「ああ、さん。那智さんなら奥のソファで寝ています。」
放課後になり立ち寄った生徒会室、けれど彼の姿が見当たらなかったから名前を呼んでみればソファにいるとの陽祐君の声が掛かる。仕事は終わったのだろうかと思っていれば、「今日は珍しく、自分から率先してやってくれましたね。」なんて陽祐君が言ってくるものだから、思わず笑みを浮かべてしまう。持ってきた箱を机の上に置いて、彼の寝ているソファへと歩を進めた。
「那智、 わっ、」
ソファで横になっている那智に近づいて彼の名前を呼べば、最初から起きていたのかそうでないのか、彼は私の腕を掴んでそのまま自分の方へと引き込んでいく。急な事に対処できなかった私は那智の方へと倒れ込んでいくわけで。
「 もう、何するのよ。」
まるで抱き枕のように体勢を崩された私は彼の為すがままに抱き込まれて首元へと顔を埋められる。そんな彼に驚きの意味を込めてそう不満の声を出せば、「来るのが遅いんだよ。」なんて逆に不満そうに返されたそんな言葉。
「いつも通りでしょう?むしろ今日はそのまま生徒会に来たから早い方よ?」
目の前に広がる彼の柔らかい髪の毛に指を絡めながらそんな事を言えば、無言のままで返事の代わりに背中に回された腕に力が入ったのが分かった。こんな様子では授業中はどうしていたのだろうか、まあ慧がいるから大丈夫だったのだろうけれど、なんて思っていれば何だかそれがおかしくなって思わず顔を緩めてしまう。
「・・・何1人で楽しそうな顔してんだよ。」
ようやく顔を上げてくれたと思えば、どうやらまだ眉間には皺を寄らせたままのようで。朝に、その一言を言っても良かったのだけれど那智の事だから慧と教室で囲まれているんじゃないだろうかと思って朝は避けたのに、それが彼には不満だったらしく。「朝来ると思ったら来ねえし、」なんて視線を合わせながら言われる。
「・・・慧に、慌てるな、放課後になったら来てくれる、なんて言われるし。」
「ふふ、それはそれは、」
「笑いごとじゃないだろ、誰の所為だと思ってるんだよ。」
那智と慧の様子が思い浮かべられて思わず笑っていれば、唇と少しだけ尖らせて不機嫌そうに言葉を紡ぎ出す彼。そわそわする那智の様子なんてそう見られるものではないから、見たかったなあなんて思いながらも、そろそろ彼の不満を取り除かないと本格的に彼が拗ねてしまう、そう感じた私はその不満そうに突き出している唇へと自分のそれで触れる。
「ほら、那智、起きて?ケーキを作ってきたの。」
「・・・陽祐達も食べるんだろ。」
未だに抱きしめられていて立ち上がれない状況で、那智にそう促せば、彼から返ってくるのはもう少し不満そうなそれで。せっかくの日であるのに、このまま拗ねてもらっていては困るし、彼もそれは不本意だろう。「ふふ、じゃあプレゼントはいかが?」 だからそう彼に言葉をかければ、しばらくの沈黙の後、彼は「・・・仕方ないな、」なんて言いながら漸く重くなっていた腰を上げてくれた。
「 、」
「うん?どうしたの?」
「プレゼント、 覚悟しとけよ?」
先程までの不満そうな顔は何処へ行ったのやら、そう言葉を紡ぎ出して私の唇へと自分のそれを重ねてきた彼の顔は至極楽しそうなそれをしていたのだ。