「(朝食でも、作るかな。)」
起きてみたは良いものの、休日だから出勤もなければ仕事もない。そのまま、彼の隣へとまた寝てみたけれど、どうも目が完全に覚めてしまったらしい。何もしないというのも何だかあれだから、とりあえず、彼の健康のためにも遅い朝食を作ろうかなんて思って、そっと彼の隣から立ち上がってそのままエプロンを身に纏ってキッチンに立つ。
「さ、作りますか。」
「 何を、だ。」
独り言で呟いたつもりだったはずなのに、それに反応してくる声。そんなことを出来るのはもちろんこの部屋には私以外1人しかいなくて。彼の声のする方へと振り返ると、まだ少し眠たそうに目を擦りながらこちらへと近づいてくる慧の姿があった。
「起きたの?おはよう、慧。」
「 ああ、おはよう。それで、何を作るんだ?」
「ふふ、まだ寝惚けているのね。」
「おはようっていうくらいだから、朝食かしら?」 なんて冗談交じりにからかうと、少しだけ間をおいてから彼はようやくその言葉を理解したらしく「・・・顔を洗ってくる。」 なんて恥ずかしそうに言いながらそちらの方へと足を向ける彼に笑みを浮かべながら調理を開始した。
「、何か手伝う事はないか?」
「ありがとう、でも慧は座っておいて?」
「しかし・・・」
疲れているであろう慧にそう言うけれど、それでも彼は手伝おうとしてくれるものだから食器を置いてもらえるかしら、と声を掛けると彼は嬉しそうに頷いてそれを準備してくれる。良いお嫁になるよなあ、なんて本人に言えば怒られそうな言葉を心の中で密かに思いながら後ろ姿を見ていると、その視線に気付いたのか、慧は後ろを振り返って私の方に目を向ける。
「 何だ?」
「ふふ、何だかこうしているとね、」
「?」
「何だか新婚みたいじゃない?」 なんて微笑みながら彼に言って、出来上がった朝食を運んでいく。その間にも彼が何か言ってくれるのかと思っていたのに、帰ってくるのは無言だけ。冗談が過ぎたかな、なんて思って慧の方を見ると徐々にその顔が紅く染まっていくのが分かった。
「(あら?)」
「お、お前、しっ(新婚っ!?)」
冗談はよせ、なんて言われるかと思っていたのに、返ってきたのはなんとも可愛らしい反応で。新婚、という言葉を口に出すのでさえも、恥ずかしそうに口ごもる彼にどうしようもない愛おしさを感じるのは、至極当然な事であって。
「ふふ、慧? 食べましょう?」
慧のその姿をしばらく見るというのもなかなか良い案だとは思ったけれど、料理はやっぱり温かいうちに食べた方が良いと思って、真っ赤な顔をしてこちらを見ている慧にそう声をかけると、何故か彼は少しだけ不満そうに席についた。「慧?」なんて名前を呼んで、彼からの返事を待っていると、返ってきたのは、
「 そのうち、それになるつもりだからな、 と。」
返ってきたのは、それはもう嬉しすぎる言葉だった。(ああもう、敵わないな。)