「もちろん、お前もオレ様と一緒にアメリカ生活だゼェ?」 なんて当たり前のように言われ、アメリカへと半ば強制的に連れてこられて早数年。連れてきた張本人はといえば、着々とNBAプレイヤーとしての名を挙げていき、今では彼自身のメーカーが売られるようになるまでになっていた。


「清春、もうそろそろ起きないと。」
「ンだよ、  もうちっと、寝かせろ。」


今日も例外ではなく、試合が入っているからこうしてその時間に合わせて余裕を持たせて起こそうとしているのだけれど、昨日が遅かった所為なのか彼はなかなかベッドから起き上がりたくないようで。何とか彼の腕から抜け出して昼食を作ったっていうのにこれではその昼食も冷めてしまい、さらには試合に行くのもギリギリになってしまう。


「ほら、行く前に何か食べないときついわよ。あっちで食べるにしても、そろそろ起きない、わっ。」


前屈みになりながらそう声を掛けながら清春の身体をぽんぽんと叩いていれば、覚醒したのか寝惚けていたのか布団の中から腕だけを出してきた彼はすぐに私の腕を見つけ出すとそのまま私の腕を掴んで引き込んでしまう。当然の事ながら、急なそれに対応しきれなかった私は清春の元へと身体を勢いよく沈ませていく事しかできなくて。


「もう、   清春?」


引き込まれてしまったと思えば、もぞもぞと器用に動きながら彼は私の首元へと顔を擦り寄らせてきた。「  何で、オレ様の腕ン中から出てンだよ。」なんて不機嫌そうな声でそんな言葉が紡ぎ出される。「今日は試合でしょう。だから、昼食を作っていたのよ?」 睡眠を助長すると理解しながらもつい彼の頭を撫でてしまいつつ彼にそう返事をしていると、ベッドテーブルに置いていた清春の携帯が音を立てて鳴り始めた。彼にそれを伝えれば返事をするだけでそれに出る気はないらしい。けれど大事な事であってはいけないから、仕方なく私が出ることにしたのだけれど、その携帯から聞こえてきた声はずいぶんと聞いたことのある声だった。


「清春!出るのが遅いではないか!」
「   翼?」
「ん?その声はか?」


どうやら電話をかけてきたのは翼だったようで、あちらも清春ではなく出たのが私だと理解すれば「全く、清春の奴はまだ寝ているのか?」 なんてため息を吐きながらそんな事を言ってくる。起こそうとはしているんだけどね、なんて返答しながら、彼に電話をしてきた用件を聞く。


「ああ、今日の清春の試合が、ファイナルの試合だと聞いてな。一も休みだと言っていたから、2人で見に行くということを伝えるために電話したのだ。」


「まあ、したところで清春がどうする訳でもないだろうが。」 なんて笑いを零しながら用件を言ってくる翼に、思わず私も笑みを浮かべてしまう。翼も一も忙しいだろうに、こうして定期的にアメリカに来ては彼の試合を見に来てくれる。そんな2人に嬉しさを感じながら翼と電話を続けていれば、私に抱きついていた清春がまたも突然私の腕へと自分のそれを伸ばしてきて、


「うん、それでそっちは  って、清春?」
「カベ、」
「  ああ、清春か。何だ?」
「オレ様のプレイ、しっかり見とけよォ?」
「??おい、きよは、」


私から自分の携帯を取ったかと思えば、自分の言いたい事だけを言って電話を切ってしまった清春。 何をしてるのよ、全く。携帯をそのままベッドへと放置し、再度睡眠体勢へと入った清春にそう声をかければ、「オレ様が目の前にいるってのに、長々と話すンな。」 なんて返ってきたそれは何とも可愛らしいそれであって(ふふ、まったく。)


「ほら、清春、起きて?私も用意しないと試合に遅れちゃうわ。」


そう言って彼の身体を起こすように背中を叩いて促せば、ようやく起きる気になってくれたのだろう、ゆっくりと身体を起き上がらせる清春を見ながら私も昼食をテーブルに並べようと起き上がろうとすれば、彼がそれをさせてくれなくて。両肩に手を置かれいつの間にか私に馬乗り状態になっている彼を見上げれば、そこにいる彼の顔にはひどく楽しそうな笑みを浮かべていて。


「オレ様だけに、見惚れてろよ?」


「なァ、?」 返事をさせたいのか、それともさせなくとも分かっているのか、彼はそう言った後に、私の言葉を共に飲み込ませてリップノイズをわざとらしく立てて私の唇へと自らのそれを重ねてきたのであった。

トリッキーなその瞳に

のぞき込めばのぞき込むほど、その巧妙さに参ってしまうのだ