「ん、電話?」


自宅で睡眠を貪っていたの携帯に電話が入ったらしく、着信音が部屋の中に響き渡る。せっかく休みを満喫していたのに、なんて心の中で文句を言いながら、目を瞑ったまま携帯を探ってボタンを押した。


「    はい、」
「その様子だと、まだ寝ていたのかい?」


「まったく、君は」 そう言いながら笑い声を離れた所で立てるのは、私の恋人である鳳先生・・・もとい晃司さんだった。こんな時間に、なんて答えようとしたが、壁に掛けてある時計を見れば昼を過ぎる頃だったのでその言葉を喉の奥に引っ込めて他の言葉を引き抜く。


「わざわざどうかしたんですか?今日は確か当直の日だって言っていましたよね。」
「今日が何の日か知っているかい?」


私の問いを流して逆に質問を投げかけてくる晃司さん。そんな彼の問に答えようとカレンダーを見る。今日は3月14日、しかし何かイベント事があっただろうか。まだ寝ている頭で考えようとするが、当然のごとくそんな頭では全く答えは見つからなかった。


「何ですか、今日。」
「そういうと思ったよ。今日は3月14日、世の中ではホワイトデーという日かな。」
「ホワイトデー?」


ああ、そういえば、そんな日でもあったかな。けれどそれが電話してきたのと何の関係があるのだろうか。うつぶせの体を仰向けへと移して電話を持ち替えてながらそんなこと思っていると、電話の奥から、家の玄関から、「まあ!鳳さん、いらっしゃい!」 なんて声が聞こえた。  ん?玄関から?



「あ、こんにちは。すみません、携帯電話を持ったままで。」
「・・・晃司さん?」


電話越しで誰と話しているんだ、なんて疑問が浮かぶ。そうしたらまた向こうから「いえいえ、構いませんよ。あの子の電話でしょう?」と女の人の声がする。誰かの先生の声だろうか、それにしても私のお母さんそっくりな声である。


「晃司さん、携帯持ちながら相手に失礼ですよ。」
「君も寝ながら携帯を持つのを止めたらどうだい?」
「それは個人の自由・・・・ん?」


晃司さんに注意をすると、そんなことを返された。しかし晃司さんの声が二重になって聞こえるなんて、それだけ寝ぼけているのだろうか。 なんて思いながら、それにまた言い返そうと言葉を口にしていると私の部屋の扉が開く音を聞いた。その音につられて、自然とそちらの方に顔を向けるとそこにいたのは、携帯を持ってドアを閉めている晃司さんだった。


「・・・当直はどうしたんですか?」
「日頃のツケで葛城先生に頼んだよ。もちろん、相手の衣笠先生にもお願いしてね。」
「・・・そうですか。」


目の前に本人がいるというのに、電話越しに会話を続ける2人。最初にボタンを押して切ったのは彼の方で、テーブルにそれを置いてベッド脇に腰を降ろした。「バレンタインに貰った、お返しをしようと思ってね。」 私が質問をする前に、わざわざ当直を変わってまで来た理由を教えてくれる。


「何が嬉しいかな、僕の愛しい人は。」
「・・・何って、」


そんなことを急に言われても、今の私の頭ではまったく思いつかない。思案しながら彼の腰に手を回して抱きくと、「まだ眠いのかい?」  なんてため息をはきながらも頭を撫でてくれる。(そしてきっと顔にも笑みを浮かべている。) やっぱり心地良いなあなんて思いなが、まばたきをゆっくりしていると、急に良い考えが浮かんだ。「晃司さん、」


「何でも良いですか?」
「んー、できるだけ要望には応えようと思っているよ。」
「じゃあ、一緒に寝てください。」


私の簡潔な要望に、撫でてくれていた手を止めてしまう晃司さん。心地よかったのに何で止めるんですか、そんな顔をしながら見上げると晃司さんは驚いた顔をしていた。そんな彼の驚いた顔を見ると、普段見る事のできない顔だからだろうか、何だか嬉しさがこみ上げてくる。


「晃司さんの腕枕って、心地良いんですよ。だから早く、ね?」
「ふう、まったく君という人は。  敵わないよ。」


そんなことを言う彼がひどく穏やかで優しい顔をしていたから、これは了承の意として取っても良いのだろうと勝手に解釈をして、彼をベッドの中へと引き込んだ。

それは、甘い甘いお返し?

これでは、僕も嬉しいのだからお返しにもならないと思うよ?愛しくて止まない、僕の