「・・・本当に天十郎君なの?」
まだ眠たいのだろう目を擦りながらゆらゆらと首を揺らして私の膝の上に座っている天十郎を見て驚いた表情をしている真奈美さん。「残念だが、これは小さい頃の天そのものだ。」なんて説得力のある言葉を千聖が口に出す。千聖には昨日の夜に事のあらましを伝えておいたのだけれど、その後の天十郎といったらずっと千聖と遊んでいて(千聖が疲れていくのが目に見えて分かったのが気の毒だったけれど)
「天、みんなに名前を教えてあげて?」
「 うん、 おれさまは、なるみあ、てんじゅうろ、う でぇ」
「ふふ、よくできました。」
眠いのを我慢して舌足らずながらも、自分の名前を一生懸命に言うものだから、思わず彼の頭を撫でて褒めれば、嬉しそうに笑みを浮かべてくれる天十郎。そんな彼の名前を本人から聞いた3人は信じがたいながらも、ようやく納得してくれたようで。
「うーん、こんな小さい天十郎君を授業に参加させるわけにはいかないわよね。」
「でもティンカーちゃん、アホサイユに1人でこんな幼気な天ちゃんを置いておくわけにもいかなくない?」
「そうですぞー!てんてんが寂しくて泣いちゃうかもしれないナリ!」
「可能性は十分にあるな。」
ああだこうだと言って、何かしら対策を立てようとしている彼ら。けれど思うように事は運ばず、真奈美さんも授業が詰まっているらしい。授業に連れて行くのも混乱を避けるためにはしない方が良いし、他の先生に任せるのもやはり心配である。堂々巡りで悩んでいると、真奈美さんが「うーん、じゃあ仕方ないから」と話を切り出した。
「4人で交代して天十郎君のお守りをすることにしましょう。」
「うん、ティンカーちゃんの言うとおりで良いんじゃないかな。」
「うんうん、さんせいだピョン!」
「 仕方ないか。」
理事長にこれが見つかってしまえば大事になりかねないからくれぐれも内密に、と真奈美先生の言葉を受けて返事をする彼ら。良いのか悪いのか、彼らが普段から授業をサボっているから1時間くらい抜けてもまたかと済まされるのが今回ばかりは助けになりそうだった。
「天、ちょっとお話きいてくれる?」
「 うん、なんでぇ?」
天十郎の身体を自分の方へと向かせて、先程の事を説明する。とりあえず最初の授業はアラタが面倒を見るという事になったからそれを天十郎に話していれば、天十郎は話の途中で急に私にしがみついてきて。
「どうしたの、天?」
「 と、いっしょ」
ほとんど眠ってしまいそうな様子で小さな声で放った言葉はまた何とも可愛らしい言葉で。その小さな腕を懸命に私の背中へと回して離れないようにしてくる姿に、折れないわけにはいかなくて(もう、天ったら)