さん、紅茶をどうぞ。」
「ふふ、いつもありがとう、陽祐君。貴方の淹れた紅茶がつい美味しくって。」
「そう言っていただけると、俺も嬉しいです。」


ある日の生徒会室、たまにこうしてお邪魔させてもらうのだけれど、今日は何だか彼の様子がおかしいらしい。紅茶をもらって一口飲みながら隣を見ると、頬杖をついてそれはもう不機嫌そうな顔をして何かのプリントを処理している那智の姿。


「ったく、何でおれが・・・」
「何でって、貴方は副会長でしょう?それくらいの仕事はして当然ですよ。」


いつもならこのような処理も慧がやっていたのだけれど、彼は天十郎達に指導すると意気込んでアホサイユへと出て行ったきりだ。それに乗じて那智もついていこうとしたけれど、陽祐君に止められて、目の前に出されたのが今の書類の山である。


「それにしても、溜めすぎよ?」
「・・・おれ、こういう事務仕事嫌いなんだよ。」


「裏で動いてる方が楽・・・」 そんな彼の言葉にそれは言って良いものだろうかなんて、仮にも生徒副会長という職を務めている彼を見て苦笑しながら、すでに机に突っ伏して任務を放棄している彼の頭にそっと触れる。「ほら、さっさとやってしまったら?」 なんて撫でる手を止めないでいると、彼は不満を言い出しそうな顔をしながらもゆっくりと起きあがって再び手を動かし始めた。


「(助かります、さん。)」
「(いいえ、どういたしまして。)」


だから陽祐君も私に連絡をよこしたのだろう。普段ここへは那智の誘いを受けて来ているのだけれど、今日は陽祐君からの連絡があってきたのだ。(よろしくお願いします、なんて切実そうに頼まれたけれど、まったく那智は何をやっているのだろうか)


「   なあ、、」
「駄目よ?那智がこれを終わらせないと。」
「・・・まだ何も言ってねーし。」


抜け出そうと考えているくらい容易に想像できたから、彼が何かを言う前にそれを止めれば、彼の眉間にはますます皺が寄っていって。「ほら、後が付いちゃうわよ?」 なんて言いながらそれに触れて撫でていると「の所為だろ、」 なんてまた不機嫌丸出しの声で返答される。


「元々を辿れば、那智が溜めていたのが悪いんでしょう?」
「・・・おれの事はそうやって流すのに、陽祐と仲良く話すし。」
「・・・今それは関係ないと思うのですが、」
「うっさい、陽祐は黙ってろ。」


「陽祐じゃなくて、おれを構えよ。」 我慢しきれなくなったのだろう、隣で手を動かしていたはずの那智はその言葉を放ったと同時に横から私を抱きしめてきて。紡ぎ出された言葉が言葉だったから、私も彼を無理に引き剥がす事ができなくて(だって、あんなに可愛い言葉を言われてしまったら、ねえ?)


「ふふ。ほら、それが終わったら好きなだけ付き合うから、ね?」
「・・・そんなの当たり前だろ。」


「おれがこんなに頑張るなんて珍しいんだから、たっぷり労ってくれるよね?」  首元に顔を埋めながら甘えるようにそう言ってくる彼に笑みを零してしまう私も、結局彼の兄のように彼を甘やかしてしまうのだ。(それでも、彼の兄よりは甘やかしていないつもりなのだけれど)

ミルクと一緒に溶かして

ほら、いつまでもくっついていたら終わらないでしょう?   んー、もうちょっと。  駄目よ、終わらせないと慧も困ってしまうわ。それに、貴方を労る時間も減ってしまうけれど?    ・・・さあ、陽祐。さっさと終わらせるぞー。   現金にも程がありますよ、那智さん。   うっさい。ほら、これ終わったぞ!   ふふ、まったく。 





title by farfalla / ミルクと一緒に溶かして(宝箱の中のひと)