「 はい、どうぞ。」
「ありがとうございます。では、失礼します。」
今日何度目になるか分からないその声を聞き終わって、届いた物をリビングへと持っていく。もうすでに、リビングには今日はバレンタインだったか、なんて思ってしまうくらいのたくさんのプレゼントでいっぱいになっていて、それらを踏まないように気をつけながら今届いた物をゆっくりとプレゼントの上に重ねて置いた。
「(それにしても、毎年プレゼントの量が増えていってる気がするわね。)」
彼の人気が高い事は知っているし、プロのプレイヤーとして海外で活躍をしているんだから、当たり前と言ったら当たり前なのか、なんて納得してしまいながら、1人分あるかないかくらいのスペースを確保していたソファへと腰を降ろした。・・・まあ、彼の場合、その容姿も人気上昇の要因の1つになっているんだろうけれど。
いや、別にそれに対して不満を持っている訳ではないのだ。彼が人気になる事はむしろプロのプレイヤーにとって喜ぶべきものであるし、そんな彼が自分の恋人というのだから鼻が高いものである。このプレゼントの量もその人気度を示すものだと考えたら嬉しくなると言えば、そうなのだけれど・・・
「(・・・朝早くから何度も配達に対応するのは、ちょっと、ねえ?)」
彼の為に(というか半ば強制的になんだけれど、)今日はもともと会社には休むと言ってあるから、そこは問題ないのだけれど、でもだからと言って、私は朝早くからこんな事をするために休みを取ったわけでもなく。・・・さらに言えば、真夜中から誕生日プレゼントだなんだと言って彼に押し倒された所為で結局眠ったのが明け方だったのも相俟って、
「・・・(さすがに、眠たい、)」
彼の隣で昼まで寝ているつもりだったのだけれど・・・チャイムの音で起きてしまい、最初こそ寝室から玄関を行き来していたのだけれど、一向に配達が止む気配が無く、気持ちよさそうに寝ている彼を起こしてしまうかもしれないと思って、そのままリビングに居ることにしたのは良いものの、ソファもほとんどプレゼントに占領されてしまって横になる事もできなくて。さらに言えば、ソファに座ったまま眠ろうとすればタイミング悪くチャイムが鳴らされる始末で。
「(・・・瞼が重い、)」
「・・・おい、。何勝手にオレ様ン側離れて起きてンだよ。」
「いや、だから配達が・・・え?」
何を意識するわけでもなく反射的に彼の言葉に答えようとして、その時、漸く独り言として呟いたはずのその言葉に、何故か言葉が返ってきた事に気が付いた。下に向いていた顔を、声のする方へとゆっくりと向ければ、そこにはもちろん、この家に一緒に住んでいて、私の恋人である、
「清春? ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
「・・・お前が俺様の側を離れたからだろうが。」
「人が気持ち良く寝てンのに、腕から抜けやがって・・・」 目を擦りながらソファに座っていた私のところへとやってきた清春は、ひどく不機嫌そうにそう呟きながら、私に覆い被さって首元へと顔を埋めた。まるで猫のようなその姿に愛らしさを感じて思わず笑みを浮かべてしまいつつ、彼の背中へと腕を伸ばしてゆるりと撫でた。そうすれば私が笑っているのを感じとったのか、清春はまた不満そうな声を出して、
「・・・オイ、反省してねェダロ。」
「ふふ、そんなことないわよ?勝手に起きた事は悪かったわ。」
「それに、私だってベッドから出たくなかったわよ。」 心地よかった彼の腕の中を抜け出すのは私だって嫌だったけれど、何度も繰り返して鳴るチャイムが一向に止む気配がなかったから仕方なくだったのだ。好んで清春の側から離れた訳ではない事を彼に伝えれば、それでも彼はやっぱり不満そうな顔をしながら、
「ンなもん無視しろ。」
「ええ?いや、そういう訳にもいかないでしょう?」
「全部、貴方への誕生日プレゼントなのよ?」 受け取らない訳にもいかないし、それに、今、チャイムを無視してしまえば、夜が大変な事になる事は目に見えて分かる。それを軽減させるためにこうやって起きて対応しているというのに。
けれど、それすらも彼にはどうでも良い事の部類に入ってしまっているらしい。それだけ、睡眠の時間を邪魔されたのが嫌だったのだろうか、なんて事を思いながら、彼を宥めるように背中をゆるりとなで続けていれば、ゆるりと彼の顔が私の顔へと近づいてきて、
「今日はオレ様の誕生日なんダロ?」
「? だから、さっきからそう言ってるじゃない。」
「だったらァ、今日くらいオレ様の言う事聞けっての。」
「今日のの時間は、全部オレ様のモンって言ったはずだ。」 彼の唇が繰り返し私の唇に触れるのを感じながら、その言葉を聞く。ああ、確かそんな事を真夜中に言っていた気がする、とっても良い笑顔付きで。
「(・・・ん? 今、何か落ちた音が、)」
ゆるりとそんな事を思い出していれば、いつのまにやら、私の身体は清春によってソファへと押し倒されてしまったようで。耳元で聞こえるプレゼントが落ちる音に、ごめんなさい、と謝りを入れつつ、けれど押し倒されてしまって事で、近くに居座っていた睡魔が、さらに近づいてきた気がして、
「良いか、。今、お前はオレ様と仲良ーく、眠る時間なンだよ。」
そんな勝手な、なんて思いながらも、まあ誕生日だし、今日くらいは私の時間を彼に委ねても、なんて考えに意識が向いてしまうのは、眠たいから考えるのが億劫になった所為なのか、それともただ単に、私が彼に甘い所為なのか、・・・というか、誕生日だからとか関係なく、いつも彼はそんな事を言っている気がしないでも、ないんだけれど。ぼうっとし始めた頭で、そんな事を考えていると、押し倒してきた本人は、最後の仕上げとばかりに、私の瞼へと唇を落として、 「だからァ、」
「オレ様の腕の中でさっさと寝ちまえ。」
そうして私は、心地よい夢の中へと旅立つことになったのだ。