「それで、この原稿なんですが、これは次の週の・・・先生?」
「    うん、」
「・・・うん、じゃないですよ。話を聞いてください。」


いつものように編集長と締め切り日を確認してやってきたのは斑目先生の自宅。先生は人だかりを極端に嫌うため、こうして週に一度は先生の自宅へと通わせてもらっているのだけれど、毎回の如く先生は私が話している内容を子守歌にするかのようにして身体を大きく揺らして聞いているのか、聞いていないのか、今にも寝てしまいそうな返事をしてくれる。


「先生、斑目先生。」
「   ん、」
「次の締め切りはいつでしたっけ?」
「    来週、の、 天気が良い、日?」
「・・・そんな曖昧な締め切りがあっては困ります。」


訳の分からない締め切り日を作って返答をしてくる先生に冷静に反応を返せば、「む、  さん、つれない。」 なんて先生はつまらなさそうに言ってきた。しかも天気が良い日だなんて、確か予報では来週ずっと雨マークが続いていた記憶があるのだけれど(・・・分かっていて言ったのだろうか。)


「じゃあ、   いつもよりも、紅茶が美味しく感じられる、日?」
「・・・先程よりも曖昧さが格段に上がったと思うのですが。(つまりは先生の気分次第じゃないか。)」


全く変わらないそんな先生の言葉に少々呆れながら返答すれば、「   むう、伝わってない。」 なんて少し拗ねた様子でそんな事を言ってくる先生の姿が目に入る。けれどそんな顔をされたってテレパシーなんて技能を私は持っていないから、何がどう伝わっていないのか全く分からないわけで。(というか、今ので何をくみ取れと。)


「また締め切りが近くなったら来ますけれど・・・」
「   あ、分かった。」
「・・・何が、ですか。」


できれば、それまでに終わらせていただけると。 なんてそれこそ先生がそんな事をしてくれた日には雨が降るんじゃないだろうかという願望を伝えようとしたのだけれど、思い出した、というよりも何か思いついたというような顔を浮かべた斑目先生。何だか嫌な予感がしてならなかったのだけれど、つい聞いてしまう私も私である。けれど口にしたら最後、その言葉はもう先生の耳へと伝わっていたようで、眠たそうにしていたはずの斑目先生は私の方へと視線を向けて、綺麗な笑みを浮かべて楽しそうに声を響かせたのだ。



さんが、僕の事を、名前で呼んでくれる日。」

晴れか雨かは、君次第?

その時だけは、疑問符をつけることなく正解だと言わんばかりの声色だった。





title by farfalla / ちらつくのはべリー色
リライト様 / 選択課題・カップリングパロディー 「小説家と担当者」より