「ー!あとどれくらいー?」
「もうちょっと待ってね。」
そう返事をすると、「はーい!!」 なんてソファの方から八雲の元気な声が聞こえてきた。八雲と天十郎の我慢の限界、そして千聖が来る前に早く作ってしまおうと生クリームを泡立てる手を少しだけ速めるのだけれど、そんな私の思いとは裏腹に、アホサイユの扉を開く音が耳に入ってきてしまった。
「あー!ふーみんがやっと来た!!」
「ンフ、ようやく主役の登場だね。」
「おっせーぞ、千!!」
「今ね、がバースデーケーキ作ってるから、もうちょっと待ってねえ?」 なんて八雲の楽しそうな声にここへ来た途端に言われた言葉をようやく理解したらしく、千聖は「ああ、俺の誕生日だったな。」 なんて一言口に出す。あれだけ朝に天の御輿の誘いを断っていたのに、そんなことを思いながら彼らしい反応にまた笑みを零していると、こちらへと近づいてくる足音を耳にした。
「 俺のために、か?」
すぐ隣へと寄ってきた千聖が言ってきたから 「それもあるけれど、天たちがどうしても食べたいって言ってくれるからっていうのも理由の1つかしら?」 なんて素直にそう返すと彼から帰ってきたのは沈黙だけで。彼の顔を見なくても、その言葉に不満を抱いてしまったのが分かったから続けて言葉を紡ぎ出す。
「ふふ、別に千聖にプレゼントがないなんて言っていないでしょう?」
かき混ぜる手を止めてスプーンで掬い、彼の口へそれを運んだ。拗ねた顔をしながらも、口を開いてくれて「 丁度良いんじゃないか。」 なんて感想もくれたものだから、そんな彼に愛おしさを感じて思わず笑みを浮かべてしまう。
「俺だけのため、というのはないのか?」
隣から私を抱きしめて拗ねたような口調でそう言葉を紡ぎ出してくるから、「何が良いかしら?」 なんて訊ねてみる。ケーキ作りを続けられるように配慮はしてくれているらしくそのままクリームをスポンジに乗せていると少し思案した後に「何でも良いのか?」なんて訊ねてきた。
「そうね、ある程度なら良いわよ?」
それに微笑みながら頷けば、彼は私の腕を掴んでその腕さえも抱き込んでくる。「千聖?」 これじゃあ作れないでしょ? そう名前の後に続けようとすれば、それを彼は自分の唇を私のそれへと重ねる事で中断させて。
「何でも良いのなら、 俺は、」
そう言って彼は私を自分の正面へと身体を向けさせると、そのまま耳元へとその唇を近づけて 「今すぐ、が欲しい。」なんて言葉を心地よい低音の声と共に囁いた。(ああ、もう。)