「(あ、スペル間違っちゃった。)」


B6と呼ばれている彼らが悠里先生の粘り強い教育のおかげでなんとかサボることなく授業に出るようになったそんなある日の英語の時間。けれど授業に出る事と真面目に授業を聞くという事とが比例して良くならないのが、B6がB6である所以な訳で。ホワイトボードに書かれていくその英文を書き写している私の隣で一応は教科書を開いている彼も、その1人だったりするのだけれど。


「ンー、もうちっと長い方が良いかァ?」
「(・・・何やってんだか。)」


「あァー、ケド、ここ長くすっと・・・」 小さな声で英語の授業には関係ないだろうと思わせるようなそんな言葉を呟きながら、ノートにすらすらと何やら文字を書いている清春。何をしているんだろうと思いながらちらりとそのノートを覗けば、何やら新しい悪戯の道具を製作中のようだった。

先生が見たら、その頭脳を少しだけでも勉強に!なんて言いそうだな、なんて思いながらそのノートに書き込まれている図形を見る。因みに、教科書にも以前の悪戯の設計に関するメモがちらほらと書かれてあった。ああ、あれはあの時の悪戯か・・・なんて思い起こせる辺り、私も意外と清春の悪戯に遭遇しているらしい。・・・まあ、私が悪戯に引っ掛かったというよりは周りに居た人が引っ掛かる、という場合が多いのだけれど。(・・・特に瞬とか、ね。)


「ここを、こうしてみたらどう?」
「・・・ンァ?」


どうやら今回の悪戯は以前の悪戯の改良版を作ろうとしているらしい。何やら見覚えのあるその図形と、それとにらめっこをして珍しく悩んでいるらしい清春と見て、思わず、隣からその図形に文字を書き込んでしまう。あ、先生に悪戯の手伝いは程々にって言われてるんだった、なんて思い出した時には既に遅かったようで。清春の顔を見やれば、そこにはもう悪戯が成功した時の、あの嬉しそうな笑みが浮かんでしまっていた。


「・・・おォ、そうすればここが上手い事いくなァ。キシシっ、さすがオレ様のだぜェ!」
「ふふ、それはどうも。 他は大丈夫なの?」


でも、結局私自身も彼の笑みに弱いから、「っとなァ、あと、ここが上手くいかねェんだよなァ、」 なんて言って、その設計図を見やすいように私の方へと少しだけずらしてくれる清春を、ついつい手伝ってしまうのだけれど。・・・そんな事を思いながら、あー、ここはこうし方が。いやでもそうすっとだなァ。なんて清春とつい悪戯設計で論議をしていれば、どうやら小さくしていたつもりだったその声が、少しずつ大きくなってしまっていたらしく・・・


「・・・清春くんに、ちゃん?」
「ん?先生、どうし・・・・あ、」
「ど、どうしたもこうしたもないでしょうっ!!!」


「今は授業中です!もうっ、授業に出てくれるようになったのは良いけど、もうちょっと真面目に受けてくれると先生嬉しいなっ!!」 先生に話しかけられた時に、ようやく今が授業中であることを思い出したのだけれど、やっぱり既に遅くて。あーやってしまった、なんて思いながら、先生へとまずは謝って、一応弁解をしようと口を開こうとしたそんな時、けれど私の声よりも先に、


「ていうか、キヨポペラずっるーい!!とくっつきすぎだよーっ!!」
「ご、悟郎くん!!い、いやそこも問題だけど、主点を置くべきなのはそこじゃなくてっ、」
「ヒャハハっ!羨ましいダロ!!でもォ、ここはオレ様専用の場所だぜェ!」


「誰にも、この場所は譲らねェし、渡さねェ!!」 そういえば、悪戯論議で身体を近づけてたんだっけ。どおりで清春との距離が近くなっているはずだ。 悟郎の一言に1人納得していると、いつの間にやら、清春の手が私の腰に回っていたらしい。今更ながらに気付いた、服の上からでも伝わってくるその手の温かさを腰にのんびりと感じていれば、悟郎のそんな言葉に清春は冗談なのか本気なのか、先生のツッコミを何ともなしにスルーすると、悟郎へと、いや、教室全体に響かせるように、そう言葉を返した。


「なァ、 ?」


さて、先生が泣いてしまう前にどうにかしないとなあ、なんて清春と悟郎の会話を聞きながらゆるりとそんな事を考えていると、ふわりと私の耳元へと響いてきたのは私の名を紡ぐ清春の声で。ちらりと彼の顔を見れば、とても楽しそうな笑みを浮かべていたから、あまり良い予感はしなかったけれど、・・・でも、言わずもがな、私も愛しい人には弱いから、


「うん?どうしたの、きよはっ、」
「 キャー!!!」
「きゃあ! ちょ、ちょっと清春君っ!?」


返事をしようと、その口を開いてその名を紡いでいたそんな時、清春、と最後まで名が紡げなかったのは、私に返事を求めていたその張本人である清春がその口を自分のそれで塞いできたからで。
悟郎が叫んだんであろうその声が教室に響いたり、「今は授業中だって何度言ったら・・・っ!」なんて先生の声が教室を包み込んだりしているけれど・・・叱られてる本人はというと、


を愛していいのは、オレ様だけなんだぜェ?」


は、オレ様のモンなんだからな。」 何処吹く風で、私にそんな愛しいなんて感じてしまうその言葉を紡いでくるものだから、困ったものである、本当に。(清春も、  ・・・私も。)

落書き済みの教科書

「ううっ、B6が出てくれるようになったのは良いけど、出たら出たでまた問題がっ、」 なんて泣いてる先生にはまた後で謝っておこうと思います。





title by Seventh Heaven / 落書き済みの教科書(なんでもない日々20題 )