「・・・ん、どうしたの、?」


トゲーと一緒に、語学準備室でお昼寝をしていたら、がらがらと扉がゆっくりと開く音が僕の耳に入ってきて。ここに入ってくるなんて誰だろうと思って、渋々と身体を起こしてそちらを見やれば、僕の大好きな人、 がそこにいた。確か職員室で本業の方の仕事をしてたと思ったんだけど、それも終わったのかなと思いながら、にそう声をかければ、ふらふらと、何だか覚束ない足取りのまま、ソファに座っていた僕の方へとやってきて、


「・・・ごめん、瑞希、ちょっと寝かせてくれる?」
「え、 ?  わっ、 」


そういえば、の顔、ひどく疲れてるような、なんて思っていたら、僕の隣へと腰を降ろしたは、僕にそう言葉を紡いだ途端、僕の足へとその頭を置くようにして、半ば倒れるように身体を傾けてきた。
そんなの突然の行動に驚きながらも、彼女の身体に手を滑り込ませて、なんとかぶつかった時の衝撃を和らげる。いつもなら、僕のそんな行動にお礼を言ってくれるだったけれど、今日はその言葉が返ってこなかった。


「   ?  ・・・寝ちゃった。」
「トゲー?」


どうやら、相当眠かったみたいで、はもうすでに夢の中へと旅立ってしまったらしい。部屋の中に響いたのは僕とトゲーのそんな声と、の柔らかで、安らかな寝息だけだった。少しだけずれていた頭の位置を変えようと頭をそっと動かしたけれど、それでもは起きなくて。


「・・・昨日も、遅くまで仕事やってた、ような。」
「トーゲッ!」
「うん、僕が眠った後も、やってたよね。」


確か、急に上司に頼まれたとか言ってたかな。だから、いつもはしない徹夜なんて事をしていたんだと思う。僕の知る限り、その状態が1週間は続いていた気がする。一応、食事だけは栄養のあるものを食べさせるようには気をつけていたけれど・・・


「・・・ちゃんと寝ないと、身体に悪いって、あれだけ言ったのに。」


そんな僕の言葉も、には届かずに部屋の中にだけ響いて消えた。がこの仕事を好きでしている事は知っていたし、「大丈夫、限界になったら、さすがに私も休むから。」という彼女の言葉を信じていたから、睡眠だけは注意を促すだけで、何もしなかったけど・・・


「  心配する、こっちの身にもなって、。」


するりと指通りの良い髪へと手を添えて、ゆるゆると撫でながらそんな言葉を紡ぐ。そんな事をしていれば、僕の声にか、それともの頭に触れていた僕の手になのか、横向きに寝てきたの身体がゆっくりと仰向けになって、その顔が、その顔に浮かんだ優しくて、愛しい笑みが、 僕の目にはっきりと映ったから、


「ふふ、  ね、トゲー、」
「トゲっ?」
「今度、が無理をした時は、ぎゅうって抱きついて、そのまま一緒に寝ちゃうのは、どうかな。」
「トゲ、」
「それでね、「ベッドで寝ないと、ね?」っていうに、が居ないと眠れないって言うの、」


「  それと、大好きな人の身体が心配、っていうことも。」 それでがちゃんと一緒に眠ってくれるかどうか分からない。もう少し仕事を進めてからって言われる可能性だってあるかも知れない。・・・でも、は、困ったように笑うだろうけれど、それでも、きっと、


「トーゲっ!」
「ふふ、良かった、トゲーも賛成してくれた。」


気持ちよさそうに、僕の足の上で眠っている張本人を目の前に、僕とトゲーはそんな楽しい楽しい作戦を立てたのでした。 

手を繋いで一眠り

きっと、優しいは、僕のお願いを聞いてくれると思うんだ。





title by Lump / 手を繋いで一眠り(short)