雨が降って湿度が上がり、さらに温度も上がってしまうこの季節。今日もそれは例外ではないらしく、気温は高く、外を見れば雨がそれはもう盛大に降りしきっていた。雨が降ってくる前に何とかアホサイユへとたどり着いた私はここで、その雨が止むのを待つ事にした。
「(スコールだと良いのだけれど、)」
窓から外を覗けば、依然と止む気配のない雨が地面へと向かって打ち付けるように降っているのが目に入る。最近はスコールのような雨が多いから、この雨もすぐに止むかも知れない、そんな淡い期待を抱いて読書をしていれば、ゆっくりとアホサイユのドアの開く音が聞こえてきた。
「千聖? って、ずぶ濡れじゃない。」
「・・・途中で降ってきた。」
本から扉の方へと視線を向ければ、私の視界に入ってきた雨に濡れて髪やら服やらがすごい事になっている千聖の姿。滴ってくる水を煩わしそうに手で拭うのだけれど、その手すらもずぶ濡れになっているから全く効果がない様子で。さすがにあのままではいくら夏に近づいているとは言え、冷やして風邪をひいてしまうと思った私は読んでいた本を机に置いてタオルを彼の所へと持っていった。
「冷えないうちに、シャワー浴びて来た方が良いわ。」
「ああ、そうする。」
肌にまとわりつく服が相当嫌だったらしく、「すぐに浴びてくる、」 なんて言いながら渡したタオルである程度拭くと、千聖は奥にある部屋へと足を速めた。彼が浴びている間に何か温かい飲み物でも作っておこうか、なんて思いながらキッチンへと歩を進めてティーカップを手に取った。
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「 、」
「あら、思ったより早かったわね。冷えないように紅茶でも、 千聖?」
紅茶の準備をし終えてソファに腰掛けて先程の本の続きを読んでいると、どうやらシャワーを浴びたらしく、千聖は後ろから私の名前を呼びながらそのまま首に腕を回して抱きついてきた。首元に顔を埋めている彼にそんな事を言うのだけれど、返事がなかったものだからその乾かしたばかりの髪の毛に指を絡ませながら再度彼の名前を口にした。
「 千聖?」
「紅茶で温まるよりも、」
「が温めてくれると、俺は嬉しいんだが?」 何を言い出すかと思えば、彼の口から出て来た言葉はまた愛おしいような、呆れるような、そんな言葉で。妙に黙って抱きついてくるからどこか具合が悪くなってしまったのだろうかと思ったのだけれど、どうやらそれも杞憂に終わったようで。
「もう、何を言い出すかと思ったら。」
「ふふ、心配してくれたのか?」
私の様子を見て嬉しそうに笑みを浮かべながらそんな事を訊いてくる千聖。本当の事だったので頷こうとも思ったのだけれど、それを認めてしまうのはこの展開上何だか惜しいと思ってしまう私がいて(だって、やられてばかりは、ね?)
「心配していたら、どうするの?」
心配していなかった、なんていうような口調で彼に聞き返せば、私の首回りへと回っていたその腕が一瞬強くなった気がした。からかい過ぎたかしら、そんな事を思っていれば聞こえてきたのは何とも愛しい声であって、
「愛しい人に心配されるなんて、嬉しいに決まっているだろう?」
「俺の愛しいは、心配してくれていなかったのか?」 なんてずるい聞き方をしてきた上に、彼のその心地の良い声でその言葉を耳元で囁いてくれるものだから、私は降参のポーズをとるしか手段はなかった訳で。(全く、これだから彼には敵わない。)