今日の午後は、授業も、その準備も特になかったから、彼らの補習までは、と、職員室で本業である方の仕事に手をつけ始めて1時間は経っただろうか。ようやく一息つける所まで打ち終わったから、コーヒーでも飲むかと、コップを手に持って、腰を上げた、そんな時、
「先生っ!! ま、斑目先生がっ!!」
「ほら、落ち着いて?瑞希が、どうかしたの?」
「斑目先生がっ、 教卓の前に突っ伏して寝ちゃいましたっ!!」
「・・・はい?」
扉を開く大きな音と一緒に響いてきたのは、聞き間違いかと思ってしまうような、そんな言葉だった。
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「・・・瑞希、 ほら、瑞希、」
今日の彼の授業が、プリントをする、というものだったのが、どうもいけなかったようで。各自教科書で調べても分からない所を瑞希に聞く、それを繰り返して刷ってきたプリントを3枚程度やる、というものだったらしいのだけれど・・・その本人が寝てどうするのよ。
「・・・あの先生、ここ、教えてもらえますか?」
「ええ、もちろん。えっと、ああ、ここは・・・」
瑞希を起こそうとする一方で、聞きに来る生徒へと問題の解き方を教える。プリントも、ちゃんと生徒に分かりやすく、要所は捉えている事に関しては、瑞希らしいといえば、瑞希らしいが・・・というか、こういうプリントは自分が授業に出られない時ににするものじゃないのかしら、なんて思いながら、瑞希を再度起こしにかかった。
「・・・まあ、瑞希のことだから、進みすぎて時間が余ったからとかそういう理由でしょうけど。」
「トーゲッ!」
「あら、やっぱりそうなの、トゲー?」
瑞希の肩口からひょこっと出てきたトゲーに返事をもらいながら、トゲーの乗っていない肩の方を軽く叩く。「貴方の主人は本当に睡眠好きね。」 なんて苦笑を漏らしてしまいながらトゲーと会話をしていると、ぴくり、と、瑞希の身体が震えた気がして、
「 ん、 、」
「瑞希?良かった、やっと起きた。 あのね、今は授業時間で・・・」
「ふふ、やっぱり、が来てくれた。」
寝起きだというのに、何故だかしっかりと私の名前だけは紡いで、ゆるりと瞼を開ける。その視界に私を映すと、嬉しそうな笑みを浮かべて、私の言葉を聞かないまま、続けるようにして、そんな言葉を口に出すものだから、「? やっぱりって・・・ちょっと、瑞希?」
「、ここに座って?」
「 いや、ここに私が座ったら貴方が、」
「がここに座って、僕は後ろから、こうやって・・・」
「きゃあっ!ま、斑目先生がっ、先生にっ!!」
寝起きのはずなのに、どこにそんな力があったのだろうか。また言葉の途中に遮られて、そのまま瑞希が腰を下ろしていた椅子へと座らされ、何をされるのかと思っていると、、気がついた時には、生徒の方から、そんな声が聞こえて。視界の端には、私の身体に回されている彼の腕がちらりと見えて、
「・・・ちょっと、瑞希。今は授業中、しかも貴方の。」
「・・・ぎゅー、 ぐー、」
「誤魔化せてないわよ、まったくもう。」
「今の時間帯、職員室にしかいない事は、調査済み・・・」
「もし、僕が寝たら、職員室に行って、誰かに僕を起こしに来てもらって。 と、最初に生徒に伝えてた。」 なんてゆるゆるとそんな言葉を私へと聞かせてくる瑞希。・・・色々と、確信犯だったって訳ね、耳元で響いてくる瑞希のその言葉を聞きながら、思わず深く息を吐き出してしまった。本当であれば、さっさと瑞希を引き剥がして、彼を椅子へと座らせて、授業をさせるべきなのだろう・・・でも、
「ふふ、、あったかい。」
「今日だけ・・・ね?」 けれど、それができないのは、すりすりと首元に擦り寄って、そんな甘えるような声を出す瑞希の所為なのか、そんないくら愛らしい行動だからと言って、許してしまう私の所為なの、だろうか?なんて考えながら、睡眠を促してしまうように、視界に入ってきた彼の頭をゆるゆると撫でてしまうのだから、(・・・ほんと、どっちの所為なのかしら、ね?)