「ふふ、とっても素敵に見えるわよ。」
「ほんと、ほんとー?」
「ええ、本当。」
「花火といったら浴衣だろうが!」 なんて天十郎の言葉から花火をする前に浴衣を着る事になって。天十郎のその発想に疑問を持たないでも無かったけれど、まあそれも良いかと納得することにして、先程呼んだ真奈美さんと一緒に浴衣に着替えて話をしていれば、後ろからやっくんの声が聞こえたから、どうやらみんな着替えが終わったらしいようで。
「ティンカーちゃんとはもうMSIだね、ほんと。」
「・・・MSI?」
「マジでサラッと色っぽい、の略だよティンカーちゃん。」
「ふふ、ありがとう。そんなアラタも色っぽいわよ?」
「ンフッ、嬉しい事言ってくれるね、。どう、これから2人きりで、ぶっ!!」
「ピーちゃん何言ってるナリかあ?」
「じょ、冗談だってばやっくん!お願いだから手に持ってるそれしまって!!」
アラタが私の腰へと腕を伸ばそうとしたそんな時、アラタに蹴りを入れたのは先程まで話していた八雲であって。「・・・相変わらずね、アラタ君も。」 なんて呆れた様子でため息を漏らす真奈美さんと一緒に2人のそんなコントのようなそれを見ながら笑みを浮かべていれば、今度は「ーっ!!」なんて天十郎の声が後ろからして。
「見ろ!天十郎様の浴衣姿でぇ!!」
「ふふ、素敵ね、天。とても似合っているわ。ね、真奈美さん?」
「ええ、とっても似合っているわよ。」
「へへっ!あったり前でぇ!何たって、成宮天十郎様だからなっ!!」
私と真奈美さんの前で、嬉しそうに笑みを零してそう言葉を紡ぎ出す天十郎は、「お、お前らも、に、似合ってるぞっ!」 なんて照れながらも嬉しい言葉を返してくれて。可愛いなあ、なんてそんな事を思いながら天十郎の様子を見ていたのだけれど、それよりも視線を奪われたのは、天十郎の隣に立っていた、千聖の姿であって。
「 千聖?」
何故だか私の方をじっと見てその視線を外さないままの千聖と目がかち合って。少し顔が赤らんでいるように見えたから、彼の名前を呼びながらそのまま彼の方へと近づいたのだけれど、やはりその赤らみは見間違えではなかったようで。風邪でもひいてしまったのだろうか、思いながら、彼の額に手を伸ばそうとした、そんな時、
「千聖、貴方風邪でもひいてっ、」
「あー!!!ふーみんがまた抜け駆けしたー!!」
その伸ばした腕は千聖の額に届く事はなく、代わりに触れたのは彼の首元辺りで。突然のそれで為すがままになって、千聖に抱きしめられたんだと分かったのは、視界に彼の浴衣のその色が広がってしばらくした後であって。急にそんな事をされたものだから、「千聖、どうしたの?」 と言葉を漸く出す事が精一杯だったのだけれど、そんな私の言葉に千聖はようやく口を開いてくれて、
「誘っているなら、応えるが。」
すでに背中に回されていた彼の手は腰に回されていて、首元に埋められていた彼の顔は私の耳元でいつもよりも一段の低いその声でそんな言葉を囁いていて、(まったく人が心配したっていうのにこの人は、)
「あら、そんなつもりは無かったけれど?」
「俺には、そう見えた。」
「(・・・また勝手な、)」
別に断る理由も無かったけれど、このまま乗ってしまうのも何だか心配していた身としては悔しかったから、からかうようなそんな言葉を彼に返したつもりだったのだけれど、彼はそれすらも聞き入れる様子がなくて。その上、彼は私が好きだと知っているその愛しい声で、「責任をとってくれないと、俺が困る。」 なんて耳元で囁く始末で。何だかんだ言ったって、彼のその言葉を断るなんてそんな術を私が持っているはずもないのだけれど、
「 、」
「俺の愛しいその人は、責任を取ってくれるのか?」 妙に扇情的に私の名前を呼んで、続けざまにそんな訊き方をしてくる彼に、降参、なんて言うのも何だか乗せられた気がしないでも無かったから、近づいてくるその唇に、私は指を添えて「花火の後で、ね?」 なんて言うのだけれど、生憎彼にはそんな余裕すらもなかったらしく、
「 俺の愛しいにそんな格好をされて、待てる訳がないだろう?」