あの人の邪魔はしたくないので今まで何も言わなかったけれど、さすがにこう何日も会えないのはありきたりな表現だが(そしてまさか自分が使うなんて思ってもみなかったけれど)心の中に何かぽっかりと穴が空いたような感じになるわけで。さて、普通にあの人のお家の前で待っていても面白くない。(しかもきっとあの人はそんなことしたら風邪をひいてしまうと言って怒る。)
**
「んー、やっぱりいけるもんだなあ。」
あの人の家が駄目なら聖帝に乗り込んでしまおう、と安易な考えで聖帝へと向かったのは良いのだが、卒業生として行ってしまってはすぐにばれてしまう。それではやはり面白くないから家にまだ置いてあった聖帝の制服を着てきたのだが、まだ卒業して間もないからか全くばれていない。
「おや? ふふ、お久しぶりですね。」
途中衣笠先生に会って微笑まれて、「彼も、最近落ち込んでいたようですよ。顔には出さないですけどね?」 と言われた。もとより、衣笠先生にばれない自信なんてなかったし、それよりもあの人も落ち込んでくれているのだと思うと笑みが自然と零れてしまう。
**
「鳳先生、あの、分からないところがあるのですが。」
生徒が先生に質問をするかのように後ろから声をかける。「ん、どこかな?」 なんて言いながら振り向いたその顔は微笑みから一瞬にして驚きの顔に変わった。「お久しぶりです、鳳先生。」 なんて、してやったりの顔をしながら彼に言うと、「さん、どうしてここに、いるのかな?」 と繋ぎ繋ぎで言葉が返ってきた。
「あまりに貴方に会う時間が少なかったから、では理由になりませんか?先生。」
「全く、君は・・・」
「私を誘惑するのが上手すぎやしないかい?」 そう言って我慢できない、とでも言うようにそっと、けれど強く私を抱きしめてくれる。その久しい抱擁にゆっくりと目を瞑る。彼の腕の中は本当に心地よい、そう思いながら彼に身を委ねていると額に、何か当たる感触がした。
「会う時間が少なくて・・・その続きを言ってはくれないのかな?」
「それは、貴方と同じですよ。鳳先生?」
「私と同じ、では答えになっていないよ。」
「ついさっき、衣笠先生にずいぶんと落ち込んでいたとお聞きしましたけど?」
「・・・ふう。やはり、君には敵わないね。」
唇が触れそうな距離で、そんな会話をする。結局、彼が根負けてひと息つきながら言葉を漏らす。困った顔をする彼も魅力的だが、やはり久しぶりということもあってか、笑顔の彼も見たい。「もちろん、寂しかったですよ?晃司さん」 そう言って軽く彼の唇に自分のそれを当てる。すると、彼はまた驚いた顔をした。(楽しいなあ。)
「ふふ、晃司さん、さっきから驚いてばっかり。」
「・・・君が、驚くことをするからだろう?」
「だって、晃司さんが、 ん、」
あまりにも愛おしくて、と言おうしたのにそれは彼からの口付けで言えずじまいになってしまう。角度を何度も変えられて、息をすることさえままならないようなキス。いつの間にか彼に腰を支えられ、気付いた時には彼のイスに座らされてしまっていた。最後にリップノイズを立てられて唇が離される。
「本当は、僕の方から行くつもりだったんだけどね。」
「ふふ、私の方が少し先でしたね。」
微笑みながらそう言うと、彼は「もう、我慢できないのだけれど、どうしようか?」 なんて耳元で囁いてずるい聞き方をしてくる。彼の机を見るとどうやら今日の書類はもう終わっているようだ。そして明日は2人とも休日だ。(それを狙って今日ここに来たのだけれど。)
「早く、一緒に帰りましょう?私も、もう限界ですよ?」
そう言って、目の前にいる愛おしい人に思いきり抱きついた。