「今日はおやつの数が多いわね?」
「あ、!これねー、全部ふーみんが作ってくれたんだよお!」
1つずつ口に頬張りながら八雲は嬉しそうに話してくれるのを聞きながら、千聖の隣に腰を下ろす。そうすれば彼は私の前にもその綺麗に飾り付けられた和菓子を出してくれたから、お礼を一言述べてそれを1つ口に含んでみる。口の中に広がるその上品な甘さに思わず頬を緩ませていれば隣から聞こえてきた彼の声。
「 美味いか?」
「ええ、とっても。相変わらず、千聖の作る料理は格別ね。」
緩みきった頬を直せないままに彼の言葉にそう返答すれば、少し照れくさそうにしながら「 これもある。」なんて言って自分の手の中にあったあんみつを私に差し出してきた。彼の反応にまた笑みを浮かべてそれを受け取れば、右隣からの視線がこちらへと向かっていることに気が付く。
「真奈美さん?眉間に皺が寄っているけど、」
「・・・あんみつも美味しそうだなあって。」
「最近、千聖君のお菓子食べ過ぎちゃってるし・・・」 なんて言いながら私の持っているあんみつから目を離さないまま悩みに悩んでいる真奈美さん。補習をしに来ているはずの真奈美さんも千聖の作ったお菓子を目の前にしてはさすがに敵わないようで。最近はこの光景もまったく違和感のないものになってしまった(もちろん、嬉しい事であるのだけれど。)
「ふふ、真奈美さん。このあんみつ、一緒に食べよっか。」
「え、良いの?」
「そんな目で見られたら、ね?」
スプーンで一掬いして彼女の口の中へとそれを運べば、「美味しいっ!」 なんて嬉しそうにその言葉を紡いで満面の笑みを浮かべる真奈美さん。それから彼女に「半分になったら、交代ね?」 と全部食べてもらっても良かったのだけれど、一応はその言葉をかけておいてそのあんみつを渡す。
「(ふふ、可愛いなあもう。)」
至極幸せそうに食べる真奈美さんを見てそんなことを思いながら、千聖の淹れてくれたお茶をゆっくりと飲んでいれば今度は千聖の方が私の方に視線を向けて離さないのに気が付いて。
「千聖、どうしたの?」
「 何であいつにばかり、」
「うん?」
「何であいつにばかりそんなにあまい顔をするんだ、」 聞き取れなかった言葉をもう一度訊ねてみれば、ようやく聞こえてきた言葉はそんな一言であって。言った恥ずかしさからなのか、我慢が出来なかったのかその言葉を言い終えると同時に私の背中に腕を回した千聖はそのまま首元へと顔を埋めてきて。
「ふふ、貴方にもしていたつもりだったけれど、違ったかしら?」
彼の額へと1つ唇を落としながらそう言葉をかければ、「 そんな事もないが・・・」 なんて言葉が返ってくる。そんな彼の返答に再度笑みを浮かべながら触り心地の良いその髪の毛に指を通してくるくると絡めていればようやく千聖は顔を上げてくれて。それから今度は頬に唇を落として口を開いた。「確かに先生にはあまいけれど、」
「貴方に対しての方がずいぶんとあまい気がしているわ。」
「愛しい人にそんな顔されて、平気なわけがないでしょう?」 なんて彼の顔を両手で包み込んでそう言いながら、今度は鼻先に唇を落とす。そんな一言に微笑んで「 、」なんて愛おしそうに私の名前を呼んでくれる彼。けれど彼の表情は微笑んではいるのだけれど、何だか少し物足りなさそうな顔をしていて。わざと唇だけを避けていたことに気付いたのだろうかなんて彼に視線を合わせたまま考えていれば、
「焦らすな、もう我慢できん。」
なんて言って彼の唇が私のそれに降ってきて。そんな彼に可愛いなあなんて再度思ってしまう私は本当に彼に甘過ぎやしないかと思い始めたある和菓子の日。(最も、それは思うだけに止まってしまうのだけれど。)