「ウンウン、ホント、嫌になっちゃうよね。オレも毎日髪のセットが・・・」
「・・・毎日雨で、サーフィンできねえし、」
外からは雨音が響く中、アホサイユではそんな3人の言葉が憂鬱そうに響いていた。そして、千聖はと言うと、「・・・こういう何もできない日は寝るに限る。」なんて言って、先程から、私の足を枕に睡眠中である。寝る前にお菓子をいつもよりもたくさん彼らに出していたからか、目の前にいる3人は眠る千聖を起こすことなくお菓子を頬張っていた。
「そう?私は好きよ、雨の日も。」
「ええー!ってば物好きナリよー。」
「も大変じゃないの?髪の毛のセット。」
いつものように私の足の上にある千聖の頭に手をやりつつ、彼らへとそんな言葉を漏らせば返ってきたのは同意を得ないそれらであった。どうも、この雨によほど参っているようで、そう言ってくる声にも、何となくいつもよりも覇気がないように聞こえた。
「まあ、いつもよりも時間はかかるけど・・・あ、千聖?起こしちゃった?」
「・・・そんなに触られると、寝ようにも寝られん。」
彼らにそう返事をしていれば、ふわりと、私の手に千聖の手が触れてきて。もうとっくに眠ったのだと思っていたのだけれど、その話ぶりからすると、私の足に頭を置いてからずっと起きていたようで。あまり意識せずに千聖の髪へと指を絡めていたのだけれど、眠れなくなってしまう程触ってしまっていたのかしら?
「ふふ、 ごめんなさい。いつもと触り心地が少しだけ違ったから、つい。」
「あー、そういえば、最近いっつもチィちゃんの髪の毛触っちゃってるよね。」
「ふーみんの髪も梅雨になると、いつもよりもくるくるってなるもんねー。」
端から見てもどうやら千聖の頭へと手を伸ばす回数が増えたと分かるくらいに、どうやら私は彼の髪へと結構な頻度で指を絡めてしまっていたらしい。そういえば、授業中も触っていたかも知れない、なんて思い当たる節が次から次へと頭に浮かんできた。(・・・確かに、触り過ぎだったかも知れない。)
「ごめんね、千聖。無意識につい触れてしまってたみたい。これからは気をつけるから、ね?」
私の手の上へと置いてあるその手を包み込むようにして、もう片方の手を千聖のそれへと重ねながら、そんな言葉を紡ぎ出す。その心地よい触り心地に、ついいつまでも触れていたくなってしまうから、意識して抑えるようにしないと。せめて、彼の睡眠の妨げにならない程度には、うん。
・・・なんて、私はそう心に決めたそんな矢先に、私の下から聞こえてきた声は、「・・・別に、」
「ん?どうしたの、千聖?」
「・・・別に、お前がそうしたいなら、そうすれば良い。」
「迷惑だとは思っていない。・・・それに、にこうされると、俺も落ち着く。」 なんて私の手に触れていたその手を少しだけ強く握ってくれながら、優しい、心地よい、その声が、1音ずつ、しっかりと私の耳へと響かせてくるものだから、つい、そんな言葉に甘えるようにして、ゆるりと、またその髪へと指を絡めてしまうのだ。