別段、特に用事があったわけではなかったからに本棚から一冊取り出して読書をしながら彼が来るのを待っていたのだ。それから数十分、「あら、那智くんいらっしゃい!」なんて嬉しそうに出迎えるお母さんの声が聞こえてきたものだから、那智が来たのだと理解する。
「!那智くんが来てくれたわよ!」
「 うん、聞こえてる。」
彼は私の部屋へと一応はノックをして「入るよー。」なんて言いながらそれと同時にドアを開けて入ってきて、そのまま連れて行かれるのかと思えば、彼から出た言葉は思いも寄らない言葉だった。
「、膝枕して?」
それからの那智の行動はとても早かった。訳が分からなくて何も言えないで彼を見ている私の所へとやってきて、自分もソファへと腰を下ろしてそのまま私の足へとダイブした。
「ちょっと、那智?」
疲れていたのであろうか、彼からすぐに寝息が聞こえてきた。なんて気まぐれな、そんな事を言いながら彼のそれに振り回されている事を自覚しているのだが、それでも彼を愛おしいと思ってしまうのだから困ったものである。
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それから数時間。足を動かさないように彼が来る前から読んでいたそれの続を見ていたのだけれど、ようやく彼が起きたのか下の方から声がした。
「ふわあ、よく寝た。」 なんて暢気な事を言っている彼はそのまま私の足に頭を預けている。
「ツーリングに行くんじゃなかったのかしら?」
「うーん、そのつもりだったんだけどねー。何か眠くなったから止めた。」
「ていうか、の顔が見えないんだけど。」 本で視線を阻まれている事が不満だったらしく、彼はそんな事を言って本を持っている私の手に自分の手を重ねてきた。
「もう少しで終わるから、待っててくれる?」
「えー、どうしよっかなー?」
そう言って悩んでいるように言葉にはしているけれど、実際の行動とは全く伴っていないのであって。彼は私から本を取り上げてそれをテーブルの上に置くと、両腕を私の腰に回してきた。
「どうしようって言葉とかは、悩んでいる人間が使う言葉なんだけど?」
悩む素振りも見せようとせず先程の行為をやってのけた那智に、わざとらしくそう言うと彼もそれに対抗してか、「へえ、そうなんだー。」なんて嘘くさい感心と共に返事をされる。
「はいはい、私が悪かったわ。」
そう言いながら腰に抱きついている彼の頭をゆっくりと撫でていると、彼はゆっくりと頭を上げて上半身を起こして、今度は身体ごと彼に抱きしめられる。
「那智?」
「 が、おれよりも本を選んでいるのがいけないんだよ。」
「おれを見て、おれだけに心を惹かれていれば良い。」 なんて首元に顔を埋めてその言葉を囁くものだから、彼が拗ねていることに気付くのに時間はいらなかった。そんな彼を可愛いなあ、なんて心の中で思いつつ、言葉にはしない。言ってしまえば、彼はいっそう拗ねてしまうからだ。(そんな彼も見てみたとは思うけれど。)
「那智、一緒にお昼寝しましょう?まだ眠たそうよ?」
「 いーや、起きとく。」
「ふふ、もう本は読まないわよ。そうならないように抱きしめて寝ても良いし、ね?」
変わらず顔を埋めている彼の額に、リップノイズを立てながら1つキスを落としてそう提案すると、那智はゆっくりと顔を上げて「絶対、読むなよ?」 と念を押してくる。
「ええ、読まないわよ。私の愛しい人の頼みだもの。」
まだ少し不満そうにしている彼の唇にキスをしてそう言えば、彼の顔にはいつものような笑みが戻ってきて、彼からも甘い口付けが返される。
「、愛してる。」
「ふふ、私も愛しているわ。」
それから彼は楽しそうに私を抱き上げて、目的の場所であるベッドへと向かうのだった。