窓とカーテンの隙間から、少しの光が入ってくる。眩しいけれどその心地の良い光に、瞑っていた目が自然と開く。時計を見ると休日にわざわざ起きなくても良いだろうというような時間を針が指していたが、それでも目が覚めてしまったものは仕方ない。


「    、」


隣でまだ夢の中を歩いているのであろうに視線を移す。閉じられている目が開かないものかと淡い期待を抱いてその愛しい名前を呼んだが、案の定彼女からの返事は寝息だけだった。けれど彼女は俺の声に反応をしてくれたのか、一瞬だけ息を乱す。眠っている時でさえもの中には俺がいる事を意識してくれているのだとそう思うと、それだけでもこみ上げてくるものがあるというのに彼女はそれに追い打ちを掛けるように迫ってくる。


「   千、聖」
「っ、」


彼女に名前を呼ばれただけなのに、俺の鼓動が脈打つのが体全体で感じられる。いつも呼ばれているその名前が何故か特別な響きのように感じられて。その言葉を紡ぎ出す唇にふと目をやると、何かいけないようなものを見てしまった気がしてならなかった。それでもそれに目を奪われるのは俺の理性がなけなしだからか、それとも彼女が意識なしにも誘ってくるからか、


、」
「  う、ん?」


その唇に指を這わして彼女の名前を囁くと、少しだけそれを震えさせて返事をしてくれる。彼女の瞳がうっすらと開き、俺へと焦点を合わせていくのが分かる。けれど彼女の焦点が合った時にはすでに、の唇へと俺は噛み付いていた。


「  っ、  ち、」


俺の名前を呼ぼうとするのでさえ自分のそれで塞ぎ込んで、何度も重ねて彼女の唇に触れる。その甘い唇は、料理とは違ってなくなるようなことはなく、それよりもむしろ咀嚼する度に甘さが増していっているように思えるもので。


「     甘いな、」


「起きたばかりなのに、何をしているのよ。」 なんて彼女が言葉を放つ。それでも俺に罪悪感が募る事がなかったのは、が俺に微笑みを向けてくれたからかも知れない。そんな彼女の、今開いたばかりの瞼に1つ接吻を落とせば、「もう、千聖、」 なんて緩く叱ってくる。そんな心地よい声で叱られたら俺の中の感情が止められなくなることくらい、は知っているはずなのに、


「  わざとか?」
「ふふ、どうかしらね。」


そう言いながら俺を試すような笑い方をしてくる。けれど俺はその賭けに勝てるほどの気力はもう残っていないし、もし残っていたとしても賭けに勝つ見込みなんて零に等しいことなんて最初から分かっていた。


「俺の負けだ。だから、    、」
「  私も、」


俺と同じ事を言うつもりだったのだろうか、最後まで聞くつもりだったが生憎そこまでの理性を俺は持ち合わせてはいなくて。おそらく俺にとっては嬉しいはずの言葉を一緒に飲み込んで、彼女の濡れた唇を再度、奪った。

僕等はその間で息をする

その間でさえも、塞ぐような深いそれを。





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