「・・・おいっ、!」
「あー、天?もうちょっと待ってくれる?もう少しで終わるから・・・」
「だああっ!その台詞聞き飽きたぞっ!!」


天十郎には悪いと思いつつも、今日中に終わらせてしまわないといけない資料を作ろうとパソコンへと目を向けたまま、何度目になるのか分からないそんな言葉を紡ぎ出した。本当は、私だって天十郎と遊びたいのだ、だいたい、今日の予定も彼と出かけるというものであったはずなのに、


「(・・・先輩、今度絶対代わりの休みもらいますからね。)」


先程、問答無用で切られてしまった携帯へと恨めしい視線を送りながらも、すぐにパソコンの画面へと戻して作業を進める。「うう、−!!」 ベッドへと乗ってばたばたと身体を転がせてそんな呻き声拗ねてしまっている天十郎の機嫌をどうやって直そうかと頭で考えながらも、手だけは休めることなく動かした。・・・けれど、どうも私は甘かったらしい。そうなのだ、だいたい、自分の遊ぶと決めた時間に邪魔されて、彼が黙っているはずがなかった。


「・・・天、」
「い、良いだろっ、これくらいっ!つうか、俺様の方が最初に約束してたじゃねーか!!」


「電話してきやがった奴も、男の声だったし、よお・・・」 電話の声もしっかりと聞き取っていたらしい天十郎は机へと身体を向けていた私の後ろから動かしていた腕ごと私の身体を抱き込んできて。隠しきれていない少しだけ長いしっぽが、ゆるりと私に腕へと滑った。


「・・・せっかく、やっとと遊べると思ってたんだぞ?」


「なのに、仕事ばっか、しやがって・・・」 ぽつり、ぽつりと呟かれたそんな言葉。今、彼の耳を見る事はできない格好だから実際はどうなのかは分からないけれど、でも、へにゃりと垂れてしまっているんだろうなという事くらいは、何となく想像できる。腕の上でゆるりと揺れる尻尾だって、元気のないように見えた。尻尾の先をくるくると指に絡ませると、寂しいと言うかのように、すり寄せてくるものだから、


「  天、」
「な、んだよ、離れねえぞ。」
「ふふ、ずいぶんと遅くなっちゃったけど、どこかに出かけましょうか?」
「っ!! ・・・い、良いのかっ?」
「ええ、もちろん。元々、その予定だったしね。」


「今日はもう仕事はしないわ。一緒に遊びたいのは私も同じだもの。」 顔を上へと向けて私の言葉に驚いた天十郎のその視線を合わせながら、ゆるりと頬を緩ませる。驚いていたその顔が途端にきらきらと嬉しそうになるそんな顔も、ぴくんと震わせて元気に振り始めるそんな尻尾も、私が喜ぶには十分すぎるそれらであるから、つい、こうやって(・・・甘やかしすぎが褒められたものじゃない事くらい、分かってはいるんだけどなあ。)(・・・今日は、徹夜かな、)


「   っ!!」
「ふふ、天は何がしたい?」
「・・・俺、さま、は、  その、だな、」
「??天、どうしたの?」


さらに抱きしめる力が強くなって、嬉しそうな声で私の名前を呼んでくれる天十郎。公園だろうか、海に行きたいなんて言うかもしれない、それとも他の場所だろうか、考える事にすら楽しさを感じながら、彼へとそう言葉を投げかければ、何故か、言いにくそうにしながら、もぞもぞと私の首元へと顔を埋めてくるから、何とか腕を抜き出して、そのまま天十郎の頭へとゆるりと伸ばして撫でながら促せば、小さいながらも、それでもやけに鮮明に、しっかりと私の耳へと響いてきたのは、「・・・俺様のことだけ、考えてくれんなら、」


「俺様と遊んでくれんなら、どこでも良い。」


紡がれたそんな言葉に、頬を緩めに緩めてしまったのは、言うまでもない事だろう。結局その後、天十郎の希望で、ほとんどの時間をひっつき合ってごろごろと過ごしたなんて事は、また別のお話である。

仕事仕事って、そればっかり

私の家に住み着いた天十郎と言うわんこは、どうやら主人を喜ばすのが相当上手いようで。




素敵なリクエストをありがとうございました!
requested by ぴえろ様

title by リライト / 仕事仕事って、そればっかり (「甘えんぼな君へ5のお題」)