふふ、これ、九影先生からじゃない?」
「・・・、」
「うん?どうしたの、しゅ、 わっ、」
綺麗な花束に、九影先生のメッセージカードと節約云々と書かれた本が入っているのを見て思わず笑い声を上げてしまった。先生らしいというか、何というか、元気に過ごしているのだろうかとそんな事を考えていれば、瞬が私の名前を呼んだのが耳に入ってきて。何を考えるわけでもなく彼に呼ばれたという反射で後ろへと振り返ると、視界へと入ってきたのは彼の顔ではなくて、彼の着ていたその服であって。
「 ほら、瞬。折角もらったんだから、花瓶に生けてしまわないと、もったいないわよ?」
「っ、」
私の言葉(特に最後の方だけれど)にピクッと体を反応させながらも、それでも背中に回した腕を離してくれなくて。何か言いたそうにしていたのは分かっていたから、「どうしたの、瞬?」 なんて言ってゆるゆると彼の背中を撫でて、言葉を紡ぐように促せば、
「 お前、からの、 プレゼントは、 ないの、か?」
「俺は、からのプレゼントを、一番・・・」 小さいながらもはっきりと聞こえてきた彼のそんな言葉。に、思わず顔を上げれば、そこには頬を少し赤らめている彼の姿が視界へと入ってきて。もちろん、そんな顔で、そんな事を言われてしまった私はと言えば、
「ああもう、瞬ったら。」
「・・・? おわっ!」
愛しいなんて感情が抑えきれなくなってしまった私は、自分の足をかけて瞬の足元をふらつかせると同時に、ちょうど後ろにあったソファへと瞬を押し倒してしまって。何が起こったのか分からなくて未だに動揺して「なっ、 え?」なんて言葉になっていない声を出している瞬を、不謹慎ながらも可愛いなんて思いつつ、そんな声を震わせて出しているその唇へと、そっと自分のそれを重ねて。
「プレゼントは、貴方が今欲しい物をと思って買ってないの。」
「そ、そうなの、か?」
「ええ。だから、今日一緒に買い物に行こうと思って。ほら、今日は貴方も私も休みでしょう?」
「久しぶりのデートも兼ねて、ね?」 彼の唇にまたキスを1つ落としながら、そう言葉を紡いで。いつもとは違う新鮮な視線に可笑しさを感じつつ、彼の返事を待っていると、急に瞬の方が体を起こしてきたものだから、その行動について行けず、何時の間にやら、いつもの見るその天井と彼の風景へと視界が変わってしまっていて。
「 瞬?」
「 外でデートするのも、良いが、」
「・・・今日は、お前と2人で、この部屋でゆっくり過ごしたい。」 彼の口からそんな言葉が放たれたと同時に、その震えていた唇が今度は私のそれへと落とされて。
「 ・・・駄目、か?」
私からの返事がなかったからか、ひどく不安そうに私の目をのぞき込みながら訊いてくる瞬、に、今までも溢れ出てきて仕方がなかったそれが、さらに勢いを増して溢れ出て来るのが意識しないでも感じられた。(ああもう、)
「ふふ、駄目なわけがないでしょう?貴方がそれを望むなら、私は喜んでそっちを選ぶわ。」
「っ、本当か!?」
「ええ、もちろん。今日は、瞬と2人でゆっくり過ごす事にしましょう、ね?」
彼の柔らかいその髪へと手を伸ばしてゆるりと指を絡ませながら、浮かんできてしまう笑みを抑えられないままに彼に返事をすれば、彼もその顔に、愛おしくて仕方がないその笑みを浮かべてくれて、
「 誕生日おめでとう、瞬。」
「っ、ああ!ありがとう、。」
「愛してる、」 ひどく嬉しそうに紡がれたその言葉を合図に、私はまた彼のその唇を受け入れる為に、そっと目を閉じるのだった。