ずらりと大量の本が並べてあるその棚を見て、タイトルを目で追っていく。さすが聖帝と言うのが正しいのかは分からないけれど、この聖帝の図書館はとても広く、そしてその広さに見合っただけの本の数がある。その種類豊富な品揃えに、ついここにいる時間が長くなってしまうのだけれど、まあそれは仕方の無いことだ。そして、今日も今日とて、放課後になった今、私はいつものようにここへと足を運び入れた。
「(今回は、このジャンルにしてみるかな、)」
ふらふらと棚と棚とを行き来しながら、漸くジャンルを決める事が出来た。今日は彼の補習を待つつもりだったから、少々選ぶのが遅くなっても構わないだろうとゆっくりと巡っていたけれど、少々時間を取りすぎたかも知れない。腕時計の針を確認して苦笑を漏らしてしまいながら、再度棚へと視線を戻し、ふと目に入った本を取ろうと手を伸ばした、 そんな時、
「 これよりも、面白いがあるとこ、僕知ってるよ、 。」
背表紙に手を掛けそれを取ろうとした瞬間、私の手の上へと載ってきたその手。その大きな手は、くいっと前へと手を押して、再度棚へと取ろうとしていたはずの本を強制的にしまい込んでしまった。
それと同時に聞こえてきた、聞き慣れた優しいその声に、私はここに彼が居ることを喜んで良いのか、ここに居ることを咎めるべきなのか迷いながら、返事をするためにゆるりと口を開いた。
「・・・補習はどうしたの、瑞希?」
「この前の補習よりも、頑張った。」
「・・・抜け出した事には変わりないでしょう。」
頑張った事を褒めて、なんて犬みたいに首元に擦り寄ってくる瑞希は、どうやら補習を抜け出してきてしまったらしい。まあ、彼にとっては補習をすること自体が意味を成さないのかも知れないけれど・・・それにしても、途中で抜け出すなんて。先生が困ってるわよきっと、なんて彼に言葉を続ければ、本人は全く気にしていないようで、
「大丈夫。 今日は、と一緒に居る日、だから。」
「ふふ、どんな日なの、それ?」
「僕とが、ずっとひっついてる日。」
「・・・あ、間違えた。 今日は、じゃなくて、今日も、だった。」 私が潰れない程度に身体を預けながら、瑞希は楽しそうに声を弾ませてそんな言葉を紡いでくる。本当は、瑞希が補習から抜け出して瑞希を見つけたら補習に出るように説得して、と悠ちゃんに言われていたんだけど、嬉しそうな声でそう紡がれてしまえば、つい、私もそれに流されてしまいそうになる訳で。
「 、ここよりも、が面白いって思う本がある場所、 僕知ってる。」
「あら、どこにあるの?」
「 ふふ、僕の部屋。この前、も好きそうな本、見つけて買ってみた。」
「だから、、ね? 一緒に僕の家、行こ。」タイトルとその内容を聞けば、確かに私の好きそうな本だった。それなら、貸してくれれば良いのに、なんて口にすれば、「それは、だーめ。 」なんて妙に可愛らしく、却下の言葉を返されてしまった。
なんとか悠ちゃんを助けてあげたい思いはあったのだけれど。彼の部屋にあるらしい、その面白そうな本がひどく気になったし、・・・それに
「 今なら、僕を膝枕できる、おまけつき。」
なんて、少しおかしな、けれど可愛いなんて思ってしまうおまけまで付けられてしまえば、もう私が彼の部屋へと行かない理由なんて見つかるはずも、無いわけで。(・・・まあ、おまけなんて付けられなくとも、きっと)