「ん、何だ?」
「保健室に行きましょう?」
「・・・・嫌だ。」
朝から少しおかしかった瞬の様子。いつもよりも、少しだけ顔が赤みを帯びていたから、体調でも悪いのかと本人に尋ねてみたけれど、何でもないと言うだけ。自分の体調管理は出来る子だと分かっていたので、本人がいうなら大丈夫なのかと思い、その時は何も言わずに一緒に授業を受けた。
バカサイユへ昼食を食べるために向かう途中、朝よりも覚束ない足取りだった。頬の赤みも他人が見ても分かるくらいまでに増していた。これはさすがにやばいと感じ取った私は、昼食を食べ終わった後、彼に保健室へ行くようにと言うのだけれど、
「体温を測るだけでも良いから、ね?」
「・・・高かったらそのまま寝かせるだろ。」
「当たり前でしょ。」
「なら、行かない。」
ああ言えばこう言って、保健室には行きたくないの一点張り。意思とは反対に体は立つのも辛そうな状態だというのに授業を受けると言って聞かない瞬。普段は保健室へ行く事なんて拒まないのに、こういう時だけは行かないから困りものだ。
「そんなふらふらな状態で授業受けても効率的とは思えないけど?」
「っ、確かに。」
効率的、と瞬が揺らぎそうな言葉を入れて説得しようとする。案の定揺らいでくれたのだけれど決定打にはならなくて、「やっぱり、行かない。」 なんて言って、紅くなった顔を背ける。そんな彼に可愛さを覚えつつも、倒れたりでもされたら私の身が持たない。(瞬が倒れるなんて考えたら気が気でない。)
「じゃあ、バカサイユでも構わないから少し休みましょう?」
「・・・」
「ね?瞬が倒れたら私が嫌なの。」
瞬を後ろから優しく抱きしめて、諭すように優しく頼む。すると、小さな声で 「・・・少し、だけだぞ。」 と瞬が言ったのを聞き取る。(ああ、良かった。) バカサイユにも確か救急箱はあったはず・・・うん、あった。そこから体温計を取り出して、瞬に差し出す。測り終えて数字を見てみると、37度8分。微熱とは言い難い体温であった。
「やっぱり、熱があるじゃない。」
「・・・医療費は家計簿に書きたくない。」
「またそんなこと言って。」
冷やしたタオルを横になっている瞬の額にのせて赤みを増している頬を触る。「の手、冷たい。」 なんて言って気持ちよさそうな顔をする。(弱った瞬もなかなか・・・・ああだめだめ、そんな事言ってたら瞬が拗ねてしまう。)
「じゃあ、私授業受けてくるから。安静にして寝てるのよ?」
「っ、・・・ああ、」
何か言いたそうにして、私を見送ろうとする。それに気付いて足を進める前に瞬の目線にまたしゃがみ込んで、「どうしたの、瞬。」 と何か言いかけて止めたその言葉を言うように促すと、微かに聞こえるか細い音で口を動かした。
「・・・ここに、いてほしい」
紅くした頬、潤んだ瞳、それに加えて滅多に聞かない瞬の甘えるような声。 これで折れるなと言う方が無理な要求であるくらいの瞬の行動。(普段の瞬も可愛いけれど、これはさすがに・・・)
「もう、瞬ったら。私がそういうのに弱いって知っててやってるのかしら?」
「? ?」
「大丈夫、ここにいるわ。瞬の手をこうやって握ってるから。」
だから、安心して寝て良いのよ? そう言うと、安心しきった顔で 「ありがとう、」 と微笑んで返してくれるものだから危うく色々なものが飛びそうになってしまった。(こんな弱った彼も可愛いなんて思った私はおかしいのだろうか。)