「うん?一、どうしたの?」
放課後になって、一とバカサイユへ向かう。他愛のない話をしながら足を進める。それから、突然 「良い先生だよなー。」と一が呟くのが聞こえた。その目の先には誰かを捜している悠里先生の姿があった。
「ああ、悠ちゃん?」
「悠ちゃんって・・・一応でなくてもあの人は先生だぞ。」
足を止めて、先生の方を見る。まっすぐで、今時見ることのできない、素晴らしい先生だと私は思う。生徒に媚びる事なんかなく、真正面からしかこない先生。一達はきっとそれが気に入ったのだろう。(もちろん、私もその1人だ。)
「つうかさあ、最近と先生、一緒にいすぎだよなー。」
私が微笑みながら先生を見ていると、一がそう口を開いた。何を言い出すかと思えば、急に何でそんな事を聞くのだろうか。確かに、最近は悠ちゃんの所に行ってお話をすることが多い。そういえば、この前家に呼んで食事をしたっけ?(楽しかったなあ。)
「ええ!?俺の知らないところでそんなこともしてたのかよ!」
「? ええ、とても楽しかったわ。」
そう言うと、一は顔をしかめて 「最近、と一緒にいる時間が少ないと思ってたら・・・」 なんて独り言を呟く。それがなんだか可愛くて思わず笑ってしまう。(そう言えば、翼が「もっと一を構ってやれ。俺が疲れる。」 とか何とか言ってたなあ。)
「何で笑うんだよ、こちとら真剣だったって言うのに・・・」
「ふふ、ごめん。なんだかおかしくって。」
可愛いからなんて言ってしまえばさらに拗ねてしまうので、心の中にしまっておく。さあ、一の機嫌をこれ以上損ねないためにも、止めていた足をバカサイユへと進めよう。一に声をかけて、階段を下りていくと最後の段で踏み外してしまった。
「わっ!!」
「っ!あぶねっ!!」
衝撃に耐えようと自然と目が閉じる・・・・けれど来るはずの衝撃はなく、代わりに温かい何かに包まれていた。目を開けると、そこにはやっぱり一の顔がいつもより近くにあった。
「ありがとう、一。助かった。」
「ったく、気をつけろよ。怪我がなくてよかったものの・・・」
一の両足の間に私の体が収まっていて、ちょうど抱き込むような格好になっていた。さすがに校内でこれは、と思いお礼を行ってすぐに立ち上がろうとすると、それは一の両腕によって阻まれてしまった。(がっちりと抱きしめられていて立ち上がれない。)
「一、バカサイユに行こう?」
「もうちょっと、良いだろ?」
もうちょっと、を感じていたい。 なんて嬉しいことを言ってくれるものだから、ここが校内と言うことも忘れて思わず一にキスを落とした。(結局、私は彼に敵わない。)