4月18日、一の要望で翼が用意した動物園へとB6と私は来た訳なのだけれど、もちろん一の誕生日を祝いたいと思っているし、動物園で彼がしたいと言ったのならそこで祝っても良いと思っている。けれど、さすがに・・・
「( 眠い、)」
瑞希でなくとも休日の7時過ぎにたたき起こされれば、その言葉をつい漏らしてしまうのも仕方のない事だと私は思うのだけれど。たたき起こした当の本人である一はというと、それはもう幸せそうに動物たちと一緒になって遊んでいる。他の彼らを見ると、祝う気があるのかどうかも分からないほどに各々がしたい事をしていた。まあ、私も人の事は言えないのだけれど。
「・・・、お前何を枕にして寝ているんだ。」
「ああ、瞬。何をって、 ライオンでしょう、これ。」
「 でしょう、じゃないだろ!何でお前はそんなにも暢気なんだ!!」
「ライオンだぞ、百十一の王なんだぞ!?」 なんて慌てて言っているからか、素で言っているのか、どうも意味を取り間違えているらしい瞬の言葉に気づきはしたけれど、それを訂正するのも眠たくて億劫だったのでそのまま会話を続ける事にした。(たぶん、悠ちゃんが訂正をしてくれるに違いない。)
「ちゃんと、ライオン君には了承を得たのよ?」
「そういう問題かっ!!」
「大丈夫、食べられる心配はないから。ね、ライオン君。」
横になっているライオンのお腹に頭を預けている私はそう言いながら、その子の首元を手で撫でてやる。するとライオン君からは了承をするような、声が発せられた。すると瞬も納得したのか、「まあ、それなら良いが・・・ほどほどにしろ、もうすぐ昼の時間だ。」 なんて教えてくれて昼食の場所へと歩を進めていった。先程まで9時くらいかと思っていたのに、どうやら私は結構な時間をライオンのお腹に頭を置いて過ごしていたらしい。
「あ、っ!!」
「 一?」
さすがにライオン君にも悪いと思い、ライオン君にお礼を言って立ち上がろうとすると、動物を1匹だけ連れてこちらに向かってくる一の姿が目に入った。動物の少なさに少し驚いたけれど、そういえば昼食の時間なんだっけ、と瞬の言葉を思い出して理解する。
「そういえば、まだ言ってなかったわね。 誕生日おめでとう。」
「おお、サンキューな!」
嬉しそうに笑う一に、ライオン君も声を上げてどうやら祝ってくれたらしい。そんな様子に「おおっ!!ライオンじゃねえか!」 と興奮した様子でそのライオンに抱きついた「ふさふさだなーおまえー。」 なんてたてがみを触りながら言う一は至極幸せそうだった。
「ふふ、動物園は楽しいかしら?」
「そらもう、すっげー楽しい!!」
本当に楽しそうに言う彼を見ていると、先程たたき起こされた怒りもどこかへと飛んでしまう。敵わないなあ、なんて微笑みながら彼らを見ていると、ぱっと一は私の方に視線を合わせて来た。「あのさ、!」 なんて少し照れくさそうに言葉を紡ぐ。
「どうしたの、そんな急に改まって。」
「の、 」
「うん?」
「だけの、俺へのプレゼントはないんか?」 小さい声で、聞こえてきたそれは何とも可愛らしい言葉で。照れながらもこちらを見てそう言ってくる彼がなんとも愛おしくなって、思わず彼を抱きしめてしまう。
「?」
「1つ、何かお願いを聞くっていうのはどうかしら?」
「1つ・・・何でも良いのか!?」
私の提案にキラキラと嬉しそうに目を輝かせて一はそう言ってきた。 「ええ、何でも良いわよ?」 なんて笑みを浮かべながら彼に返事をする。「そっか、1つか。」 そう言って、少しだけ考える一。けれど彼の顔にはどれにしよう、と悩んでいる顔ではなく、どちらかというともう答えを決めているけれど、緊張してか恥ずかしいのか言い淀んでいる様子だった。
「ふふ、一。言ってみて?」
「 怒らないか?」
怒ることを心配しているなんて一体どんなことをお願いする気だろう、と思いながらも、きっと彼が案じていることは杞憂に終わる気がしたから、「怒らないわよ。」 となるべく優しく答える。
「絶対?」
「ええ、絶対。」
私の言葉を聞いて決心したのか、「よし、」なんて言うと、彼は突然肩をがしっと掴んできた。何だろうと思い彼の方を見上げると、そこにある一の顔は先程の子どものような愛らしさいっぱいの顔ではなくて。
「俺な、 が欲しい。」
真剣な顔で言ってくれるそれ何とも嬉しい言葉であって。
「ふふ、私はもう貰われていた気でいたのだけど?」 微笑みながら少しおどけた風にそう口にすると「それじゃ、俺を貰ってくれ。」 なんて私にキスを降らせながら彼は嬉しそうに囁いた。