「・・・は、じめ?」
「ん?ねえちゃん、だれだ?」
自分よりも少しだけ小さな猫を抱えてこちらを見る少年。その少年の髪の色も、瞳の色も私のよく知っている彼のものであったから、思わずその少年を彼の名前で呼んでしまう。すると、少年はあろうことにその名前でこちらに振り向いた。
「・・・一なの?」
「うん、くさなぎはじめって言うんだ!」
ねえちゃんのなまえは? そう言って猫を一生懸命抱えながら混乱している私の側へ寄ってくる。猫を落とさないように懸命に運ぶ姿はなんとも可愛らしい。少年の目線と同じになるようにしゃがんで、自分の名前を言うと 「!」 と笑顔で繰り返して言ってくれた。
それから少年に絵本を読んだりして楽しんだ。(動物が好きなようだ・・・ますます一になってきた。) 本を取りに行こうとすると「おれがいく!」 と頼もしく言ってくれて、ぱたぱたと可愛い音を立てて本を取りに行く。その度に「えらいね、一。」 頭を撫でながら褒めるとすごく嬉しそうな顔をして笑ってくれる。(その顔と言ったら、可愛すぎてしかたない。)
「ん、メール?」
メールの着信音が鳴り、ボックスを開いてみると瑞希からのメールだった。読んでいるうちに目の前にいる少年は一が小さくなってしまったのだという事を理解していく。私の名前を覚えていないのは記憶もなくなってしまっているためらしい。というか、瑞希は何のためにこれを作ったのだろうか。楽しそうに調合している姿が目に浮かぶのが余計にあれだ。
「・・・、」
「わ、」
目の前にいる一少年の頭を撫でながら瑞希へのメールを読んでいると、急に一が私の方向に身体を回転させて勢いよく抱きついてきた。「どうしたの?」 そう聞くと、肩に埋めていた顔をあげて、「おれと、あそんで、」 と少し寂しそうに呟いてまた顔を埋める。頬を見てみるとそれは少し赤みを増していた。(ああもう、この子は。)
「よいしょっと。」
「? ?」
そのまま一を抱きかかえて立ち上がる。小さくなったままでは1人で家に帰る事は出来ないし、帰れたとしてもその後の方が苦労する。(きっと寂しがりもするだろう。) 明日から夏休みにはいるし、瑞希のメールから1週間もすれば元に戻ると言っていた。こんな可愛い子を1人に出来るほど私は薄情者でもないし、それが一なら尚更だ。
「一、私のお家にお泊まりしない?」
「のおうちに?」
「ええ。一が良かったら、だけど。」
「いくっ! おれ、のおうちにとまる!」
のおうちー!! と嬉しそうな一の顔は子ども特有のきらきらと輝いている可愛い笑顔だった。
まずはかわいがってきにいってもらいましょう
!はやくいこうよ! ふふ、そんなに急がなくても家は逃げないわ。 、ねるときはいっしょ? ええ、もちろん。(ああもう、可愛いなあ) えへへ、やった!
title by リライト / まずはかわいがってきにいってもらいましょう(珍獣の飼い方10の基本)