「瞬、にんじんも食べないと、ね?」
「・・・うん。」


九影先生と悠里先生に事情を話した後、お弁当を持って来ていたのでバカサイユで食べようとそこへ行った良いけれど、2人じゃ食べきれない量を作ってしまったので、一を呼んで3人で食べる事にしたんだけど・・・子どもというのには、やはりそれなりの好き嫌いというものがあるわけで。


「駄目だぞ、瞬!好き嫌いなんかしたら!」


瞬の前でばくばくと平らげている一は口に含みながらそう言っているものだから、注意をしてくれるのは嬉しいけど、これではまるで説得力がない。けれど、自分の作った料理をこうやって美味しそうに食べてくれるのはやはり嬉しい事で。


「一、美味しい?」
「ああ、めちゃくちゃ美味いぜ!さすがだな!!」
「ふふ、ありがとう。」


満面の笑みで言われたから、こちらも微笑んでそれに応える。一の方を見ていると、口の周りにそれはもう盛大についていたから、「これじゃ、瞬の方がマナーはなってるわよ?」 なんて言いながら、ハンカチでそれを拭き取る。「うるへー!美味いんだから仕方ないだろ!」 そう言われてしまえば、こちらは何とも言えなくなるわけで。


「・・・・、」
「うん?どうしたの、瞬?」


くいくい、と瞬に袖を引っ張られて視線を一からそちらに向けると、瞬は下を向いていて何だか寂しそうな顔をしていた。「瞬?」 名前を呼んで促すと、瞬は服をぎゅうっと掴みながらぽつぽつと話し始めてくれた。


「好き嫌い・・・だめ?」
「うーん、駄目じゃないわよ?誰だって苦手なものはあるから。」
「でも、はじめのこと、」
「一がどうしたの?」
「・・・嬉しそうに見てた。」


瞬は意外なところをよく見ていて、きっと自分だけ除け者のように思ってしまったのだろう。それで、こんなにも泣きそうな表情をしているのだ。「これたべたら、喜ぶ?」 なんてその表情のまま見上げてくるから、「うん、食べてくれたら嬉しいかな。」 けど、瞬が嫌いって訳じゃないのよ? そう言って抱きしめると瞬は小さな声で「うん、」と頷いてくれる。


、見てて。」


顔を上げて、また自分のフォークを持って意を決したかのようににんじんを見つめる瞬。一も向かい側から「にんじんは美味いんだぜ!頑張れ、瞬!」 なんて言って応援をしてくれる。一の声が効いたのか、瞬はそれに頷いて目を瞑ってそのにんじんをぱくっと一口に食べた。


「(ぱく、)   食べれた!」
「うん、良くできました。」


そのにんじんを良く噛んで飲み込むと、瞬は嬉しそうにこちらを向いてくれる。「、うれしい?」 抱きつきながらむくっと顔を上げ、そう訊ねてくるから私は瞬を思いっきり(それでもきつくないように)抱きしめた。

かいぬしのへんかにびんかんです

うん、とっても嬉しい。   ほんとうっ?   うん、本当。   えへへ。     ・・・わんこ、がいる。


title by リライト / かいぬしのへんかにびんかんです(珍獣の飼い方10の基本)