「・・・こういう時は何て言ったら良いんだっけ?」
悠里先生と少し話してからバカサイユへと足を向けると、そこにいたのは清春にそっくりな子どもだった。いや、そっくりなんてものじゃない、昔から清春を知っているけれどこれは清春そのものに見える。幼い頃の清春にそっくりだった。
「清春?」
「う、ん、」
ソファにで気持ちよさそうに寝ている清春にそっくりな少年に、とりあえず彼の名前を呼んでみる。すると寝言だか返事だか分からないような返答をされた。とりあえず、この子が起きるまで何か原因につながるようなものを探そうと辺りを見回すと、目の前の机に紅茶が置いてあった。・・・・まさかとは、思うけど
「・・・でも、これしかあり得ないよね?」
飲んだ形跡のあるティーカップには普通の紅茶が入っているように思える。色も何の変化もない、いつもバカサイユで飲んでいる紅茶の1つだし、香りだってそうだ。真壁財閥がまた何か発明したのだろうか、いやでもこれを使って何をするんだ?・・・・いや、彼らにそれを問うべきではないのだろう。また翼の思いつきだろうから。それにしても上手く作りすぎな気もする。
「瑞希が一枚噛んでるな。」
瞬間的に浮かんでくる瑞希の顔。大方、廃棄になったそれをいじくってたら出来たのだろう。そしてうっかりしていた事に、それをそのまま放置してしまったとかそんな具合だろう。(こういう勘は当たる。)
まあ、これが少年だとしてもそれが清春には変わりないのだから、とりあえず起きるまで待ってみようと思う。清春が寝ているソファの目の前に腰を下ろし、しゃがんで彼の顔を見る。しかし、こうして間近で見てみると・・・
「やっぱり、可愛いなあ。」
「 すぅ、」
さすが清春と言ったところか、その幼さがありありと出ている顔を見れば見るほど愛おしさが増していくわけで、その柔らかい頬に指ですっと触れてみる。案の定、それは弾力があってなんとも言えない柔らかさだった。
「気持ちいい、」
「んぅ、 ぅあ?」
「あれ、起こしちゃった?」
「 だれ、だァ?」
つんつんと頬を触っていると、どうやら夢から現実の世界へと戻ってきたらしく、小さい手で目を擦りながらこちらに視線をむける。私の顔を覚えてないとなると、これを飲むと記憶までなくなってしまうのか。(まったく、瑞希は変なところで完璧にしようとするんだから。)
「って言うの。あなたのお名前は?」
「・・・せんどー、きよ、はりゅ、」
まだ眠いのか少し舌足らずに自分の名前を言う清春。(その言葉にさえ、可愛さを感じてしまう。) そんな私の気持ちをよそに、再び眠ろうとソファに横になろうとする。けれど、時間が時間なのでこのまま放置するわけにもいかない。幸いな事に明日から夏休み、そして清春は私の家で過ごすともう家族に言っているらしい。
「、」
「ん?どうしたの、清春?」
「 だっこ、」
連れて帰るか、とそう思った矢先のこの台詞。手をめいいっぱい広げて、今にも閉じそうな目を一生懸命開いて私を見上てくる清春。 私の中の理性ががたがたと音を立てて崩れ落ちていくのが分かった。(普段の清春がああなだけに、それは私にとって大打撃だった。)
まずはかわいがってきにいってもらいましょう
ほら、おいで? んぅ、(ぎゅう) ああ可愛い(普段も可愛いけれど、こっちも破滅的に・・・) 、 ・・・夏凛さんや冬哉さんの気持ちが分かるな。(こんな子がいたらほっとくわけにいかないものね。)
title by リライト / まずはかわいがってきにいってもらいましょう(珍獣の飼い方10の基本)