「うん?どうしたの、アラタ?」
八雲にホットケーキを作っていた事に嫉妬しちゃったとか何とか言って、アラタは私が作った夕食を食べたいと言い出して。特に何の用事もなかったから、そのままアホサイユで少しだけ早い夕食を作ってそれをアラタに振る舞ったのだけれど。
「すごく美味しかったよ、の手料理。」
「ふふ、それは良かった。」
片付けをしている最中、彼にそんなことを言われて思わず笑みを浮かべてしまう。自分の作った料理を美味しいと言って貰える事は素直に嬉しい事であるし、それが愛しい人の言葉なら尚更のこと。彼の言葉に思わず顔を緩ませていると、彼は先程まで優雅に座っていたソファから腰を上げたらしくこちらへとゆっくりと歩いてきた。
「 アラタ、そんなにくっついていたら洗えないでしょう?」
「そこはガンバってよ、愛の力で。」
「そんな大層な力は持っていないけど?」
「んもう、ってば。」
「ガンバってよ、ね?」 そんな事を言いながらも微笑んでいる私を抱きすくめて身動きの取れないようにしてくるから、本当は頑張らせる気もないんじゃないかなんて思いながら首だけ彼の方に向けて見上げると、そこには相変わらずの笑みを浮かべた彼の顔。彼がこうやってしてくるのには理由があるのだと、その意味を込めて彼の名前を呼べば、「は鋭いね、全く。」 なんて言いながら頬に1つ口付けを落としてきた。
「やっぱり、エプロンを身に纏うってステキだよね。」
「 まだ、昼の事を根に持っているの?」
そんなに八雲に自分をまかせた事が不満だったのか、私の言葉を聞くと彼は「甘い一時になってたのに、やっくんももオレのこと狼みたいに。」 なんてそのまま首元に顔を埋めながらその言葉を紡ぐ。今の行動が狼以外の何に見えるのだろうか、とそんな事を思っていると、彼の手が食器を洗い終えた私の手をゆっくりと掴んできた。
「ねえ、。デザート、オレにちょうだい?」
「あら、さっき出したつもりだったけど?」
「ンフ、のイジワル。オレはこっちのデザートが食べたいの。」
「もう、食べちゃって良い?」 そんな事を聞きながらも、すでに彼の唇は私の唇に触れていて。わざとらしくリップノイズを立てながら私を煽ってくる彼は楽しそうに笑っていながらもその笑みが私にはひどく艶めかしく見えるのだから、私も相当彼にやられているなあなんて思ってしまう。それを言ってしまえば彼はまたさらにその笑みを深めてしまいそうだから、言わないでおこうと思う。(最も、彼はとっくにそれに気付いているのかもしれないのだけれど。)