放課後、モデルの仕事に行く前ににそんなことを言われた翼。カメラのフラッシュを浴びながらそれに集中できないでいる。けれど幸運にも今回のテーマはわざと目線を逸らすようなものばかりであったから翼の意思とは関係なく仕事は順調に進んでいく。テーマの中に焦れったい顔、というのがあったのを翼は気付いていないのだろう。カメラマンはとても満足したように次のものへと移ったそうだ。
「(の家に・・・)」
今にも頬の筋肉が緩みそうな顔をしているのを手で押さえて隠す。その格好でさえも様になってしまうのだからスタッフの人達は何の違和感も感じない。翼がこのようになっているのには当然理由というものがある。そのためには翼を誘ったのだが。
「ふふ、翼。」
「ん?何だ、?」
「Happy Birthday. 」
プレゼントは自身が良い、なんて、そんな思考だけが翼の頭の中で巡っていく。そう、来たる今日8月14日は翼の誕生日なのである。だから翼は早くの家に行きたくてうずうずしているのだ。1秒でも早く、を抱きしめて、彼女を感じたい。
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「いやー、翼くん今日は一段と良かったよ!」
「今日は、終わりか?」
「はい、今日はこれで終わりです。で、次回のテーマは・・・って、翼くん!?」
いつもなら次回のことも聞いて帰るのだが、今日はそんな時間さえも惜しい。ちょうど私服で撮っていたため、翼はスタッフの話に耳を傾けず、そのまま車へと急いだ。それに疑問を感じないのは、理由を知っている秘書の永田さんだけだった。
「永田、まだ着かんのか!?」
「もう少しでございます、翼様。」
焦れったさを感じながら、外の景色を見る。確かにの家へ近づいているのは分かるのだが、それですらもどかしさを感じる。 と、携帯の着信音が鳴る。画面を見ると、それは自分が待ち望んでいる人からだった。翼の顔が分かりやすいくらいに緩んでいく。
「もしもし、翼?」
「、どうした?」
「いつぐらいに着くかなって。あ、もしかしてまだ仕事してた?」
「いや、もう終わった。もうすぐ着くから待っていろ。」
「分かった、早く来てね?」
「ああ、」
そう言って、携帯の電源を切る。短い電話だったけれど翼にはそれが非常に効果的であったらしく、先程まであれだけいらいらしていたのに、今では鼻歌をする始末。翼をここまで一喜一憂させるに永田さんは少なからず彼女に一目置いていた。上機嫌な翼を見て微笑みながら永田さんは彼女の家に急ごうとハンドルを切った。
**
「では、翼様。私はこれで。」
ようやくの家へ到着し、車を降りる。永田さんも気を遣ってだろう、翼1人残して車のエンジンをかけてそこから去っていた。それからひと息ついて、インターホンを押す。少しすると、ドアが音を立てて開く。
「いらっしゃい、翼。」
「、」
ドアの向こうからが現れた瞬間、すぐさま彼女を自分の方に抱き込みずっと触れたかった感覚に浸る。「遅くなったけど、 Happy Birthday, 翼、」 心地よい声でそう囁いてくれる彼女の首元で笑みを零す。けれどその至福の一時も読んで字の如く、束の間で終わってしまった。
「つーばさーっ!!」
「 は、 じめ?」
「を独り占めなんかさせねーぜ!」
感じていた温もりが急に離され、前方を見るとそこには一がいた。あまりの急な展開について行けていない翼。「みんなも祝いたいって言うから呼んだのよ。」 一に背後から抱きしめられているは嬉しそうに微笑む。
訳の分からないまま、に手を掴んで連れられていった見慣れたリビングにはB6が勢揃いしていた。