「・・・買えば良いだろう、」
「ふふ、ほら、文句言わないの。みんな千聖の作った料理の方が良いって言ってくれてるんだから、ね?」
「料理はふーみんとが作ったのが食べたいですぞー!!」なんてこれまた八雲の言葉から、パーティーの料理を作る事になった私達。いつもなら千聖もその言葉をすぐに了承して作るはずなのに、今日は何故だか少しだけ拗ねているような、そんな顔を見せながら、まな板の上でそれでも手際よく野菜を切っていた。
「私も千聖の料理は食べたいわよ?」
「・・・お前がそう言うなら、ちゃんと作るが、」
「ふふ、ありがと。」
隣から聞こえてくる小気味よい音を聞きながら、千聖のそんな言葉を聞いて思わず顔を緩めながらそう返事をする。クリスマスで私も浮き足立っているのか、後ろから飾り付けをする楽しそうな声が聞こえてくるのすら、自分も飾り付けをしているように思えて楽しい気持ちになって。浮かんでくる笑みを抑えられないままに、隣でいい音を立てているフライパンの中を見やりながら、ぐるぐると目の前にある鍋の中をかき混ぜる。
「 あ、千聖、そこにある調味料取ってくれる?」
「手が離せないの、お願いできる?」 千聖でも少し動かないと行けないような距離にあるいくつかの調味料を見やりながらそう言葉を出せば、彼もその視線と料理の中身を見て理解してくれたのだろう、すぐさまお目当ての調味料を取ってくれた。千聖がその調味料を取ったのを見た後、再度また視線を鍋へと移して、それを渡して貰おうと手だけを彼の方へと差し出していれば、
「 千聖?」
「何だ、?」
「何で私の手の中に貴方の手があるのかしら?」
「調味料がここにはある予定だったのだけど?」 調味料の入ったケースからは感じ取る事の出来ないその熱が私の手からは伝わってきて、ようやくそのおかしさに気付いた私が差し出していた自分の手の方を見やると、千聖が私の手の中に手を伸ばしているのが視界に入ってきた。
突然の彼の行動に、意図が全く見えてこない中、とりあえず彼にその事を訊いたのだけれど、彼は持っていた調味料をテーブルへと追いやると、私に返事をすることなく、切っていた野菜を放置して握っている手をそのままに私を後ろから抱きしめてきた。何やら甘えるようなそんな素振りで首元に顔を埋めてきたものだから、どうもそれを振り払う事も出来ない訳で、
「どうしたの、千聖?料理の最中よ?」
「・・・クリスマスは、」
「うん?」
「クリスマスは、一番愛しい人と過ごすものだと聞いたんだが、」
「の愛しい人は、俺じゃないのか?」 千聖が追いやってしまった調味料を何とか取って鍋へとそれを入れていると、耳元で紡がれたのはそんな言葉で。それを聞いた瞬間、ようやく先程から千聖が少しだけ拗ねている理由を理解して。それと同時に、不謹慎ながらも理由が理由なだけに、思わず顔を緩めずにはいられなくて、(ああもう、愛しいなあ、)
「 千聖、」
「 何だ、」
「今晩、貴方の家に泊まりに行っても良いかしら?」
「っ! ああ、構わん。」
私の言葉に、分かり易いくらいに身体を反応させた千聖に思わず笑い声を漏らしてしまいながら、握っていた手を絡めるような形に変えて、彼の手に触れる。彼も私のそれに応えるように深く絡めてくれて、嬉しそうに放ってきた了承のその言葉を聞きながら、また彼に返事をする。
「ふふ、良かった。これで、クリスマスの夜は私の愛しい人と過ごせるわね?」
「 、」
「うん?どうしたの、ちさっ、 」
彼に呼ばれて、それに返すように彼の名前を呼ぼうとしたそんな時、くいっともう一方の手で、彼の方を向かされて、降ってきたのは彼の唇であって。突然のそれに驚きながらも、「もう、千聖?」 料理をしている最中に、なんて意味を含めながら彼を諭すように名前を呼べば、私が手を離せないのを知っているはずなのに、その意図が伝わっていないのか、その振りをしているのか、またその唇を私のそれに重ねてきて、
「 愛してる、。」
続けざまに紡がれた言葉に返す事すらできなかったのは、彼のその唇が再度降ってきていたからなんて事は、(・・・料理が焦げたら、私も責任があるのかしら?)